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毎熊に続く定着アピールはあるか。”森保ジャパン”タイ戦のフレッシュ組を展望する。

河治良幸スポーツジャーナリスト

日本代表の森保一監督は2024年の元旦に行われる親善試合のタイ戦に向けたメンバー23人を発表。スケジュールの都合で招集できない主力メンバーが多く、11月のシリア戦からは半数近く入れ替わる構成となった。

もちろんカタールで開催されるアジアカップに向けては久保建英(レアル・ソシエダ)や三笘薫(ブライトン)など、可能な限りベストメンバーを招集して臨むと想定できるが、今回の活動はアジアカップへの準備であると同時に、初招集のGK野澤大志ブランドン(FC東京)と伊藤涼太郎(シント=トロイデン)を含むフレッシュな選手たちとしてはアジアカップ以降の活動にもつながる大事なアピールチャンスと言える。

カタールW杯後に初招集から常連に定着したのがDF毎熊晟矢(セレッソ大阪)だ。大卒からV・ファーレン長崎で右サイドバックとして覚醒的なブレイクを果たし、昨シーズンからセレッソでさらに成長。2023シーズンのJ1ベスト11にも選ばれた。

”第二次・森保ジャパン”では9月の欧州遠征で初招集されると、4−2と勝利したトルコ戦でアシストを記憶。10、11月の活動にも続けて選ばれて、ここまで3試合に出場している毎熊にとって、菅原由勢(AZ)とともにアジアカップのメンバー入りはほぼ確実と見られる。その毎熊に続く選手は出てくるのか。

これまで招集経験がありながら、出場チャンスを得られなかった選手が3人いる。藤井陽也(名古屋グランパス)、川村拓夢(サンフレッチェ広島)、奥抜侃志(ニュルンベルク)だ。

センターバックの藤井は”第二次・森保ジャパン”の立ち上げとなった今年3月の活動で初招集されたが、ウルグアイ戦、コロンビア戦ともに出番なく終わった。2000年12月26日生まれで、本人も「1週間遅く生まれたいらパリ五輪世代(笑)」とコメントしていたが、そうした”超谷間”の境遇を乗り越えて、A代表まで上り詰めた。

大人に強く、カバー範囲が広い藤井は機を見た豪快な攻め上がりでも違いを生み出せる。今回は冨安健洋(アーセナル)がスケジュールの事情で招集外となっているが、それでも国内外に多くの実力者がいる中で元旦のメンバーに食い込んだということは森保監督が藤井のポテンシャルを高く評価し、改めて代表で確認したいという評価を勝ち取った証拠でもある。

中盤のポリバレントである川村は左利きの特性を生かすダイナミックな組み立て、鋭い持ち上がりからのミドルシュートなどを武器とする。6月の活動で初招集されたが、その時は体調不良により早期離脱。急遽、追加で呼ばれた伊藤敦樹(浦和レッズ)がアピールに成功して、その後の活動にも続けて呼ばれたことは記憶に新しい。

その伊藤はクラブワールドカップに参戦するため、元旦まで休養が取れないことも考慮されて今回は外れた可能性が高い。川村としても大きなチャンスが再び巡ってきたと言える。同じボランチには佐野海舟(鹿島アントラーズ)が11月に引き続き招集されており、二次予選のミャンマー戦でデビュー済みでもある佐野は現在の序列で言うと、川村よりやや上かもしれない。

アジアカップへのサバイバルを考えれえばライバルだが、二人は川村がどちらかというと8番、佐野が6番タイプ。ボランチで二人がコンビを組んでも、あるいは4ー3ー3の中盤で同時に出ても面白そうだ。今回は遠藤航(リバプール)と守田英正(スポルティング)という主軸がおらず、伊藤敦樹もいない中で、田中碧(デュッセルドルフ)とどういう組み合わせで、川村がどこまでプレー時間をもらえるか。佐野との兼ね合いでも気になるところだ。

奥抜は当時J2の大宮アルディージャからポーランドに渡り、グールニク・ザブジェでの活躍が認められる形で、ドイツ2部のニュルンベルクに完全移籍した。元々カットインを絶対の武器とするアタッカーだったが、それだけでは欧州で飛躍できないと縦の突破にも磨きをかけて、森保監督の目にも留まった。

しかし、10月の活動で体調不良の三笘に代わり追加招集されるも、奥抜自身も合流直後に発熱と倦怠感を訴えて、チーム練習に本格合流したのが、シリーズ2試合目のチュニジア戦前日に。ベンチ入りはしたが、A代表デビューは叶わなかった。それでも所属クラブで奮闘を続けてのセカンドチャンスだ。

左サイドの序列としては元旦の試合は招集外の三笘、中村敬斗(スタッド・ランス)、そして三笘と同じく日程の事情で入らなかったと見られる相馬勇紀(カーザピア)に続く4番手。しかも、FWの浅野拓磨(ボーフム)も左で起用されており、生き残りには相当のアピールが必要ではあるが、そもそも叩き上げでここまで来た選手であり、突き上げが楽しみだ。

そして初招集の伊藤涼太郎もここからのアピール次第で、タレント揃いの二列目にも十分に食い込んでいくポテンシャルがある。浦和レッズに所属していた当時からセンス抜群だったところに、アルビレックス新潟でチームのために走ることを学び、欧州で力強さを増している。

森保監督は伊藤涼太郎がまだまだベルギーで本領を発揮しているとは言い難いことに言及している。言い換えれば、そうであっても呼びたいほどの可能性を感じているということであり、代表活動で伊東純也(スタッド・ランス)や南野拓実(モナコ)、堂安律(フライブルク)といった欧州でも、さらに高いステージでプレーしている選手と活動をともにする中で、クラブレベルでの飛躍につながるものを持ち帰ることも期待したい。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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