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タイトル戦ストレート負けなしの豊島竜王、カド番の一局で追いつき逆転したか? 竜王戦第4局終盤戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月13日。山口県宇部市・ANAクラウンプラザホテル宇部において第34期竜王戦七番勝負第4局▲豊島将之竜王(31歳)-△藤井聡太挑戦者(19歳)戦、2日目の対局がおこなわれています。棋譜は公式ページをご覧ください。

 2日目午後に入った時点では、形勢は少し藤井挑戦者よしと見られていました。

 ただしどう勝ちに持っていくのかは、とても難しそうです。ABEMA解説の本田奎五段は次のように語っていました。

本田「詰将棋みたいな感じですよね。『この局面は詰んでます』みたいなのを元から知ってて詰将棋解いても難しいじゃないですか。なんかそんな感じですよね」

 詰将棋を解かせたら世界一の藤井挑戦者をもってしても、やはり難しいか。そう簡単には結論が出ないようで、刻々と時間を削られていきます。

 桂を打って相手の金銀を削り合う終盤戦。100手目を指す前に藤井挑戦者は熟慮に沈みます。考えること36分。桂で金を取って王手をかけていきました。持ち時間8時間のうち、残りは豊島竜王は2時間29分。藤井挑戦者はわずかに10分となりました。

 一般社会では「王手」はポジティブ一方の意味合いで使われることがあります。しかし現実の将棋ではそうではありません。「王手は追う手」という、ダジャレのようでいて深みのある格言通り、王手はむしろマイナスになることも多々あります。

 豊島竜王は王手をかけられながら、手順に玉を逃していきます。

 104手目。藤井挑戦者は1分を使い、残り9分。決断して飛車を成り込みます。攻めの手としては迫力満点ですが、自陣に利かなくなるデメリットも大きい。

 コンピュータ将棋ソフトが示す評価値は、豊島よしへと触れました。豊島竜王は残しておいた時間は多い。105手目を指す前に長考に入った模様です。ここで勝ちを読み切ることができるでしょうか。

 豊島竜王はこれまで、タイトル戦でストレート負けをした経験がありません。本局も苦戦をはねのけ、逆転勝ちとなるのでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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