ドコモが「dポイント」など44のサービスURLを順次変更。何が目的なのか
NTTドコモは2021年から2022年にかけて、「dポイントクラブ」や「dカード」など44サービスのURLを順次変更します。ユーザーにとってはブックマークの変更などの手間が発生することになりますが、いったい何が目的なのでしょうか。
たとえばdカードの場合は、これまでWebサイトのドメイン名は「d-card.jp」でしたが、2022年6月から「dcard.docomo.ne.jp」に変更されます。個々のサービスだけでなく、ドコモの企業サイトも2022年3月に「www.nttdocomo.co.jp」から「www.docomo.ne.jp」に変更される予定です。
ユーザーへの影響としては、ドコモはURL変更に合わせてWebブラウザの「お気に入り」や「ブックマーク」を変更するよう呼びかけています。ブックマークを変更しない場合、URL変更から一定期間経過後にはアクセスできなくなる恐れがあるといいます。
多数のユーザーに変更の手間を取らせることになりますが、どのようなメリットがあるのでしょうか。URL変更の背景として、ドコモ側は世界的に進む「サードパーティCookie(クッキー)」の制限強化を挙げ、その回避策として「docomo.ne.jp」ドメインへの統一に踏み切ったとしています。
CookieはWebサイトがユーザーの情報を保存するために用いる仕組みで、ドメイン名によって、自サイト(ファーストパーティ)のものか、他サイト(サードパーティ)のものかに分かれます。このうちサードパーティのCookieについて、ChromeやSafariなどのWebブラウザはプライバシー保護の観点から段階的に利用を制限する方向に進んでいます。
そこで問題になるのがドコモが運営するサービスのドメイン名です。「d-card.jp」はたしかにNTTドコモが取得したドメイン名ですが、「docomo.ne.jp」とは別のドメイン名とみなされます。これに対して「dcard.docomo.ne.jp」なら、docomo.ne.jpのサブドメインであることから、サードパーティ規制の影響を受けません。
たしかに「d-card.jp」のようなドメイン名は短くて覚えやすく、現場に近いところで運用できるので小回りが利くとか、SEOに有利な場合があるなどのメリットはあったと考えられます。ドメイン名の使い方として、間違っていたというわけではありません。
しかしサードパーティCookieの規制が強化されると、サービス間で「dアカウント」によるログイン状態を引き継げない場合が出てくるため、ユーザーにとって再ログインの手間が増えるというデメリットが生じます。ドコモによれば、ドメイン名を「docomo.ne.jp」に統一することでシングルサインオンを継続でき、これを回避できるといいます。
また、フィッシング対策の効果もありそうです。汎用JPドメインや「.com」ドメインは、GMOの「お名前.com」などを利用して誰でもドメイン名を取得し、Webサイトを開設できます。これを悪用すると、ドコモのドメイン名とよく似た名前で悪意のあるWebサイトを作ることができてしまいます。
一方で、ドコモによる「本物」のWebサイトでも「dpoint-inv.com」のようにお名前.comで取得したドメイン名が使われる場合があり、見分けがつきにくい状態でした。ドメイン名が「docomo.ne.jp」に統一されれば、本物のWebサイトかどうか判別しやすくなりそうです。
リダイレクトは1年以上、変更後もドメイン保持の方針
サービスURLの変更について、ドコモは継続的に告知していくとは思われるものの、すべてのユーザーがブックマークを変更できるわけではありません。URLの変更により、新しいサイトにたどりつけないユーザーが出てくる恐れがあります。
この点について、ドメイン名やWebサイトには転送(リダイレクト)の仕組みがあり、ドコモは最低でも1年程度は転送をかける予定としています。その後は古いURLへのアクセス状況を見ながら、いつまでリダイレクトを続けるか検討することになると思われます。
また、変更によって役目を終える「dpoint.jp」などのドメイン名の行方も気になるところです。もしドコモがドメイン名を手放してしまうと、第三者に取得されてしまい、かつて本物だったドメイン名でフィッシングサイトを作られる恐れがあります。
この問題はドコモ側も認識しており、変更後も一定期間はドコモでドメイン名を確保し続けるなど、不正対策を講じる方針としています。