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実写「ONE PIECE」グローバル1位堂々獲得、覆す海外実写映像化への負のイメージ

小新井涼アニメウォッチャー
(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

世界的な人気を誇る「ONE PIECE」。

そのNetflixシリーズ 実写ドラマ版がついに先週、配信を開始しました。

近年は作品ファンからも好評な作品が多々登場してはいるものの、同じ映像化・実写化でも、アニメや2.5次元と違い、まだまだ厳しい目も向けられがちな実写映像化。

それも、未だ作品ファンから懐疑的な見方も多い日本国外での実写化…ということで、原作の人気も相まって、期待と同じくらい不安をもって心待ちにされていた作品でもあると思います。

そんな中、実際に作品をみた人々からの反響は、どのようなものとなっているのでしょうか。

■実写ドラマ版「ONE PIECE」

本作は、尾田栄一郎氏による漫画「ONE PIECE」の実写ドラマ化作品。

既に原作漫画は100巻以上、アニメも1000話以上放送されている長寿作品の本作ですが、今回はそのうちの東の海(イーストブルー)編をメインに、ルフィ率いる麦わらの一味にゾロ、ウソップ、サンジ、ナミが加わるまでのエピソードが全8話で展開されます。

これだけでも、既に原作やアニメを知っている人にとっては「あれだけの話数をたった8話で!?」と不安に思う方も多いかもしれません。

実際に、同じ映像作品でもアニメでは50話近くかけて描かれた内容ということで、実写版では大まかな流れは踏襲しつつもかなり大胆なアレンジをもって物語が展開されています。

果たしてそんな本作は、日本をはじめ、世界中のファンにどのように受け入れられたのでしょうか。

■作品への反響

Netflixによる最新の"最も視聴された作品の週間ランキング Global Top 10"では、本作が該当するTV(英語)のカテゴリで堂々のグローバル1位を獲得

さらに現在同サイトで確認できる93の国と地域でTop10入りを果たし、そのうちの46の国と地域で1位を獲得するという快挙を成し遂げています。

さらに驚きなのは、この週間ランキングが8月28日~9月3日までの集計となっていること。

つまり8月31日に配信を開始した「ONE PIECE」は、たった4日間で週間ランキングにおいてこれだけの記録をたたき出したのです。

とはいえこれは単純な視聴数なので、ここまでならば「あれだけ宣伝していたのだからそりゃたくさんの人が見るだろうね」とも言われかねません。

しかし本作はその内容への評価でも驚きの反響を生み出しています。

海外の映画レビューサイトとしてお馴染みの「Rotten Tomatoes」では、9月7日現在、1万件を超す視聴者レビューで96%の高い支持を獲得

得票数が増えるほど高評価を維持するのが難しくなってくるこうした評価で、既にレビュー数でも評価の高さでもNetflix上最高の視聴者スコアを生み出していることには、日本国外のメディアからも注目が集まっています(参照:Forbes)。

  • ※現在、上記公式ポストや参照元のForbes記事が公開された時点よりもスコアは上がっている

また、こうした作品への高評価は海外だけでのことではありません。

ハッシュタグ「#実写のワンピ」や作品関連のポストに寄せられる声など、SNS上での感想をみると、好感触の声や早くもシーズン2を待ち望む声が続々と届いています。

更にそこには手放しの称賛ばかりでなく、“正直舐めてた”、“想像以上に面白い”といった、実写化へのネガティブなイメージを覆された上での高評価が少なくないところもポイントです。

ただでさえ厳しい目が向けられる実写化、それも原作が世界的人気作品ということで、もし期待外れであったとしたら、落胆や反発の声もそれだけ大きくなっていたことでしょう。

それだけハードルが高い中、抵抗の無い人だけでなく、実写に懐疑的な人達からまでも称賛の声を集める本作は、既に間違いなく従来の“人気作品の日本国外での実写映像化”へのイメージを大きく変える、マイルストーン的な存在になっているように思います。

■高評価の一因、絶妙な翻案(アダプテーション)

実写映像化するにあたり、原作作品を全てそのまま実写で表現するだけでは、衣装やセリフが浮いてどこかシュールになってしまうかもしれませんし、そもそも限られた時間で物語を描き切るために多少の変更が不可欠なことは、作品ファンだって百も承知です。

それでもこれまで作品ファンが実写化に良い印象が持てなかった理由としては、たとえそうした前提があったとしても「そこを変えたら(作品名)じゃないでしょう…」と感じる、いわば“作品のコア”を揺るがす改変やオリジナル要素に落胆してきたことも大きいと思います。

そんな中、本作は原作の尾田栄一郎氏の舵取りや全てのスタッフキャストの注力の下、「ONE PIECEの物語が現実で展開されたとしたら…」への答えとして説得力のあるキャラクター造詣やセリフ、物語の絶妙な実写映像への落とし込みが、作品の大切な部分を守って展開されているところが、これだけの称賛を生む要因ともなっているのではないでしょうか。

もちろんそれでも、前述の通り膨大なストーリーがコンパクトにまとめられているので、カットされたシーンや原作との相違点等を、しょうがないとしつつ残念がる声もあります。

しかし、それを上回る“ツボ”をここぞとばかりに押さえた見事な実写化への翻案がなされていることで、たとえマイナスポイントがあったとしてもそれを相殺してなお余りあるポジティブな魅力に、相対的に好評の声も増えているのでしょう。

  • ※アニメでお馴染みの声優陣による見事な実写への吹替や、不思議なことに時々田中真弓氏のルフィの声にも聞こえてくる主演イニャキ氏のオリジナル英語版といった各キャスト陣の熱演にも高評価が集まる

まだまだ配信開始から間もない本作ですが、こうした大きな反響を受け、続編の有無を含む今後の展開から、早くも目が離せないシリーズとなっていきそうです。

※2023年9月8日13:55 1位を獲得した国と地域を45⇒46へ修正。大変失礼いたしました。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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