◆創業100年間近のサイクルショップが、コーヒーで作る地域の輪（サイクル）

　今回は東京メトロ稲荷町駅から歩いて数分の「ヨコオカフェ」をご紹介。
　このカフェの母体は1925年創業の老舗自転車店「横尾双輪館」。自転車屋さんに併設という大変珍しい業態ながら、内装もコーヒーも本格派で手抜かりはありません。
　また、2022年4月にこのカフェが開店した裏には、コロナ禍で疲弊した東上野の地域を支え、新しい人々の輪を作りたいという深い思いが込められていたのです。

◆自転車好きに嬉しい、それ以外の人も楽しめるスタイリッシュな内装

　「ヨコオカフェ」の入口はビル1階の自転車店「横尾双輪館」の横。階段を上がった2階に店舗が広がっています。

　店内にはカウンターの6席と、4つのテーブル。内装はコンクリート壁に囲まれ、自転車やロードバイク関連のインテリアが至る所に配置されています。

　自転車競技選手のサイン入りユニフォームも展示されており、ロードバイクや自転車競技観戦が好きな方にとっては、さながら自転車博物館のような魅力的スペース。
　これだけそろっていると、自転車の知識がないお客さんでも、展示について店員さんに尋ねたくなりますね。

　メニューはカフェと食事の両方が充実。美味しそうなスイーツも多種多様です。

　ビールセットやワインセットも用意されていて、飲み需要にも対応しています。

　今回はカフェ利用だったので、見た目が可愛らしいホルクスジェラート・オロとオリジナルブレンドコーヒー（M）のセット（800円）を選びました。

◆厳選のコーヒー豆が光る味わい深い一杯＆スイーツ

　「ヨコオカフェ」のコーヒーは豆の種類をセレクト可能。今回はお店オリジナルの「ホルクスブルー」という種類を選択しました。この豆は深煎りでコクが強いものの、飲みやすい優しい味わいが特徴です。
　なお、ホルクスブルーは「横尾双輪館」のオリジナルバイク「ホルクス」が名前の由来となっています。

　そして、このホルクスブルーを挽いてバニラアイスにまぶしたのがホルクスジェラート・オロ。
　バニラアイスの甘みと柔らかさが、コーヒー豆の香ばしさやカリカリした食感と絶妙に組み合わさり、通常のバニラアイスとは一味違う深みを感じられます。

　ホルクスブルーを含む「ヨコオカフェ」のコーヒー豆は、（株）カフェオロ代表のコーヒーディレクター・山下敦子さんのプロデュース。自転車店に併設されているにもかかわらず、コーヒーへのこだわりは妥協がなく、いたって本格派の美味しさです。
　手触り感のある食器も、素朴でスマートな印象を与えますね。

◆「コロナ禍でカフェが減少した東上野の人達に、美味しいコーヒーを届けたい！」という想い

　「ヨコオカフェ」のお店の方は大変ハキハキとした爽やかな印象で、常連客さんとの世間話も長年の顔見知りのように和やか。
　この方に、「そもそも、なぜ自転車屋さんがカフェを？」と気になっていたことを聞いてみました。

　もともと「横尾双輪館」の2階（現在の「ヨコオカフェ」店舗）では、ヘルメットやウェアなどの自転車用グッズを販売していました。しかし、こうしたグッズはインターネット上での購入が一般的になり、店頭での客足が減少気味に。
　また、横尾双輪館は自転車愛好家の間では名店として知られているものの、新規のお客さんにとっては若干入りづらい印象もあったそうです。

　そこで、自転車用グッズの棚を1階に統合し、空いた2階は一見さんでも気軽に入れる窓口としてカフェを新規オープンという、一風変わった挑戦に打って出ます。
　この狙いが功を奏して、新しく出来た「ヨコオカフェ」は、その下の「横尾双輪館」にも新しいお客さんを多く呼び込むようになったとのことです。

　また、2022年の開店当時、お店のある東上野地域では、多くの老舗コーヒー店がコロナ禍の影響で閉店してしまっていました。
　馴染みのカフェが無くなってしまい、地域の方々が心から寂しがる一方、「身近な店で美味しいコーヒーを飲みたい！」というニーズが非常に高まっていたのです。

　そうした地域の方々の願いに応えるべく、ヨコオカフェは開店当初から、コーヒーやお店自体の品質にとりわけ深いこだわりを持っているそうです。

　全ては「横尾双輪館」の時代からお店を長年支えてくれたお客さんの気持ちに寄り添い、カフェを通じて新しい地域の輪を作るため。

　その熱意が通じてか、「ヨコオカフェ」は開店以来多くの人々を集め、すでに東上野の憩いの場として定着しています。
　自転車に造詣が深い人も、そうでない人も満足できる東上野の新しい名店に、機会があればぜひ足を運んでみてください！