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【令和元年台風15号・19号】生活再建を目指して~弁護士会ニュースで希望の情報を~

岡本正銀座パートナーズ法律事務所・弁護士・気象予報士・博士(法学)
静岡県弁護士会ニュース 台風19号水害編 第1号(2019年10月15日)

■令和元年台風19号

 被災された方々やご家族様に衷心よりお見舞いを申し上げるとともに、最前線で救援・復旧活動に従事されている方々に心よりの敬意を表します。

 2019年10月12日に東海・関東に上陸した台風19号により、東日本広域で甚大な被害が発生しました。74人もの命が失われ、12人が行方不明のままです(10月15日時点の各社報道による)。全壊、半壊、一部損壊、床上浸水、床下浸水、そのいずれもが、集計できないほど甚大な被害となっています(被害詳細については内閣府防災担当ウェブサイトにて随時更新されます)。

 また、台風19号の被害を受けて、2019年10月14日の発表時点で、13都県315市区町村に災害救助法が適用されるに至りました(更新情報については内閣府防災担当「災害救助法の適用状況」を随時ご参照ください)。これは、東日本大震災の10都県241市区町村を上回るほどの規模です。

■生活再建のための法律や制度がある

 大きな災害で被災された方の声を、弁護士たちは聴いてきました。東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)、西日本豪雨(2018年)などでは、弁護士が行った膨大な被災者無料法律相談事例を分析してきました。

 自宅をはじめとする資産を失い、仕事を失い、ローンや生活費の支払に窮し、将来の再生の道筋を見つけられないという絶望ともいえる苦悩の声を聴いてきました。悩みのすべてをすぐに解決することはできません。しかし、その最初の希望の一歩となるような「法律や制度の支援」が存在することを、弁護士は伝えてきた実績があります。

 どのような制度があるのかについては、内閣府「被災者に対する支援制度等について」という冊子が詳細に記述しています。情報は豊富ですが、直ちにこれを配布するには分量が多すぎます。筆者は、これまでの相談事例分析などを通じて得た知見をもとに、少しでも多くの方へ「知識の備え」をしてほしいと願って、各所で防災研修などを続けています。たとえば、以下のコラムは今後も役立つと思いますので、ご参考になさってください

■弁護士会のニュースで情報収集を

 

 実際に被災してしまった方が、自ら新しい情報を探索したり、ニュースやウェブサイトの通知をチェックして支援情報を漏らさないようにしたりすることは、非常に困難です。精神的にも肉体的にも追い詰められている避難所生活であれば、尚更だといえます。

 そこで、情報収集のきっかけにしてほしいのが『弁護士会ニュース』です。

 被災者への相談実績の豊富な弁護士のノウハウを集約し、ニーズの高い情報を中心に、様々なお知らせを発信しているチラシ(かわら版)です。

 2019年では、佐賀県弁護士会による「弁護士会便り」(【令和元年 佐賀豪雨】被災者生活再建支援法が適用 「佐賀県弁護士会便り」活用を)や、千葉県弁護士会による「弁護士会ニュース」の発行などがあります。

 今回、とくにご紹介するのは、台風19号発生直後に発行された静岡県弁護士会のものです。静岡県弁護士会は、平時より、静岡県や県内基礎自治体と災害協定の締結を進めており、法律相談について事前の体制整備を行っています。今回も、そのような事前準備が奏功し、10月15日に、いち早く「静岡県弁護士会〈災害時Q&A集〉台風19号水害編 第1号」(2019年10月15日)の公開に至りました。

 冊子「水害にあったときに」(震災がつなぐ全国ネットワーク)の紹介、罹災証明書、被災者の方への支援、住宅ローンなど支払いの問題、紛失物の問題、事業者支援などについて、利用できそうな制度が記載されています。

 

「静岡県弁護士会〈災害時Q&A集〉台風19号水害編 第1号」(2019年10月15日)※静岡県弁護士会提供
「静岡県弁護士会〈災害時Q&A集〉台風19号水害編 第1号」(2019年10月15日)※静岡県弁護士会提供

■国や自治体から出る支援情報にアンテナを

 国、県、基礎自治体、各種事業者のウェブサイトでは、被災者の生活再建に向けた情報が多数発信されます。膨大な情報を取捨選択したり、検索したりするには、一定のノウハウが必要です。弁護士会ニュースに目を通していれば、検索の足掛かりになり得ます。

 静岡県の「弁護士会ニュース」の作成にかかわった、静岡県弁護士会所属の永野海弁護士からは次のような力強いメッセージをいただきました。ぜひ「弁護士」から情報を得ることも考えていただければと思います。

 いまや、弁護士や弁護士会の災害時の支援活動は、法律相談にとどまりません。支援情報などの提供はもちろんのこと、被災された方と一緒に生活再建の問題を悩み、考えることが当たり前になっています。今回作成した支援情報集をご覧になっても、内容がよく理解できなかったり、まず自分が何からはじめたらいいかわからなかったりする方がたくさんいらっしゃると思います。そんなときには、「法律相談じゃないから」、と思わずに、迷わず、地元の弁護士会にご相談下さい。

■弁護士会と自治体の災害協定が迅速な情報提供に

 静岡県伊豆の国市は、10月15日の夕刻に静岡弁護士会が弁護士会ニュースを公表した直後に、同ニュースや、静岡県弁護士会による相談窓口情報を掲載しています。同市は静岡県弁護士会と「平時の災害対策及び災害時被災者支援活動に関する協定」を締結していました。災害発生直後から弁護士会との情報連携を密にしており、早期の市民への生活再建にかかわる情報発信が可能になりました。

 静岡県弁護士会は、すでに県下の自治体と多数の協定を締結しており、災害時に不安になる被災者への支援活動を円滑に行う体制の整備に努めています。台風19号による被害発生時において、迅速な支援情報共有ができたのも、事前の協定が奏功したものと評価できるのではないでしょうか。

(主な参考文献)

岡本正「災害復興法学」(慶應義塾大学出版会2014年)

岡本正「災害復興法学2」(慶應義塾大学出版会2018年)

岡本正「災害復興法学の体系:リーガル・ニーズと復興政策の軌跡」(勁草書房2018年)

岡本正監修「被災後の生活再建のてびき」(東京法規出版)

岡本正監修「生活のソナエ袋」(銀座島屋)

銀座パートナーズ法律事務所・弁護士・気象予報士・博士(法学)

「災害復興法学」創設者。鎌倉市出身。慶應義塾大学卒業。銀座パートナーズ法律事務所。弁護士。博士(法学)。気象予報士。岩手大学地域防災研究センター客員教授。北海道大学公共政策学研究センター上席研究員。医療経営士・マンション管理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)・防災士。内閣府上席政策調査員等の国家公務員出向経験。東日本大震災後に国や日弁連で復興政策に関与。中央大学大学院客員教授(2013-2017)、慶應義塾大学、青山学院大学、長岡技術科学大学、日本福祉大学講師。企業防災研修や教育活動に注力。主著『災害復興法学』『被災したあなたを助けるお金とくらしの話』『図書館のための災害復興法学入門』。

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