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ハローワークを利用する若年無業者は15.3%。足立区若年者の就労状況及び就労意識調査から。

工藤啓認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長

足立区が2014年8月に「足立区若年者の就労状況及び就労意識調査」報告書を出しています。

調査対象は15歳以上39歳以下の区内居住者10,000名を住民基本台帳から無作為抽出したものです。アンケート調査の有効回収数は2,686です。「若年者」の意識を調査するにあたって、年齢を39歳以下にしているのは、だいたい2011年以降くらいからのトレンドです。

かなりいろいろなアンケート項目で取っているので、「若者」と「働く」意識をさまざまな切り口で見ることができるのではないでしょうか。研究者や分析が得意な方にローデータ公開してほしいです。多角的な分析は現場NPOでも大変参考になるものが多いので。

Q8 あなたは現在働いていますか。
Q8 あなたは現在働いていますか。

アンケート回答者の若者のうち、「無職」と「派遣会社などに登録しているが、現在は働いていない」と回答されたのが3.7%(101名)でした。この両者の若者を「無業」まはた「無業者」と定義づけています。つまり、若年無業者です。

Q9 あなたは働いていたことがありますか。
Q9 あなたは働いていたことがありますか。

複数回答ですが、現在、無業の若者のウチ、過去に正社員で働いていた経験を持つのが65.9%と半数を大きく超えています。また、アルバイト・パートとして働いていた(学生時代の経験を望む)若者も47.5%います。逆に、働いたことがないと回答したのは4.7%と大変少ないです。

育て上げネットの調査「若年無業者白書-その実態と社会経済構造分析」でも、過去に就業経験を持つ無業の若者は75.5%でした。

Q10 あなたが退職したきっかけは何ですか。
Q10 あなたが退職したきっかけは何ですか。

ただ、足立区調査では、退職のきっかけが妊娠・出産・育児・介護のためと回答された方が51.7%いることは留意する必要があります。ここが断トツで多く、報告書では複数回答も多く切り離して見られないのが残念です。

その他、回答が多いものとして、体調不良が18.1%、職場の雰囲気・人間関係が合わなかった16.4%が上位にあります。たった1.4%(5名)ですが、「社会貢献ができなかったため」という回答があり、働くことや所属企業に何を期待し、それがかなわなかったのかなど、その内容が気になります。

ここでいう若年無業者で、就職を希望されている若者で就職希望の方の就活状況もわかります。

Q13 あなたは現在どのような就職活動をしていますか。
Q13 あなたは現在どのような就職活動をしていますか。

就職希望であっても、就職活動をしていない若者が54.4%と半数います。妊娠・出産、育児や介護のために無業の方も含まれていると思いますが、育児をしながら働くことや、介護をしながら働くことができないために、働きたいけれど働けない若者がかなりいるといってはいいのではないでしょうか。内訳はわかりませんが、若者や女性の活躍を期待するのであれば待機児童の問題や、働きながら子育てできる環境、両親や祖父母が要介護になった場合、家族がそのケアのため働くことができないような社会環境は改善していかなければなりません。この部分に安心ができないと子どもを産み、育てようという気持ちにはなかなかなれないと思います。

また、就職活動に対しては、ハローワークを利用する若者は15.3%と少ないですね。民間の求人サイトや就職情報誌の方が活用しやすいのか、信頼度が高いのかはわかりませんが、ハローワークにも改善の余地がありそうです。ハローワークインターネットサービスもありますが、就職活動のために希望企業に足を運ぶのであればまだしも、「来所」を大前提にしていると、それが可能なひとしか活用しないのも無理ありません。

求職申込みをする

1.ハローワークを利用して求職活動を行っていただくためには求職申込みが必要です。

最寄りのハローワーク(※補足1)においでください。

出典:ハローワークインターネットサービス

毎週求人が更新されたとして、ネットで見られたとしても、「ここいいな。受けてみたいな」という求人案件があっても最寄りのハローワークへ都度行かなければならないというのは、居住エリアやアクセシビリティで難しい場合には役に立ちません。

Q14 あなたが就職活動をする上で困ったこと、または困っていることは何ですか。
Q14 あなたが就職活動をする上で困ったこと、または困っていることは何ですか。

まずは子育て中の若者が就職活動しづらい環境は、保育園拡充が急務ですし、就職活動をする場合の特別一時預かり所などがあってもいいのではないかと思います。子どもを預ける場所がなくて就職活動できないわけですから。また、「何から手を付けていいのかわからない」若者が17.2%いますが、前述の白書調査でも、どうしたらいいのかわからなくなるという声は少なくなく、無業期間が長期化するとよりその気持ちは大きくなります。

働きたいと希望する若者で、スキルが足りないのであればスキル形成(せめてその道筋)、何から手を付けていいのかわからないのであれば、キャリアカウンセリングなどによる現況の整理など、就職活動にかかる費用不足であれば費用拠出や無利子貸し付けなど、できることもかなりあります。

財源論にぶつかると思いますが、納税や消費で社会を前に進めようとしていく若者や世代への拠出は、保育園の問題を含めてすべて投資になります。状況や困難はさまざまではありますが、働きたいニーズに応えるにはマッチング以前の阻害要因を除去するとともに、労働市場への(再)参入および連続的なキャリア形成の機会を提供していくことが求められます。

履歴書→面接→職場、というプロセスを反転させることで、キャリアがストレートでないひとたちがよりスムーズに労働市場への(再)参入可能性を高めることや、働く前後の阻害要因を個人に寄り添って解決していく環境などが重要で、賛否はありますが、トライアル雇用制度の改変や、ジョブコーチ制度の枠組みを応用活用することで対応できる部分はかなり広がるのではないかと思います。

認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長

1977年、東京都生まれ。成城大学中退後、渡米。Bellevue Community Colleage卒業。「すべての若者が社会的所属を獲得し、働くと働き続けるを実現できる社会」を目指し、2004年NPO法人育て上げネット設立、現在に至る。内閣府、厚労省、文科省など委員歴任。著書に『NPOで働く』(東洋経済新報社)、『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『若年無業者白書-その実態と社会経済構造分析』(バリューブックス)『無業社会-働くことができない若者たちの未来』(朝日新書)など。

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