ワクチン接種証明書、iOSアプリで「姓名が逆」との指摘。何が問題?
12月20日に提供開始された新型コロナワクチン接種証明書アプリでは、iOSアプリで海外用の証明書を発行すると「姓と名が逆になる」問題が指摘されています。いったい何が問題なのでしょうか。
12月21日にITmediaが報じた通り、接種証明書アプリから発行した海外用の証明書は、iOSとAndroidでは姓と名の表示が逆になっています。
問題は、画面上の表示だけでなく、実際の証明書のデータも姓名が逆になっているという点です。
この証明書はSMART Health Card(SHC)規格に基づいており、海外用のものは「ローマ字」と「日本語(漢字など)」表記の両方の氏名を含んでいます。しかしiOSで発行した証明書には、本来はローマ字の姓が入るはずの項目に名、ローマ字の名が入るはずの項目に姓が入っています。
SHCの二次元コードは外部のアプリで読み取ることができます。これを使ってみると、たしかにiOSで発行した証明書とAndroidで発行した証明書では表示が異なります。
SHCに含まれている実際のデータは、以下のようになっていました。
この証明書を海外に持って行った場合、どのような扱いを受けるのかはよく分かりません。目視の確認なら見逃してくれる可能性もありますが、パスポートなどのIDと機械的に照合する場合は姓名不一致と判断されそうです。
では発行した証明書を修正すればいいかというと、このアプリには一度発行した証明書を更新する機能はないとのことです。そのため、少なくともユーザー側で再発行する手続きが必要になると思われます。
12月20日にはこのアプリから50万件以上の証明書が発行されたと報じられており、そのうち半分がiOSとすると25万件。海外用はパスポートの読み取りが必要なので発行した人はそれほど多くないとみられますが、姓名が逆の証明書が一定数、すでに発行されてしまった可能性があります。
いまから海外に出る予定があるiPhoneユーザーは、念のため市区町村から紙の証明書を取得しておくか、海外にマイナンバーカードを持っていき、いつでも証明書を再発行する準備をしておいたほうがよさそうです。
なかなか気付かない「姓名が逆」
このような状態でアプリをリリースした背景について、詳細はデジタル庁からの回答を待っているところですが、外から見える範囲でだいたいの原因は推測できます。
このアプリは海外用SHCの発行をサーバーに要求する際、パスポートから読み取った情報を送っています。氏名はスペースで区切られ、iOSアプリからは「名 姓」、Androidアプリからは「姓 名」という形式で送られていました。このことから、iOSアプリとAndroidアプリの開発者の間でAPI仕様の認識にずれがあると思われます。
デジタル庁が12月13日に開いた記者会見では、ダミーデータを用いた海外用の証明書が使われていました。これもiOSアプリでは姓名が逆になっており、そのままメディアが報じています。開発現場だけでなく、デジタル庁やメディア関係者もSHCの中身までは確認しなかったのでしょう。
さらに言えば、筆者自身も12月20日の夜に自分で発行したSHCを目視で確認したのですが、姓と名が逆になっていることに気付きませんでした。こうした問題は、言われてみるまでなかなか気付かないものです。
12月22日15時30分追記:
デジタル庁から問い合わせへの回答があり、この問題について次回のiOSアプリのアップデートにて修正する予定とのことです。これまでにiOSアプリで発行した海外用の証明書は削除し、再発行する必要がありますが、その点についても新しいアプリで案内するとしています。
12月22日19時25分追記:
iOS版アプリのバージョン1.0.4がリリースされ、本記事で指摘した問題がいずれも修正されていることを確認しました。海外用の証明書は再発行が必要です。
また、最新のアプリを使って発行した証明書であっても、iOSのウォレットに追加すると日本語氏名が「名 姓」の順に表示されます。これは接種証明書アプリとは関係なく、iOSの仕様と思われます(下図参照)。証明書の日本語氏名データ自体は合っています。