それでも、森保ジャパンは3バックを採用するのか?
欧州サッカー界では4バックが主流である。
しかし、森保ジャパンは3バックを用いつつある。代表はまだオプション的な採用だが、東京五輪代表は3バックでの戦いになりそうだ。
では、日本サッカーは3バックで世界を勝ち抜けるのか。
バルサが3バックを採用
今シーズンのチャンピオンズリーグ、グループリーグ最終節で、FCバルセロナはインテル・ミラノとの一戦で3バックを採用している。バルサは通常4バックだが、3-4-1-2のような形。すでに決勝トーナメント進出は決めていただけに、若手を入れた1.5軍で、試験的なオプションだった。相手のインテルが3バックだったこともあるだろうか。
もっとも、バルサはヨハン・クライフの時代から3バックは一つの選択肢にしている。かつてジョゼップ・グアルディオラ監督も試したことがあったし、取り立てて新しい戦い方ではない。バルサの指揮官であるエルネスト・バルベルデとしては、3バックにすることで相手の強力なツートップ、ベルギー代表ロメル・ルカク、アルゼンチン代表ラウタロ・マルティネスへの対策だったのだろう。
試合自体は、バルサがアウエーで1-2と勝利を収めただけに、功を奏したと言えなくもない。3バックは、貴重なオプションだろう。選手が適応する能力も高かった。
しかし、プレーそのものはしばしば3バックの劣勢をさらけ出した。
3バックの弱点
同点に追いつかれたシーンは象徴的だ。
前半終了間際、バックラインからのロングパスを前線のマルティネスにキープされてしまう。3バックの一角のトディポがマークについたが、ボールを取り切れないでいると、時間を作られ、もう二人のセンターバックも瞬間的に立ち尽くしてしまった。そこでボールを後方に戻された時、フリーで入ってきたルカクにミドルを叩き込まれた。一人のFWにバックラインを押し下げられ、人数がダブってしまい、前のスペースを空けてしまったのだ。
強力なキープ力や突破力を持つFWが相手にいることで、3バックは簡単に脆さを露呈する。3枚いることで堅固に見えるが、結局、1対1の局面を作られ、そこで分が悪いと、ラインは下がる。するとバックラインのスペースを譲り渡してしまうのだ。
実は、E-1選手権の韓国戦、日本は同じように失点を喫している。
どうにか奪ったボールを右アウトサイドの橋岡大樹が苦しいパスを送って取り返され、カウンターの形になる失態。一気に裏を突かれ相手に差し込まれてラインを下げられると、マイナスに折り返したボールを、フリーで受けた韓国の選手にミドルを打ち込まれた。バックラインの人数は余っていたが、何もできなかった。
バルサはインテルの3バックの脆さをあぶりだした
後半も、バルサの3バックはインテルの攻撃に手を焼いていた。GKのビッグセーブ連発がなかったら、失点を喫していただろう。3バックの端とウィングバックの間のスペースも狙われていた。
1-2で勝てたのは、僥倖だったのか?
実は、バルサはインテルの3バックの弱さをあぶりだしていたのだ。
試合終盤、前線のルイス・スアレスが一人で突っ込み、インテルの3バックを翻弄している。瞬間的にバックラインの前を開けさせ、後ろにボールを落とす。それを途中出場のアンス・ファティが叩き込んだ。
Jリーグでも上位クラブは4バック
Jリーグでは、3バックを採用するチームが少なくない。J2、J3では「2枚のセンターバックでは守り切れない」という理由で3バック中心。しかしこの3バックは、3バックと呼べない。べた引きで、相手のパスを引っかけ、ミスを待つ5バック。必要に迫られた戦い方に過ぎない。
J1でも3バックは多いが、上位は4バックで戦っている。優勝した横浜F・マリノス、FC東京、鹿島アントラーズ、川崎フロンターレ、そしてセレッソ大阪。質の高い選手が運用することで、4バックのほうが結果を残している。
なにより、チャンピオンズリーグのベスト16に残るような「世界トップレベル」で、4バックが全盛である。バルサ、レアル・マドリー、アトレティコ・マドリー、バレンシア、マンチェスター・シティ、リバプール、チェルシー、トッテナム、バイエルン・ミュンヘン、ボルシア・ドルトムント、ユベントス、ナポリ、パリ・サンジェルマン、リヨン・・・どこもかしこもだ。
それでも、森保ジャパンは3バックで挑むのか?
オプションとしては、決して悪くない。バルサのように選択肢として使えたら、相手の虚をつけるだけに有効だろう。もし試合中に変化できる場合、大きな武器にもなる。
しかし、選手の適性や能力を見極めないと――。たちまち世界では打ち砕かれるはずだ。