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英語は要らない?外国人と“日本語で”上手にコミュニケーションをとるポイント

高橋亜理香日本語教師/日本語・日本酒ライター

お読みくださってありがとうございます!日本語教師の高橋亜理香です。

みなさんの職場や学校には、外国人が在籍していますか?

政府は2033年までに外国人留学生の日本への受け入れを40万人にするという目標を掲げています。少子高齢化など日本の諸問題に関連して、日本は人材不足が常態化。すでに外国人材の流入なしには成立しない社会となりつつあります。

日本人のフシギ?と在留外国人のニーズ

そんな在留外国人との会話、無意識に“英語で”話そうとしていませんか?
外国人が不思議に思うことのひとつに「日本人が相手の国籍関係なく、国内でも英語で話そうとすること」があります。相手の外国人が日本語で答えているのに、なぜか英語を貫こうとする日本人…。特に英語が得意な人に顕著かもしれません。

ですが外国人がすべて英語圏ではありません。在留外国人の出身国ランキング10位以内には公用語が9言語存在するそう。

「そもそも日本にいるのだから日本語で話したい」という気持ちを持つ人は多く、国立国語研究所によると、日本在住の外国人に対し「日常生活に困らない言語」について調査をおこなったところ、「日本語」と回答する外国人が最も多く、英語の44%に対して日本語は62.6%にのぼっています。

この結果には驚く人もいるのでは?外国人は、日本人が思うより「日本語を話したい!」と考えているのです。

でも、日本語で話すと通じない…?

「でも、日本語でやりとりしようとしたら全然通じなかった…」といった経験がある人は多いかもしれません。実際外国人の日本語レベルはまちまちです。
そんな外国人に日本語が上手く伝わらないのは、日本人に対してと同様の話し方をしているから。単にスピードを緩めるだけではだめ。会話の工夫で、外国人にも通じやすい日本語にすることができるのです!

そこで今回は「外国人と“日本語で”上手くコミュニケーションを取る」ポイントを伝授します!

日本語だけで在留外国人とコミュニケーションを取ろう

ポイントその1:「です/ます」の敬体を使う

まずは「です/ます」の「敬体」を使って話すようにしましょう。

同世代なら、一見タメ口のほうがフレンドリーでいい気がしてしまうかもしれません。でも日本語を学習している外国人の大半は、いわゆるタメ口の「常体」ではなく、敬体で日本語を学んでいます。なぜかというと、通常日本語教育では誰に対しても失礼にならないよう、敬体から勉強するからです。そのため、「です/ます」の会話のほうが理解しやすいのです。

例えば「会議の資料ってどこ?」と聞きたい場合、「って」は会話のときの縮約形なので、わかりにくいです。「会議の資料はどこにありますか」と言った方が通じやすいのです。

では、「これもう要らないから、捨てといて」と言いたい場合はどうでしょう?

まず「といて」が通じにくいので「これはもう要らないから、捨てておいてください」と直したい…ところですが、「~しておく」も超初級者では通じません。

「これはもう要りませんから、捨ててください」と言うと、よりわかりやすくなります。「~してください」を知らない外国人には、「これは、要りません。捨てます、お願いします」と言えば、さらに通じやすくなるのです。

ポイント2:できる限り文を短く!複文にしない

次のポイントは、文を短くすること。複文は咀嚼しにくく全体を捉えにくいので、長い内容を伝えたいときは、短く区切ってください。

例えば「明日の11時の会議が9時に変更になったからさ、今日帰るまでに資料をコピーしといてくれないかな」と言いたい場合、

「明日の会議は時間が変わりました。11時じゃありません。9時です。だから、今日資料をコピーしてください」のようにひとつずつ文を完結させていくと聞き取ってもらいやすくなります。

ポイント3:漢語より和語のほうがいい

ポイントの3つ目は、音読みの漢語を使うより、訓読みの和語を使うように心がけることです。漢語は同音異義語が多く、外国人は区別しにくいです。できるだけ和語を使うほうが、伝わりやすくなります。

「終了する→終わります」「休憩します→休みます」「昼食→昼ごはん」「高額→値段が高いです」のような要領です。

例えば「あしたの勉強会は昼食の支給がないので、自分で持参してね」と言いたいときは、「あしたの勉強会は、昼ごはんを持ってきてください」のように和語で簡潔に言い換えるとわかりやすいのです。

ポイント4:敬語はほどほどに

外国人にとって、敬語は種類も多く特別な表現も多々あるため、敬語の多用は難解になってしまいます。

例えば「恐れ入りますが、在庫を確認してまいります。こちらで少々お待ちいただけますか」では、日本語初級者は困ってしまうので、

「すみません。○○があるかどうか確かめます。ここで少し待ってください。」のように言い換えると理解しやすくなるでしょう。

ポイント5:オノマトペ(擬音語・擬態語)は難しい

日本人なら感覚で理解できるオノマトペ(擬音語・擬態語)ですが、外国人とは意外と共通しない部分も多く、使うと却ってわかりにくくなる場合があります。

例えば「ごめん、今ちょっとバタバタしてて…。後にしてくれないかな」と言いたいとき。オノマトペは除いてみてください。

「すみません。今忙しいです。○時に話しましょう」のように言いましょう。(ちなみに「後にする」などもあいまいで困ってしまうので、具体的な数字・時間で表してください)

ポイント6:書くときは、漢字も使う&「分かち書き」が有効

メールやメッセージで、外国人だから漢字は難しいかな…と気を遣ってひらがなだけにすると、実は逆に読みにくくなります。これは外国人だけでなく日本人にも言えること。

「いつもおせわになっております、たかはしです。らいしゅうのしてんかいぎについてのかくにんでごれんらくいたしました。とうじつですが…」

このようにひらがなオンリーは読みにくい!日本人の場合なら、ひらがな:漢字を7:3ぐらいの割合にするのが適度と言われています。それを踏まえて少し漢字を含めたほうが外国人にとってもよかったりするのです。

また「分かち書き」を用いるのもよい方法。「分かち書き」とは文章を分節でわけて、スペースを入れながら書く方法です。

例えば「部長にスライドの作り方を注意されました」という文をわかち書きにする場合は、「部長に スライドの 作り方を 注意されました」のようにスペースを入れます。

分かち書きにはルールがあるのですが、基本的には「ね」を入れて不自然ではないところにスペースを入れます。

「部長に(ね) スライドの(ね) 作り方を(ね) 注意されました」

といった感覚です。

特にひらがなの多い文ではわかち書きをすることで読みやすくなるので、外国人には有効です。

まずは、日本語で話しかけてみよう

日本語で外国人と話すポイント、いかがでしたか?

われわれ日本語教師は「日本語で日本語を教える」プロなので、さらにどの程度の日本語レベルでどんな語彙や文法なら理解できるのか、を把握して使い分けていますが、今回ご紹介したポイントは普通の人にも実践しやすいものです。

とにかく「はじめは日本語で話しかけること」!

ここは日本ですから、それで当たり前。せっかくの外国人の向学心やチャレンジを潰さないため、ぜひ「日本語で会話する」ための参考にしてください。

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日本語教師/日本語・日本酒ライター

都内日本語学校の専任講師を経て、現在はフリーランスの日本語教師として留学生の日本語・進学指導やオンラインレッスンをしています。外国人の日本語学習を通して日本人の気づかない日本語を探究中。兼業で日本酒ライター・テイスターとして、父の故郷の秋田県をはじめとした日本酒の良さを伝えるお仕事もしています。保有資格:日本語教育能力検定試験、J.S.A.SAKE DIPLOMA、SSI日本酒学講師、SSI利酒師

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