「札幌の発明少女」の特許の内容について
「"札幌の発明少女"開発現場に密着…アイディアの源は"100均"いま"若者の特許"がアツい」という記事を読みました。11歳で特許を取得した北海道の小学生の話です。
少し前に、これとはまた別の小学生の特許取得について「起業にも結び付いた小6女子の特許発明について」という記事を書いています。今回もそうですが、小中学生が、大人では考えつかないような子供らしい独自の視点でアイデアを生み出し、それを特許化したというニュースを聞くと、私としては何とも心が洗われるような気持ちになります。
さて、今回の特許ですが、第7503721号です。発明の名称は「害虫捕獲、解放及び駆除装置」、出願日は2024年1月26日、登録日は2024年6月12日(早期審査請求)です。2023年12月2日および3日の北海道青少年科学技術振興作品展での発表内容に対して新規性喪失の例外手続を請求しています(少し前に特許法を勉強した方は出願前に公表してしまうと新規性がなくなって特許取得できなくなるという認識があるかもしれませんが、特許法改正により、現在は、発明者自身による公表であればそれから1年以内に出願すれば、自身の公表を理由に新規性・進歩性を否定されることはありません)。
この特許のポイントは、害虫を捕獲した際に、二酸化炭素で駆除するだけでなく、駆除せずに解放するという操作もワンステップでできるようになっていることです。タイトル画像で説明すると、害虫を箱部分(18)に捕獲した後で、二酸化炭素を注入して駆除するのですが、箱部分をマジックハンド部(32)から取り外して、(典型的には屋外に持って行った後で)引き出しを開けて害虫を解放することもできるようになっています。
言うまでもなく、害虫を捕獲して二酸化炭素や殺虫剤により駆除する仕組みは公知(これは特許明細書中でも先行文献として挙げられています)ですが、駆除せず屋外で解放するオプションを提供するというアイデアは斬新だと思います。審査過程でも形式的な拒絶理由は通知されていますが、新規性・進歩性は問われていません。たとえ害虫であっても命を大事にするという発想は大人ではなかなか出てこないのではないでしょうか?
さて、小中学生の発明の特許出願の一般的考慮点については、別記事「お子様の発明の特許化を検討されている保護者への手引き」にまとめています。また、YouTube動画も作っておりますので、関心のある方はご覧ください。