セリエA初ゴール!北朝鮮の新星ハン・グァンソンはバルセロナのサッカーアカデミーにいた!?
イタリア・セリエAで初ゴールを決めた朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)選手が誕生した。
カリアリに所属する北朝鮮の18歳FWハン・グァンソン。現地時間4月9日に行われたセリエA第31節のトリノ戦で、デビュー2試合目で初ゴールを決めた。ハンは1-3でリードされた状況から、81分から交代で出場。アディショナルタイムにジエゴ・ファリアスの左からのクロスにヘディングで合わせて初ゴールを記録した。チームは2-3で敗れたが、ハンには忘れられない日となった。
試合終了後、ハンは現地メディアにこうコメントしたという。
「セリエAで初ゴールを決められてすごくうれしい。チャンスを与えてくれている(マッシモ・)ラステッリ監督とカリアリに感謝したい」
得点後にチームメイトに祝福される姿から、スムーズに溶け込めていることをうかがわせてくれる。
ハンは先月10日にカリアリに加入したばかりで、4月2日に行われた第30節パレルモ戦に出場。セリエAの公式戦でプレーした初めての北朝鮮人選手となり、現地でも大きく取り上げられていた。
1998年生まれで身長178センチ、体重70キロ。2014年のAFC U-16アジア選手権の優勝メンバーで、翌15年のFIFA U-17ワールドカップ(W杯)にも出場している。イギリス紙『ガーディアン』の「1998年に生まれた世界のサッカー選手50傑」にも選ばれている。
バルセロナにサッカー留学
彼のプレーを映像で初めて見たのは、タイで開催された2014年のAFC U-16アジア選手権だった。ベスト8が出そろった準々決勝で、北朝鮮はイランを0-0からのPK戦で下し、続く準決勝のオーストラリア戦も1-1からのPK戦で勝利して決勝に進んだ。ここまでハンは通算3得点を決め、エースとしての力を証明していた。
ちなみにこの時の北朝鮮代表には、スペインのバルセロナとイタリアのペルージャのサッカーアカデミーに短期留学した選手が6人もいた。ハンはバルセロナでサッカーを学んだため、欧州の環境に少しは慣れていた。
一方、決勝戦の相手、韓国代表にはFCバルセロナ所属の“韓国のメッシ”FWイ・スンウがいた。韓国は準々決勝で日本に2-0で勝利しているが、そこで2得点を決めたのがイ・スンウだった。決勝進出まで通算5得点の彼のパフォーマンスは大きな話題となり、決勝戦の下馬評は当然、韓国の勝利だった。
だが、結果は2-1で北朝鮮が韓国を逆転して大会を制覇。この北朝鮮の2得点のうち、1得点がハンだった。彼は大会4得点で得点王にこそなれなかったが、高い身体能力とスピードで相手ディフェンダーを抜き去る力強い姿がとても印象的だった。
昨年、ハンはAFC U-19アジア選手権にも出場したが、自身は1得点で終わりチームも3戦全敗。それに北朝鮮代表は2018ロシア・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選に進めず、国際舞台から遠のいた。
代表チームの姿を見る機会がなければ、ハンのプレーを見ることもない。北朝鮮国内で埋もれたまま、サッカー人生を終わらせてしまうのではないか――そんなことが気になっていた。
それが今季、セリエAという欧州の舞台に登場し2試合目でゴールを決めた。セリエAはかつて三浦知良、中田英寿、名波浩、中村俊輔など日本人の名だたる有名選手がプレーした場所。
現在は日本代表の長友佑都(インテル)、本田圭佑(ACミラン)がいるが、ポジション争いに苦しむ過酷な状況を目の当たりにしているだけに、ハンの得点は想像し難い瞬間だった。
珍しくない北朝鮮選手の海外進出
米スポーツチャンネルの『ESPN』がカリアリのマッシモ・ラステッリ監督の声を伝えている。
「彼は非常に面白い選手だ。素晴らしいクオリティがあるし、本当に速い。チームに貢献してくれたし、 彼にはゆっくりと成長する時間が必要だ。 我々に本当に強い印象を与えている。成功するのに飢えているしチャンスをつかむに違いない」
また、昨年5月に北朝鮮代表の指揮官に就任した元ノルウェー代表のヨルン・アンデルセン監督も「ハン・グァンソンは、北朝鮮が輩出した最初のグローバルスターになる」と話しており、これからの成長と活躍が期待されている。
余談だが、そもそも北朝鮮の選手が海外でプレーするのは決して珍しいことではない。
スイスのFCローザンヌ・スポルトで、24歳の北朝鮮代表FWパク・クァンリョンがプレーしており、かつて北朝鮮代表のエースだったFWホン・ヨンジョ(現在は引退)が、セルビアリーグのFKベジャニアやロシアのFCロストフでプレーした。ホンは2010年のロシアリーグ時代、CSKAモスクワでプレーした本田圭佑とも顔を合わせている。実力さえあれば、海外でのプレーも可能な環境が整いつつある。
ハンがカリアリで出場と得点を重ね、成功を収めれば、北朝鮮サッカー界にも熱い視線が向けられることになるだろう。