Yahoo!ニュース

オミクロン株による市中感染例の拡大に備えて、私たちにできることは?

忽那賢志感染症専門医
2021年12月25日時点でのオミクロン株の広がり(GISAIDより)

12月22日に大阪府でオミクロン株による市中感染例が見つかって以降、京都、東京でも市中感染例が報告されています。

今後のオミクロン株による市中感染例が拡大に備えて私たちにできることは何でしょうか。

オミクロン株は何が問題なのか?

オミクロン株のスパイク蛋白とその主要な変異(CDC. ACIP Presentation Slides: Decmeber 16, 2021 Meeting)
オミクロン株のスパイク蛋白とその主要な変異(CDC. ACIP Presentation Slides: Decmeber 16, 2021 Meeting)

オミクロン株はスパイク蛋白の遺伝子に30もの変異があり、このうち15か所の変異は感染成立に関わる受容体結合部位に存在しています。

これまでの変異株と同様に、オミクロン株でも感染力の増加や、過去の感染やワクチン接種によって付与された免疫を回避する能力の増加が明らかになってきています。

オミクロン株の現時点での広がりは?

オミクロン株による感染者は世界中で拡大を続けています。

2021年12月25日時点で、113カ国でオミクロン株による感染者が報告されています。

日本国内でも12月22日に大阪府内で国内感染例が確認されて以降、京都、東京と市中感染が少しずつ広がってきている状況です。

これからどれくらいのペースで日本国内でオミクロン株が広がっているのか分かりませんが、海外の事例が参考になります。

イギリスで5症例目が報告されてからの日数とそれぞれの変異株感染者の推移(UKHSA publication gateway number GOV-10869)
イギリスで5症例目が報告されてからの日数とそれぞれの変異株感染者の推移(UKHSA publication gateway number GOV-10869)

この図は、これまでにイギリス国内で見つかった変異株の広がりの速さを比較したものです。

イギリスでは、これまで最も感染力の強い変異株であったデルタ株よりもさらに急速にオミクロン株による感染者が増加しています。

アメリカ合衆国での変異株の割合の推移(CDC. COVID Data Trackerより)
アメリカ合衆国での変異株の割合の推移(CDC. COVID Data Trackerより)

こちらはアメリカ国内でゲノム解析が行われた変異株の割合の推移を見たものです。

CDCが発表したゲノム配列データによると、米国内でオミクロン株が急速に増加していることが示されています。

11月27日の週に0.1%だった割合が、12月4日の週には0.7%に上昇し、12月11日の週には12.6%、12月18日の週には73.2%と急激にオミクロン株の占める割合が増加しています。

実にわずか1ヶ月でデルタ株からオミクロン株への置き換わりが起こっており、今後日本国内でもこういったことが起こり得るということを考えておかなければなりません。

イギリスでの新型コロナ新規感染者数の推移(Worldometerより)
イギリスでの新型コロナ新規感染者数の推移(Worldometerより)

オミクロン株がすでに主流になっているイギリスでは感染者が急増しており、1日当たり10万人以上の新規感染者数となっています。

京都大の西浦先生らがデンマークのGISAID登録データを利用した解析では、オミクロン株の実効再生産数はデルタ株よりも3.19倍であった、という結果が厚生労働省のアドバイザリーボードで報告されています。

また、イギリス、デンマーク、南アフリカでは症例数が2倍になるまでの時間(倍加時間)も1.5〜3日と極めて速いペースで感染者が増加しており、日本でも同様のことが起これば、第6波は避けられない状況となります。

オミクロン株では重症化はしにくいのかもしれない

懸念すべき変異株 VOCの特徴の比較(筆者作成)
懸念すべき変異株 VOCの特徴の比較(筆者作成)

オミクロン株による感染者が急増しているイギリスでは、12月20日までに132人が入院し、これまでに14名の死亡(年齢は52歳から96歳)が報告されています。

これまでのデータに基づき重症化リスクを解析したところ、オミクロン株の感染者は救急外来受診または入院のリスクはデルタ株と比較して0.6倍、入院リスクは0.4倍であった、とのことです。

同様の結果はスコットランドからも報告されています。

世界で最初に流行が始まった南アフリカ共和国からも重症化に関する査読前の報告が発表されています。

オミクロン株の感染者は、デルタ株と比較して入院リスクが0.2倍、重症化リスクが0.3倍であった、とのことです。

ただし、これらの結果はワクチン接種や自然感染によって得られた免疫の影響が大きいと考察されています。

従来の変異株よりも重症化しにくいかもしれない、という点は吉報ですが、決して重症化しないわけではありませんので、感染者そのものが爆発的に増えてしまえば医療機関の逼迫は起こり得るということになります。

また、これまで以上に重症者病床よりも軽症者の宿泊療養施設や中等症病床の需要が大きくなってくることが予想されます。

ブースター接種で第6波の規模や重症者を最小限にすることが重要

3回目となるブースター接種をうける忽那氏(筆者の同僚撮影)
3回目となるブースター接種をうける忽那氏(筆者の同僚撮影)

日本国内でも12月からブースター接種が開始されましたが、オミクロン株の拡大によって懸念される第6波の規模を最小限にし、重症者を減らすことが重要です。

イギリスで行われた2021年11月27日から12月17日のデルタ型147,597例、オミクロン型68,489例を対象とした解析では、オミクロン株ではデルタ株よりもワクチン接種による感染予防効果が大きく下がることが示されています。

ファイザー社のmRNAワクチン2回接種後およびファイザーまたはモデルナによるブースター接種後のワクチンの有効性(UKHSA publication gateway number GOV-10869)
ファイザー社のmRNAワクチン2回接種後およびファイザーまたはモデルナによるブースター接種後のワクチンの有効性(UKHSA publication gateway number GOV-10869)

ファイザーで2回ワクチン接種を受けた人は接種後経時的に発症予防効果が落ちていきますが、ブースター接種によって再度発症予防効果が高まります。

ファイザーのmRNAワクチンでブースター接種を行った人は直後に70%程度まで高まり、ブースター後10週間以降は45%に低下します(ぴえん)。

一方、モデルナのmRNAワクチンでブースター接種を行った方は、直後に80%近くまで発症予防効果が高まり、9週間以降も70~75%程度で推移しています。

これらのデータからすると、2回目まではファイザーのワクチンを接種した方も、3回目はモデルナという選択肢も考えて良さそうです。

2回の接種だけでも重症化を防ぐ効果は保たれていると考えられますが、特に高齢者においては重症化予防効果も経時的に低下していることが分かってきています。

オミクロン株の広がりが懸念される中、今はとにかくブースター接種を、特に高齢者に進めていくことが重要になります。

当初、「2回目の接種から8ヶ月以上」であった3回目の接種時期が12月17日より「6ヶ月以上」となりましたので、該当される方はぜひ接種をご検討ください。

韓国、イギリス、タイ、ベルギー、フランス、シンガポール、台湾、イタリア、オーストラリアなどのように、オミクロン株の拡大に備え、2回目接種からの期間をさらに短縮している地域もあり、今後の日本国内の状況によってはより柔軟な変更を政府に期待したいところです。

ワクチン接種後もこれまで通りの感染対策は続けるようにしましょう。

手洗いや3つの密を避ける、マスクを着用するなどの感染対策をこれまで通りしっかりと続けることが重要です。

手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作成)
手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作成)

参考文献

UKHSA publications gateway number GOV-10645. SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England: technical briefing 33

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

忽那賢志の最近の記事