どうしてダメ上司は「わからないことがあったら言って」と笑顔で言うのか?
「わからないことがあったら言って」ではダメ
「わからないことがあったら言って」と言う上司は、「忘れ物はない?」と子どもに尋ねる母親と同じです。
子どもが学校へ行くとき、「忘れ物ない?」と聞く母親がいます。これはもう、「いってらっしゃい」と同じぐらいに無意識に出る「挨拶」と言えるでしょう。90%以上の確率で、子どもは「ないよ」「いってきまーす」と言って学校へ向かいます。
「忘れ物ない?」「ないよ」は挨拶の一部です。ですから、子どもがハンカチや給食袋を忘れて学校へ行っても「忘れ物ない? ってお母さん聞いたでしょう! なんで忘れ物するの!」と怒ってはいけません。あくまでも挨拶なのですから。
新入社員など、若手の部下に「わからないことがあったら言って」と上司が声をかけるのも挨拶と同じ。部下が仕事でミスをしたり、生産性の悪い仕事をしているのを見て、
「誰がそんなやり方を教えた? わからないことがあったら言ってと、あれほど言っただろう!」
と叱ってはなりません。「わからないことがあったら言って」という表現は単なる挨拶であり、決して指導的な表現ではないからです。
なぜ「わからないことがあったら言って」はダメなのか?
ダメ上司は、「プロセス」ではなく「状態」にばかりフォーカスします。部下に「状態」を言いつづけても、その「状態」になる「プロセス」を知らない限り、相手はどうすればいいかわかりません。
「生産性をあげろ」
「問題意識をもて」
「お客様と関係を築け」
「成果を出せ」
「目標を達成しろ」
これらはすべて「状態」です。「このような状態にしろ」と言うだけで、上司の仕事は務まりません。たとえば「生産性を上げるために、午前と午後に作業の進捗を測るためのチェックポイントをつけよう」などと、具体的な「プロセス」を伝え、その「状態」になるまでの検証を繰り返すことが必要です。
したがって「わからないことがある」というのも状態です。わからないことを見える化するための仕組みがなければ、部下は「わからないこと」を発見することが難しいのです。
「何度言ったらわかるんだ。わからないことがあったら、いつでも言えと、あれほど言ってるじゃないか!」
こんな上司がいたら、要注意です。どういう「状態」になればいいかは、誰でもわかります。上司はそんなことばかり言ってないで、その状態になるための「プロセス」を言語化しましょう。それが上司の責務です。