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大谷選手発言「何度か多額の送金をした」は水原氏がついたウソだった! “水原氏だけ頼り”が招いた失態か

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 大谷翔平選手の元専属通訳・水原一平氏の違法賭博&大規模窃盗スキャンダルをめぐり、大谷選手が記者会見を開いた。大谷選手サイドは水原氏のスキャンダル発覚後、同氏の解雇を発表してからは頑なに沈黙を守っていた。今回、ようやく対応したのは、メディアからのプレッシャーが高まっていたからだろう。それに、SNSでは、信じられないような疑念や憶測も飛び出し、大谷選手のイメージダウンも懸念されていた。

明らかにされた“気になっていたこと”

 記者会見では、筆者が気になっていたことが明らかにされた感がある。それは、大谷選手が、本当に「水原の借金を50万ドルずつ返済した」と代理人のバレロ氏に話したのかということ。実際、SNSでも、この点が焦点になるという指摘が見られていた。「もし、大谷選手が、水原氏を介すことなく、バレロ氏に直接『水原の借金を50万ドルずつ返済した』と言っていたとしたら、事態は興味深いものになる」との見方もあった。

 大谷選手のこの発言を紹介したのは、3月22日付けの米スポーツ専門チャンネルESPN。水原氏に行った90分インタビューの詳細や今回のスキャンダルのタイムラインが紹介されているが、19日のところに以下の記載がある。

月曜日東部時間午後8時30分(ソウルでは火曜日午前9時30分):

広報担当者は初めて、大谷が水原に代わって借金を支払ったと述べた。同氏によれば、代理人のバレロが水原のもとを訪れ、水原は「ついに白状して、それが真実だと言った」といい、大谷は水原の借金を50万ドルずつ返済したとバレロに話したという。広報担当者が、大谷が水原を通じてバレロとコミュニケーションを取ったと言っているのかどうかは、明らかではない。

広報担当者は、大谷の発言「ああ、私は何度か多額の送金をした。それが私が送金できる最大額だった」を引用している。

ESPNの記者は、広報担当者がオオタニのために仕事をしていたことを知っており、水原から話を聞きたいと考えている。広報担当者は、その調整に取り組むと述べた。

 この記載によると、大谷選手は2つの発言をしている。代理人のバレロ氏に対し「水原の借金を50万ドルずつ返済した」と話したのと、広報担当者に対し「ああ、私は何度か多額の送金をした。それが私が送金できる最大額だ」と話した2つだ。しかし、本当に大谷選手が、こう話したのだろうか? それが気になっていた。

水原氏の話はウソで固められていた

 前の投稿で指摘したが、大谷選手の周囲にいる人々は、当初、通訳の水原氏だけを頼りにしていたという。そのことを踏まえれば、大谷選手自身がこれらの発言をしたのか疑問だった。実際、「広報担当者が大谷が水原を通じてバレロとコミュニケーションを取ったと言っているのかどうかは、明らかではない」とも記されている。つまり、これらの大谷選手の発言は、バレロ氏や広報担当者が、大谷選手本人と直接コミュニケーションして聞いたものではなく、通訳の水原氏から、間接的に聞いたものだった可能性があり、水原氏がバレロ氏や広報担当者にウソをついていた可能性もあるのではないかと感じていた。

 実際、タイムラインの中の、水曜日東部時間午前10時(ソウルでは水曜日午後11時)に以下の記述がある。

「ドジャースの関係者と大谷の広報担当者によると、大谷の代理人は、状況に対処する間、大谷とコミュニケートするのに水原に頼り続けていた。そして、水原は大谷に何が起きているか話していなかった」

 この記述も、今回の記者会見で明らかにされた。大谷選手は、韓国での開幕戦後、ホテルに戻って、水原氏から賭博の借金と多額の送金のことを知らされる。代理人と話した大谷選手は、代理人やドジャースの人々が水原氏からウソをつかれていたと知る。全て水原氏のウソで固められたスキャンダルだったということか。

“水原氏だけ頼り”が招いた失態

 もっとも、これは、大谷選手サイドの主張だ。しかし、これが事実なら、やはり、背後にあったのは、前の投稿で書いたように「水原氏だけ頼り」というコミュニケーション上の問題があったのかもしれない。大谷選手にはESPNのインタビューについて水原氏や周囲から何も知らされていなかったと話していたし、周囲の人々は当初水原氏の友人の借金の肩代わりとして送金したと水原氏に知らされていたと話していた。つまり、代理人やドジャースの人々は、これらについて、大谷選手本人に伝えたり、事実関係を確認したりすることなく、水原氏の言うことだけを信じていたという問題が浮かび上がってくる。それだけ、周囲の人々は水原氏と大谷選手は一心同体だと捉えていた、それゆえに、“水原氏だけ頼り”をしていたのだろう。また、水原氏は、大谷選手を含めて周囲の人々に頼りにされている状況を利用してウソをついたことになる。しかし、水原氏はついたウソがすぐにウソだと発覚するとは思わなかったのだろうか? 

 大谷選手は、今回のスキャンダルから、一緒に仕事をしている人々とは、友人のような近い関係になるのではなく、あくまでビジネス的な一定の距離感を保ち続けなければならないことを学んだのではないか。代理人やドジャースサイドは、第三者の話を鵜呑みにすることなく、必ず、大谷選手本人に事実確認しなければならないことを学んだのではないか。

 しかし、今回の会見では、人々が最も注目していたことは明らかにされなかった。それは、水原氏がどのように大谷選手の銀行口座にアクセスして、胴元に送金したのかということ。この疑問がいずれ明かされる時は果たして来るのだろうか?

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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