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コナン&ハイキュー!!興収100億突破、今年も邦画史を塗り替え続ける劇場版アニメの勢い

小新井涼アニメウォッチャー
JR札幌駅内展示(筆者撮影)

先週末、好評上映中の劇場版「名探偵コナン 100万ドルの五稜星」が、昨年に続き興行収入100億円の大台を突破したことが話題となりました。

実はその数日前には、「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」が同じく興収100億円を突破。大台100億突破作品が早くも2本誕生し、2024年も益々止まらない劇場版アニメの勢いが感じられる年となってきています。

こうした中では、ついついこの状況に慣れてきてしまいがちですが、近年これほどの頻度で興収100億円突破作品が誕生し続けているのは、アニメに限らず邦画史上全体でも初めてのことです。

改めて以前の状況と比べてみると、一体どれほどすごいことなのでしょうか。

■ここ5年程の変化と勢い

興収10億円突破がひとつのヒットの指標とされる邦画界。その中において、その10倍ともなる興収100億円突破作品は、従来“数年に1度くらいの頻度で年に1作品誕生するかしないか”といったイメージのものでした。

実際に表1に示した通り、2000年以降※と、毎年興収100億円突破作品が誕生するようになった2019年以降を比較してみると、その変化もよく分かると思います。

  • ※一般社団法人日本映画製作者連盟による年間産業統計の発表が配給収入から興行収入によるものに切り替わった年

表1.興収100億円突破邦画作品一覧

   出典: 一般社団法人日本映画製作者連盟HPを参照の上筆者作成、対象は邦画のみ ※2024年5月6日現在
   出典: 一般社団法人日本映画製作者連盟HPを参照の上筆者作成、対象は邦画のみ ※2024年5月6日現在

こうした背景には、2019年以降の「鬼滅の刃」の社会的なヒットを発端としたアニメブームなど様々な外的要因も考えられます。

それに加えて、ここ10年程の劇場版アニメを巡る興行文化/鑑賞習慣の変化として

  1. コロナ禍の苦境を経て、興行側も訴求力の高いアニメの上映に一層注力するように
  2. ビデオ配信サービスの定着による揺り戻し(映画館での鑑賞体験の魅力の再発見)
  3. 2にも関連して、好きな作品は何度でも映像ソフトを持っていても劇場鑑賞する習慣の定着

…などが、劇場版アニメの盛り上がりの土壌となったことも恐らく大きかったのでしょう。

放送や配信よりも時間と場所が制約される映画館では上映回数やスクリーン数が確保できる程興収の伸びにも繋がりますので、興行側の注力は欠かせません。

また多くの人が映画館に足を運ぶだけでなく、その人たちが同じ作品を何度も鑑賞すればそれも興収をより押し上げていきます。

さらに、同じ映画を鑑賞する中で、近日公開作品の予告を何度もみて次の話題作の情報をキャッチできることも、また映画館に足を運ぶ大きなきっかけになっていくことでしょう。

もちろん、まずそれぞれの作品が魅力的であることは大前提として、それに加えて、こうした近年の興行文化/鑑賞習慣の変化も、劇場版アニメ全体の盛り上がりを一層押し上げていることが窺えるのです。

  • シリーズ史上最速の興収100億円突破を果たした今年の劇場版「名探偵コナン 100万ドルの五稜星」。その盛り上がりがどこまで大きくなっていくのかにも益々注目が集まります。

こうしてここ5年程は特に、邦画史上かつてないほどの勢いを生んでいる劇場版アニメ。

興行側による環境、観客の熱量がこうして醸成されてきた中で今後どのようなヒット作が生まれてくるのか、まだまだしばらくは目が離せない状況が続いていきそうです。

※2024年5月7日13:23  表記揺れ修正

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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