九州で豪雨発生 5月20日から災害対策基本法の改正で避難勧告が廃止となって避難指示に一本化
九州の梅雨豪雨
令和3年(2021年)5月20日、記録的に早い梅雨入りとなった九州では、梅雨前線上に発生した低気圧に向かって暖かくて湿った空気が流入し、午前中から局地的に激しい雨が降りました(図1)。
この低気圧は、21日には日本海へ進む見込みで、引き続き、低気圧や前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込む見込みです。
このため、西日本から東日本の広い範囲で大気の状態が非常に不安定となり、雷を伴って非常に激しい雨が降り、特に、太平洋側の南から南西に面した斜面で雨量が多くなる見込みです(図2)。
四国・近畿・東海・関東甲信地方では多いところで200ミリ以上の雨が予想されています。
特に、九州地方では、これまでに多くの雨が降り、土の中に多量の水分がたまっていますので、土砂災害に厳重な警戒が必要です。
梅雨入りしている地方だけでなく、また梅雨入りをしていない地方でも警戒が必要です(表1)。
地元気象台の発表する警報、注意報、早期注意情報、気象情報等に留意してください。
災害対策基本法の改正
水害や土砂災害時に自治体が発表する避難情報等は、令和3年(2021年)5月20日から大きく変わっています。
これは、災害対策基本法が改正され、その施行日が5月20日であるためです。
熊本県天草市では、大雨による土砂災害の恐れがあるとして、20日9時に牛深地域と御所浦地域に避難指示を出しました。
これが、運用変更後初めて警戒レベル4の「避難指示」です。
その後も、九州各地で「避難指示」や、「高齢者等避難」が発令されています。
5月20日からの避難情報等は、大きな変更点が3つあります(表2)。
一つ目は、警戒レベル5を、「災害発生情報」から「緊急安全確保」に変え、警戒レベル4までに必ず避難するということがはっきりわかるようにしました。
これは、警戒レベル5になったら逃げようと考え、警戒レベル4の段階では何もしない人が少なからずいたという反省からの変更です。
警戒レベル5になったら逃げ遅れで、逃げること自体が危険な状況ですので、直ちに安全確保の行動が必要になります。
二つ目は、避難指示(緊急)と、避難勧告を一にし、「避難指示」にしたことです。
昔から避難指示と避難勧告では、どちらが危険か分からない、情報を受けての行動の差が分からないという意見がありました。
最近では、避難指示を、「避難指示(緊急)」という表記にして、避難指示の方が危険ということが分かるようになりましたが、それでも、情報を受けての行動の差はわかりにくいものでした。
このため、避難勧告という言葉を廃止し、避難指示に一本化しました。
これまで、避難勧告で行っていた行動は、避難指示で行う行動に格上げで、昔からの懸案事項の解消です。
三つ目は、「避難準備・高齢者等避難開始」を、「高齢者等避難」としたことです。
警戒レベル3は、もともとは避難準備情報でした。
高齢の方や障がいのある方、乳幼児のいるご家庭など、避難に時間がかかると思われる方には、早めに避難準備をして避難してもらおうという趣旨でした。
しかし、近年の災害では、いわゆる災害弱者の犠牲者と呼ばれる高齢者の死者が増えています。
このため、高齢者等避難開始の文言を入れていたのですが、今回の改正では、はっきり「高齢者等避難」と記載したのです。
避難に時間がかかると思われる方は、警戒レベル3「高齢者等避難」が発令されたら、できるだけ避難行動を開始してください。
例年の梅雨入りであれば、九州など多くの地方では梅雨入り前の変更で、準備期間がとれたのですが、記録的に早い梅雨入りのため準備期間がとれませんでした。
このため、注釈付きの古い表示が使われたり、周知不足があったりと、少し混乱しました。
早すぎる梅雨入りの影響は、ここにもでています。
情報がありすぎる社会
梅雨前線上の低気圧通過後は、前線が南下して、東日本の太平洋側では久しぶりの晴天となります。
このため、関東甲信地方などの梅雨入りは、少し遅れそうです。
逆に、長い梅雨の中休みに入っていた沖縄・奄美地方が雨の予報です。
梅雨戦線の南北への移動で天気が変わりますが、最高気温は高めに経過し、高温と多湿というカビが発生しやすい季節になっています。
早く到来した大雨シーズンですが、大雨シーズンは始まったばかりです。
これを機に、気象庁や自治体等が発表する防災情報の中から自分に必要な情報をネットで検索し、必要と思われる情報がでてきたら、お気に入りに保存してみてはどうでしょうか。
現在は、情報がない社会ではありません。
情報がありすぎることで、自分に必要な情報入手に手間取る社会です。
今回は、自分に影響がない情報であっても、近い将来、自分に影響するものがでてきます。
その時に、すばやく情報を入手することができ、あなたの命を守ることにつながるかもしれません。
図1の出典:気象庁ホームページ。
図2の出典:ウェザーマップ提供。
表1、表2の出典:気象庁ホームページをもとに筆者加筆。