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バルサがフェラン・トーレスを選手登録できない理由。メッシ退団後も解決しないサラリーキャップの問題。

森田泰史スポーツライター
バルセロナに移籍したフェラン・トーレス(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

冬の移籍市場が開幕した。注目を集めているのが、バルセロナだ。

バルセロナは今冬のマーケットでフェラン・トーレスを獲得。移籍金固定額5500万ユーロ(約67億円)+ボーナス1000万ユーロ(約13億円)でマンチェスター・シティと合意に達して、スペイン代表のアタッカーを引き入れた。

■メッシの退団

バルセロナは今夏、リオネル・メッシが退団した。バルセロナとの契約延長を望んでいたメッシだが、それが叶わず最終的にはパリ・サンジェルマンへの移籍を決断している。

メッシの退団の理由は、彼の高年俸とサラリーキャップの問題にあった。契約延長に際して、年俸50%減を受け入れていたメッシであるが、それでも年俸3500万ユーロ(約41億円)というのはバルセロナの大きな負担だった。

そして、バルセロナはメッシの放出を決めた。退団会見では、メッシが涙ながらに残留の気持ちがあったことを口にしていた。その姿は、痛々しかった。だがバルセロナは依然として問題を抱えている。

メッシの退団会見
メッシの退団会見写真:ロイター/アフロ

「フェランの獲得を決めた時、我々はサラリーキャップの問題があると分かっていた。いくつかの方法を模索している。次のグラナダ戦までには彼を登録できるはずだ。それが我々の見解だ」とはゼネラルディレクターを務めるマテウ・アレマニーの弁である。

しかしながらグラナダ戦を終えても、まだフェラン・トーレス登録の一報は届いていない。

■サラリーキャップの問題

今季開幕前の段階で、バルセロナのサラリーキャップは9790万ユーロ(約126億円)に設定されていた。

ラ・リーガのサラリーキャップは、各クラブの収入によって上限額が定められる。選手とコーチングスタッフの総年俸額を収入の70%以下に抑えなければいけないというのが基本ルールだ。

バルセロナが苦しんでいる背景には、パンデミックの襲来がある。新型コロナウィルスの影響で財政は大打撃を受けた。試合のチケット代やカンプ・ノウツアー料金の収入が見込めなくなった。アジアやアメリカへの遠征は中止になり、グッズ販売の収益も減った。2020−21シーズンには、4億8100万ユーロの損失があった。

「MSN」と呼ばれた3トップ
「MSN」と呼ばれた3トップ写真:なかしまだいすけ/アフロ

バルセロナは、どこから、正しい道を外れ始めたのだろうか。この見地に立った時、必ず言及しなければならない選手がいる。ネイマール・ジュニオールだ。

ネイマールは2013年から2017年までバルセロナでプレーした。2014年からはルイス・スアレス、メッシと共に「MSN」と称された3トップを形成し、2014−15シーズンにはバルセロナのトリプレテ(3冠)達成に大きく貢献している。

ただ、ネイマールという巨大な存在をバルセロナはコントロールできなかった。ネイマール(当時の推定年俸2500万ユーロ)、スアレス(1500万ユーロ)、先述したメッシと主力選手たちのサラリーは上がっていった。

一度上がったサラリーを、下げるのは難しい。今夏、ジェラール・ピケ、セルヒオ・ブスケッツ、ジョルディ・アルバといった選手は減給を受け入れた。だがそれは例外的なケースだ。現に、ウスマン・デンベレやセルジ・ロベルトは契約延長問題で揺れている。彼らが年俸の面で納得していないのは明らかだ。

ネイマールが悪い、という話ではない。これはクラブのマネジメントの問題だ。

いま、バルセロナは選手の放出オペレーションを進めている。サミュエル・ウンティティ、ユスフ・デミルが候補として挙げられている。

今季途中に就任したシャビ監督
今季途中に就任したシャビ監督写真:なかしまだいすけ/アフロ

フェラン・トーレスの獲得は、シャビ・エルナンデス監督の要望だった。

アレマニーGDはフェランの獲得を「ロス・レジェス・マゴス(スペインで子供にプレゼントを贈る習慣がある祝祭)のプレゼントだ」と形容した。しかしながら、贈られたプレゼントを開封できないようでは、笑えない。

フェラン・トーレスの選手登録問題を、将来的に笑い話にできるように、クラブには尽力してもらいたいところだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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