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ウクライナ軍、ロシア軍の新しい監視ドローン「Eleron T-16」を初めて迎撃

佐藤仁学術研究員・著述家
(ウクライナ国境防衛隊提供)

2023年8月にウクライナ軍が迎撃したロシア軍のドローン「Eleron T-16 UAV」の写真が公開されていた。ロシア軍のドローン「Eleron T-16」の写真が公開されたのは初めてと報じられている。確かに見たことがなかった。「Eleron T-16 UAV」は監視用ドローンとして使用するだけでなく、攻撃を行うことも可能らしい。

公開された「Eleron T-16」の写真を見るとウクライナ兵4人が並んでいても両翼がはみ出ているので、かなり大きなドローンだから、上空でもかなり目立つだろう。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻してから、ロシア軍は主にロシア製の監視・偵察ドローン「Orlan-10」で上空からウクライナの監視・偵察を行っている。たまにカメラの精度が高い「Orlan-30」や、「ZALA 421-16Е2」、「Eleron-3」といったほとんど見かけない監視ドローンでも偵察を行っている。だが、ほとんどが「Orlan-10」か中国製の小型民生品ドローンで監視・偵察を行っている。攻撃ドローンならイラン製軍事ドローンの「シャハド136」である。

ウクライナ軍では撃破したロシア軍のドローンや戦車、輸送トラックなどをSNSで公開して世界中にアピールしている。ロシア軍がウクライナに軍事侵攻してから数か月は、ロシア軍の監視ドローン「Orlan-10」を破壊した写真も多くSNSで公開していた。だが「Orlan-10」以外の監視・偵察ドローンが使用されて、それを迎撃して破壊したものを見かけることは少ない。ロシア軍の監視ドローン「Orlan-10」が迎撃されて破壊されても、もう珍しくないのでメディアやSNSでもほとんど取り上げられることもなくなってしまったが、「Orlan-30」や、「ZALA 421-16Е2」、「Eleron-3」といったレアなドローンや今回の「Eleron T-16」のような初めて登場したドローンは地元メディアやSNSでも取り上げられている。

ドローンは攻撃用も監視用も探知したらすぐに迎撃して破壊してしまうか、機能停止させる必要がある。上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。

このような監視・偵察ドローンは発見したら、すぐに迎撃しなくてはならない。偵察ドローンは攻撃をしてこないから迎撃しなくても良いということは絶対にない。偵察ドローンに自軍の居場所を察知されてしまったら、その場所にめがけて大量のミサイルを撃ち込まれてしまい大きな被害を招きかねないので、偵察ドローンを検知したら、すぐに迎撃して爆破したり機能停止させたりする必要がある。回収されて再利用されないためにもドローンは上空で徹底的に破壊しておいた方が効果的である。

▼ロシア軍の新しい監視ドローン「Eleron T-16」を初めて迎撃

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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