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歴代スーパー戦隊でブレイク俳優輩出の“最強”レンジャーは?

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『シンケンジャー』出身の松坂桃李(写真:中原義史/アフロ)

『秘密戦隊ゴレンジャー』から歴史あるスーパー戦隊シリーズの第46作『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』がスタートした。若手俳優の登竜門とも言われるシリーズだが、実際に新人キャストからトップ俳優を1人ならず輩出したという意味で、“最強”だった戦隊は何か? 振り返ってみる。

先駆けは『タイムレンジャー』の永井大

 スーパー戦隊をきっかけに活躍を広げた例を遡ると、『超獣戦隊ライブマン』(1988年)にはバイプレイヤーとして出演作が続く西村和彦がイエローライオン役で名を連ねていた。

 ぶりっこタレントとして脚光を浴びたさとう珠緒は『超力戦隊オーレンジャー』(1995年)でオーピンク役。肉体派で『スポーツマンNo.1決定戦』でも知られた照英は『星獣戦隊ギンガマン』(1998年)でギンガブルー役だった。

 だが、本稿では俳優としてのブレイクに注目する。“ブレイク”の基準を便宜上「その後の連続ドラマやメジャー映画での主演作が3本以上」とし、戦隊メンバーを演じたキャストを対象とする。

 その観点だと先駆けは永井大。『未来戦隊タイムレンジャー』(2000年)で主人公のタイムレッドを演じていた。戦隊の他の4人は未来人で、彼だけが現代人の設定。自身が空手で全国5位という腕前も役柄に反映された。

 これが本格的デビュー作。その後は長期シリーズ化された『特命係長 只野仁』で高橋克典が演じた主人公の相棒役を務めたほか、『サラリーマン金太郎』(テレビ朝日版)の矢島金太郎役や『新選組血風録』の土方歳三役などで主演している。

永井大
永井大写真:アフロディーテ

『ガオレンジャー』の追加戦士だった玉山鉄二

 『百獣戦隊ガオレンジャー』(2001年)の追加戦士として、21話から登場のガオシルバーを演じたのが玉山鉄二。1000年前に戦っていた先代ガオレンジャーの一員との設定で、冷静沈着なキャラクターだった。

 その後、『BOSS』シリーズでワケあり刑事を演じたり、青春群像劇『素直になれなくて』のメインキャストや実写版『ルパン三世』の次元大介役など、多くのドラマや映画に出演。

 2014年には朝ドラ『マッサン』で異例の男性主人公に。日本製ウイスキーに生涯を捧げる役で、トップ俳優のポジションを確立した。この4月にも主演映画『今はちょっと、ついてないだけ』が公開される。

(c)2022 映画『今はちょっと、ついてないだけ』製作委員会
(c)2022 映画『今はちょっと、ついてないだけ』製作委員会

 『ガオレンジャー』からは他に、ガオレッド役の金子昇が映画『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』やドラマ『ママはニューハーフ』で主演したほか、2時間ドラマなどにコンスタントに出演。また、ガオブラック役の酒井一圭はスーパー銭湯アイドル・純烈のリーダーとなり、紅白歌合戦に4年連続出場した。

『ボウケンジャー』から『DCU』副隊長や園芸王子

 上記の基準では“ブレイク”とはならないが、現在『DCU』で副隊長役の高橋光臣は『轟轟戦隊ボウケンジャー』(2006年)で主人公のボウケンレッドだった。『ノーサイド・ゲーム』のラグビーチームのキャプテンや『リコカツ』の北川景子の元カレなど、多くの作品で脇を固める存在に。

 また、ボウケンブルー役の三上真史は俳優業のほか、NHK『趣味の園芸』のナビゲーターを2011年から10年続けて、現在もコーナーに出演中。“園芸王子”と呼ばれるようになった。

最大の成功者は『シンケンジャー』の松坂桃李

 『侍戦隊シンケンジャー』(2009年)からは、スーパー戦隊出身で最大のブレイクといえる松坂桃李を輩出している。デビューにして主人公のシンケンレッドを演じた。侍をモチーフにした和風戦隊で、殿様のポジション。実は影武者という負い目があり、陰のある役どころだった。

 以後の活躍は目覚ましく、主演作だけでも映画『ツナグ』、『不能犯』、『娼年』、『孤狼の血 Level2』、『新聞記者』、ドラマ『サイレーン』、『視覚探偵 日暮旅人』、『パーフェクトワールド』など枚挙に暇がない。

 恋愛ものから犯罪ものまで役幅も広く、『新聞記者』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞など、数々の映画賞にも輝いている。

 『シンケンジャー』からは、シンケンピンク役の高梨臨もブレイクした。ドラマ『恋がヘタでも生きてます』などに主演のほか、朝ドラ『花子とアン』での吉高由里子が演じたヒロインの同級生役などで印象を残している。昨年は『アンラッキーガール!』など連ドラに3本レギュラー出演した。

千葉雄大は天使の戦隊、山田裕貴は海賊戦隊から

 天使がモチーフの『天装戦隊ゴセイジャー』(2010年)で、主人公のゴセイレッドを演じたのは千葉雄大。それまでのスーパー戦隊にないピュアでやさしい役に、事務所に入って1ヵ月足らずで受けたオーディションで合格。デビュー作となった。

 かわいい系男子として注目を浴び、『ゴセイジャー』終了後も出演作が相次ぐ。ドラマ『家売る女』では不動産会社でルックスを武器に売り上げを伸ばす営業マン、『高嶺の花』ではイケメン華道家など王子的な役がハマる。

 主演した『いいね!光源氏くん』では、『源氏物語』の世界からタイムスリップしてきたプレイボーイの貴族を体現した。

千葉雄大
千葉雄大写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ

 『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011年)では、山田裕貴がゴーカイブルー役でデビューしている。クールでストイックな二刀流の剣士で、長髪を後ろで束ねていた。その後は『HiGH&LOW』や『特捜9』シリーズ、朝ドラ『なつぞら』、映画『万引き家族』など実に多彩に出演。スーパー戦隊出身者の中でも、いぶし銀の印象がある。

 近年では『ここは今から倫理です。』などで主演。『ハコヅメ』では先輩にいいように使われる刑事役でコミカルな味も出して、『東京リベンジャーズ』では人気キャラのドラケンを演じた。

志尊淳と横浜流星が共演した『トッキュウジャー』

 冬ドラマで『ムチャブリ!』に出演していた志尊淳、『DCU』に出演中の横浜流星と勢いのある2人は、『烈車戦隊トッキュウジャー』(2014年)で共演していた。志尊は何でも楽しむ熱いリーダーのトッキュウ1号、横浜は気分屋でクールガイのトッキュウ4号。

 ミュージカル『テニスの王子様』でデビューした志尊は、これが連続ドラマ初主演。『トッキュウジャー』後も『表参道高校合唱部!』、『5→9~私に恋したお坊さん~』など出演が続き、『女子的生活』では見た目は美女だが実は男性というトランスジェンダーの役で主演。難しい役どころで演技を高く評価された。

 朝ドラ『半分、青い。』でも、ヒロインの永野芽郁らと漫画家のアシスタントを務める、ゲイの美青年を演じている。

志尊淳
志尊淳写真:YUTAKA/アフロ

 横浜は極真空手初段で、中3のときに世界大会で優勝。『トッキュウジャー』の撮影で、アクションシーンに吹き替えなしで挑んだりも。後に『あなたの番です』や主演した『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』でも、空手仕込みのアクションを披露している。

 髪をピンクに染めて不良から東大を目指す役を演じた『初めて恋をした日に読む話』で広く知られるようになり、『私たちはどうかしている』では浜辺美波、『着飾る恋には理由があって』では川口春奈の相手役。今年は主演映画『嘘喰い』も公開された。

横浜流星
横浜流星写真:西村尚己/アフロ

 こうして振り返ると、志尊と横浜を輩出した『トッキュウジャー』が、俳優ブレイクの点では“最強”の戦隊だったと言える。他に複数のブレイクを生んだのは、松坂桃李と高梨臨の『シンケンジャー』だけだった。

『仮面ライダー』に見劣り? 令和作品からの期待

 改めて見ると、スーパー戦隊シリーズは登竜門と呼ばれるわりには、今ひとつブレイク率が低い印象は否めない。

 参考に『仮面ライダー』シリーズから、平成以降のブレイク俳優を挙げてみると、オダギリジョー、要潤、水嶋ヒロ、佐藤健、瀬戸康史、桐山漣、菅田将暉、福士蒼汰、吉沢亮、高杉真宙、竹内涼真、赤楚衛二……。比べれば、人数と全体的なブレイクの規模に差がだいぶある。

 とは言え、令和からのスーパー戦隊の出演者の活躍は、まだこれからのはず。『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(2019年)でリュウソウレッド役の一ノ瀬颯は『ドクターX』のスピンオフで配信された『ドクターエッグス』に主演し、冬ドラマでは『ゴシップ』に出演していた。

 『魔進戦隊キラメイジャー』(2020年)でキラメイレッド役の小宮璃央も昨年、『JKからやり直すシルバープラン』に主演。サッサー選手の夢を諦めて俳優を目指し、『ドンブラザーズ』のドンモモタロウ役に抜擢された樋口幸平らも含め、今後に期待したい。

『リュウソウジャー』出身の一ノ瀬颯(撮影/河野英喜)
『リュウソウジャー』出身の一ノ瀬颯(撮影/河野英喜)

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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