車の除雪をするとき-子どもを車内に残していませんか?
先日(2021年12月26日)から、日本海側を中心に記録的な大雪となっています。急に大雪が降る、あるいは普段は雪が積もることがない地域に大雪が降った場合、子どもの一酸化炭素中毒に気をつけてもらいたいと思います。20年前の事例を紹介します。
子どもたちを事故から守る 事故事例の分析とその予防策を考える
12. 雪による子どもの事故(P.26-28)
事例1:2001年12月11日、昼頃、札幌市内。自動車のエンジンをかけ、暖房をつけた車内に1歳児をおいて、母親が車外で雪かきをしていた。10分後に車内をのぞくと、子どもがぐったりしていた。すぐに子どもを車外に出し、救急車を呼び、発見から16分後に医療機関に入院した。高圧酸素療法で軽快し、後障害はなかった。事故発生時、自動車の排気管は完全に雪に埋もれていた。
事例2:2001年12月11日、昼頃。札幌市内。リモコンで外からエンジンをかけて温めていた自動車に10か月児を乗せ、ドアを閉めたところ自動的にドアがロックされてしまった。鍵は車の中にあり、この時点では車のエンジンは止まっていた。JAFに電話をしたが、到着までに20-30分を要した。車外から母親が声をかけていると、そのうちに子どもの声が聞こえなくなった。ドアを開けるのに手間取り、ようやくドアを開けると子どもはぐったりしていた。顔色が悪く、救急車を呼んで入院し、高圧酸素療法、脳低体温療法を行ったが、重度の低酸素性脳症を残した。事故発生時、自動車の排気管は完全に雪に埋もれていた。
事例3:2001年12月11日、昼頃、札幌市内。自動車のエンジンをかけ、暖房をつけた車内に2歳児を置いて、父親が車外で雪かきをしていた。約10分後に、子どもがぐったりし、嘔吐していることに気づき、救急車を呼んで20分後に入院した。高圧酸素療法で軽快し、後障害はなかった。事故発生時、自動車の排気管は完全に雪に埋もれていた。
同じ地域で、同じ日の同じ時間帯に、排気管が完全に雪に埋もれているという同じ状況のもと、同じ一酸化炭素中毒が発生しました。
その後、2010年の冬、新潟市では20年ぶりに80cmの積雪を記録し、最大積雪を記録した2月4日、5日の2日間に、除雪中に暖気運転している自家用車内で一酸化炭素中毒となって救急搬送された小児が、新潟市内で4件、6例発生したと報告されています(第57回日本小児保健協会学術集会、2010年9月16-18日、新潟市)。いずれも、除雪開始後10分程度で車内の異変に気付き、救急搬送されました。
一酸化炭素中毒とは
自動車の排気管が閉塞すると、排気ガスは車内に逆流し、車内の一酸化炭素濃度は急激に上昇します。一酸化炭素は、無味・無臭の空気よりやや軽く、ヘモグロビンとの親和性が高い気体です。一酸化炭素中毒では、ヘモグロビンが一酸化炭素と結合し、身体組織の低酸素をきたします。
今回紹介したような一酸化炭素中毒が起こるのは、大雪のとき、時間帯としては雪が小降りになりだした昼頃、外が明るく、買い物に出かける前の時間帯に雪かきをする時です。
予防策としては、以下のようなことが挙げられます。参考にしてください。
①自動車が雪に埋まらないよう、屋根付きの場所に停めておく
②自家用車の除雪をする際は、自動車の排気管が雪に埋まっていないかを確認し、埋まっている場合は、まずは排気管周辺の除雪を行ったうえでエンジンを始動させる
③雪かきをする場合、子どもを自動車内に放置しない
④自動車の排気管が閉塞される状況、例えばガレージなどの閉鎖空間でも自動車の排気ガスによる一酸化炭素中毒が起こる可能性があることを知っておく