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「狂っている」「パラノイアだ」「核使用リスクはたくさんある」プーチン氏を危険視する声、米要人から続々

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始してから1週間。

 1回目の停戦交渉では妥協点が見出せなかったが、両国の要求が真っ向から対立し、ウクライナで市街戦が激化している今、2回目の停戦交渉も物別れに終わるのではないかと予想される。

 先行きが不透明な戦争の落としどころも全く見えてこない。プーチン大統領が何を考えているのかもよくわからない。戦争に踏み切り、さらには核使用の可能性までチラつかせたプーチン大統領の常軌を逸した言動に、彼の頭の中はどうなってるのかと危険視する声が、アメリカの元政府要人や現職の議員たちからあがっている。

 「何度もプーチンには会いましたが、今の彼は別人だ。彼は常に打算的で冷静だったが、不安定に見える。これまで見たことがない状態に陥っている。歴史についてさらに深い妄想を描いている」(FOXニュースにて、元米国務長官のコンドリーザ・ライス氏)

 「彼は怖がっている。理性的でない。彼は何より、ロシアを偉大にしたいのだ。また、彼は、2036年まで権力を握っていたいという欲に駆られている。しかし、今、すべてがリスクに晒されていることもわかっていると思う。ロシア軍はあまり好戦していない。彼はあまりパワフルに見えない。全体主義のリーダーは強く見えるが、実際は非常に脆いのだ」(CBSテレビにて、元国家安全保障問題担当大統領補佐官のH・R・マクマスター氏)

 「彼は狂っていると個人的に思う。彼が鋭敏で落ち着いているのかと懸念している」(CNNにて、元国家情報ディレクターのジェームス・クラッパー氏)

 「プーチンは妄想に囚われており、非常に孤立している。これは、ウクライナにとってだけではなく全世界にとって、とても恐ろしいことだ」(FOXニュースにて、テキサス州下院議員マイク・マッコール氏)

 「プーチンのことは30年以上見てきたが、彼は変わった。彼は完全に現実から乖離し、錯乱している」(ツイッターにて、オバマ政権下で駐露米国大使を務めたマイケル・マクフォール氏)

 「多くの人にとって非常に明らかなことは、プーチンは何かおかしいということだ。彼は常にキラーだったが、彼の今の問題はそれとは異なっており、また深刻だ。今のプーチンが5年前と同じような反応をすると考えるのは間違いだ」(ツイッターにて、プーチン大統領の精神状態に関するブリーフィングを受けたというマルコ・ルビオ上院議員)

 「プーチンはどんどん孤立している。独裁主義の指導者はインプットされなくなり、“あなたは正しい”という人の話しか聞かなくなると誤算へと導かれる。それが、ウクライナ侵攻で起きたのだと思う」(NBCテレビにて、上院諜報委員会委員長マーク・ウォーナー氏)

 「プーチンの演説を20年前からウオッチしてきたが、彼がこんなにもパラノイアになったのを見たことがない」(海軍士官学校国家安全保障問題元教授のトム・ニコラス氏)

 バイデン大統領はホワイトハウスで「核戦争の可能性について心配すべきか?」と記者団に問われて“ノー”と明言したものの、「狂人に刃物」という言葉もある。今、アメリカの政治家はその状況を懸念しているように見える。この場合、刃物は“核のボタン”ということになるが、実際、状況はその方向にエスカレートするリスクをたくさん孕んでいると指摘する専門家もいる。

 米ミドルベリー国際大学院モントレー校の上級研究員ジェフリー・ルイス氏は、NPR(米国の公共ラジオネットワーク)で「プーチンにとって悪いニュースが流れた1週間だった。ウクライナ軍が予期せぬ反撃をし、ロシア軍はひどい闘い方をしている。無差別に民間地域を砲撃した。状況はプーチンを弱くしているが、そのような見出しを出させないための方法は核で威嚇することだ。ロシアの警告システムが危機の最中に、誤って警報を出したらどうなるだろう? プーチンはそれが誤った警報だとわかるだろうか? それとも、慌てて間違った結論を出すだろうか?」と話し、プーチン大統領が誤った判断をして核のボタンを押す可能性はあるという見方を示した。

 誤算の結果、ウクライナでの軍事作戦が難航し、国際社会からは完全に切り捨てられたプーチン大統領。どんどん追い詰められ孤立状態にあるプーチン大統領が再び誤算をして、核のボタンを押さないことを願うばかりだ。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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