台風6号発生 クジラの尾が上がっていると台風が北上、上がっていないと西進
「クジラの尾型」天気図
全国的に猛暑が続くときの地上天気図は、「クジラの尾型」と呼ばれる晴天が長続きする天気図です
太平洋高気圧の等圧線の形がクジラの胴体、東シナ海・朝鮮半島の小さな高気圧がクジラの尻尾に似ているからです(図1)。
高層天気図が作られる前から、このような地上天気図が出現すると猛暑になることが知られており、クジラの尻尾が予報のノウハウでした。
太平洋高気圧が日本列島上空をおおい、その上にチベット高気圧が張り出してきて日本列島が布団の二枚重ね状態となって暑い日が続くことがわかっています。
つまり、チベット高気圧が太平洋高気圧の上に張り出してくることの地上天気図への反映がクジラの尻尾です。
そして、「クジラの尾型」の天気図のときは、優勢な高気圧によって台風の北上が妨げられます。
チベット高気圧が北海道へ
チベット高気圧は、夏季のチベット上空にでき、多くは東シナ海から西日本へと、東へ伸びてきます。
しかし、令和3年は、大陸東岸を北上し、一時的に北海道へ伸びていました(図2)。
このため、令和3年(2021年)7月中旬のクジラの尾は少し北に上がり、北日本を中心に早めの猛暑となっています。
気象衛星画像をみると、日本海の雲のない領域がクジラの尾に、そこから南東に広がる雲が少ない領域がクジラの胴体に見えると思います(タイトル画像参照)。
このように、クジラの尾は少し北に上がっていることから、熱帯からの雨雲が西日本~南西諸島に接近しやすくなっています。
四国と九州南部は、熱帯から北上してきた雨雲がかかり、熱帯低気圧襲来時のような大雨が降っています。
これまでの24時間雨量は多い所で200ミリを超え、さらに今後48時間には約200ミリの雨が降る予想です(図3)
地元気象台の発表する警報や自治体が発表する避難指示等の情報に注意し、警戒してください
台風6号の進路予報
台風6号が7月18日3時に日本の南海上で発生しました。
台風6号が発生した日本の南海上の毎面水温は、台風が発生する目安となる27度を大きく超える30度くらいです。
そして、毎面水温が29度以上という海域を発達しながら北西進する予報ですので、急発達が予想されています(図4)。
台風の進路は、その北側にある太平洋高気圧の動向に左右され、予報円は非常に大きなものとなっています。
クジラの尾が下がれば台風は北上できずに台湾へ向かいますが、尾が上がると九州へ接近してきます。
現在の予報では、沖縄本島では、暴風域に入る確率が7月19日午後から次第に高くなり、20日は10パーセントくらいです(図5)。
しかし、これは、予報円が非常に大きな台風予報を受けての確率ですので、油断できません。
沖縄地方では7月19日は非常に強い風が吹き、大しけとなる見込みですので厳重な警戒が必要です。
予報が非常に難しい台風ですので、台風の進路予報は、最新のものをお使いください。
また、熱帯域には台風6号になった熱帯低気圧の雲の塊のほかに、いくつかの雲の塊があります(図6)。
東京2020オリンピックに対応するかのようなにぎやかさで、オリンピック開催中に接近するものがあるかもしれません。
気になります。
タイトル画像、図6の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。
図1の出典:気象庁資料をもとに筆者作成。
図2、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。
図5の出典:気象庁ホームページ。