スーパータイフーン22号、12月のフィリピン上陸台風としては統計史上"最強"
台風22号(国際名ライ)が、16日(木)フィリピン南部に上陸しました。22号は上陸直前に急速に強まり、12月にフィリピンを直撃した台風としては1951年以来で最強となった可能性があります。
台風22号(国際名ライ)が、16日(木)13時頃、フィリピン南部シャルガオ島に上陸しました。日本の気象庁の解析では、上陸直前の中心気圧は915hPa、最大風速は55m/sで、強さは最強の「猛烈」でした。
一方、米軍の解析によると、22号は最強クラスの「スーパータイフーン」に相当しました。米軍は気象庁と異なり、1分平均の推定風速を発表していますが、上陸直前の風速は72m/sでした。スーパータイフーンの基準は67m/s以上です。
タイトルの画像は、上陸直前の衛星画像です。色が黒、そして白いほど、空高いところまで発達した雲があることを示しています。恐怖を覚えるような毒々しい色です。台風の目の中心付近では、75m/sに達するような超暴風が吹き荒れているおそれがあります。
12月のフィリピン上陸台風としては最強か
12月にフィリピンに915hPa以下の強さで台風が上陸した例は、1951年以降、私が調べる限り見つかりませんでした。
これまで12月に海上で中心気圧が915hPa以下に下がった台風は、全部で11個ほどありました。その中でフィリピンに上陸したものは、1964年34号、2006年21号、2014年22号と2016年26号の4例です。しかしそのいずれも上陸時の気圧は915Paを上回るものでしたから、今回の22号が12月としては観測史上最低気圧、つまり史上最強だったといえそうです。
先日、アメリカでは12月としては観測史上最悪の人的被害を出す竜巻大発生が起きてしまいましたが、太平洋でも異変が起きてしまいました。
被害は甚大か
フィリピンでは平均で年間6~9個の台風が上陸しますが、過去大きな被害をもたらした台風のほとんどは11月から12月に発生しています。
2013年に規模、被害ともにフィリピン史上最悪の被害を出した台風30号(ハイエン)は11月の台風でした。また2012年に1,900人の死者を出した台風24号は12月の上陸でした。
なぜ秋以降は被害が大きくなりやすいのでしょうか。それは台風がフィリピン中・南部に進むのが多いことが関係しています。
中部は数千の小島が浮かび、高潮被害が大きくなりやすく、南部は特に貧しい地域であり、インフラが整っていないためです。
22号の中心は南部に上陸、17日(金)朝にかけて台風に脆弱な地域を横断する見込みです。残念ながら大きな被害が出る可能性が非常に高くなっています。
これからの台風事情
ところで、今回少し気になることがありました。
15日(水)午後には、22号の最大風速(10分平均)は35m/sでした。しかし台風が上陸する直前に急速に発達して、24時間で風速が20メートルも増えました。通常、上陸直前というのは、台風本体の雲が陸にかかるので摩擦力などから、勢力は若干弱まるものです。
しかし温暖化に伴って、今後は上陸直前に急発達する台風が増えるかもしれないというハリケーンに関する論文が発表されています。さらに上陸した後も今よりゆっくり弱まっていく可能性が指摘されています。そうなると、ピークに近い状態で陸地を通過することになります。
それだけではありません。日本付近を通過する台風の速度は、今より約10%遅くなる、という予測結果を気象庁気象研究所などは発表しています。そうなれば強い暴風雨が、今よりずっと長引いて被害が大きくなることは確実です。
台風の強さを変えることができない以上、これまでよりも油断せず十分すぎるほどの対策を前もって取る必要がありそうです。
※台風のデータは、デジタル台風の統計を参考にしました。