ギブソン、日本でレスポールの形状の周知性を大昔に否定されていた
ちょっと前に「ギブソン、敗訴によりEUでフライングVの立体商標の権利を失う」という記事を書いています。有名なV字型ギターの形状の立体商標が欧州において「現時点では一般的な形状となっておりギブソンの商品としての識別性を発揮していない」という理由により取消になったという話です。
日本でも同様の事例がないかと調べてみましたが、かなり昔に不正競争防止法の判決がありました。平成12年なので約20年前の判決です。商標ではなく不正競争防止法の商品等表示の話、および、審決取消訴訟ではなく侵害訴訟(の控訴審)ですが、状況は似ています。
フライングVではなく、これも有名なギターモデルである「レスポール」に関して、ギブソン社が、デッドコピー製品を製造販売していた日本のギターメーカー、フェルナンデス社を訴えた事例です。裁判所の判断はフライングVのケースとよく似ており、ギブソン敗訴です。
裁判所は、レスポールの形状は1973年頃にはギブソン社商品であることを示す表示として音楽ファンの間で周知となったものと認められたものの、いったん獲得された出所表示性は、遅くとも1993年前には、事実経過により既に消滅したと判断しています。20年以上にわたり、十数社の国内楽器製造業者から30以上ものブランドで、類似形態の商品が市場に出回り続けていたにもかかわらず、ギブソン社が何らの対策も取ってこなかったことをその大きな理由としました。
一般的に、一世を風靡した商品デザインのメーカーが取る道としては、(1)他社に摸倣されても気にせず元祖としての品質とブランドバリューで勝負していく、または、(2)他社の摸倣に厳しく対処し独自性を維持する、に大きく分かれるかと思います。どちらが良いかという話ではなく、そのメーカーの考え方次第でしょう。しかし、最初は(1)の方針でやっていて、後になってそのデザインが業界で広く使用されるようになってから、やっぱり(2)の方針で行くわというのは通らないということです。
これは、楽器等の商品の形状にかかわらず、一般的な商標にも言える話です。以前書いた「アップルが"ペンパイナッポーアッポーペン"商標登録の取消に失敗」という記事に対して「アップルなにやってんだw」的なコメントが見られたと思いますが、一見問題がないようなケースでも厳格に権利を行使する(少なくともそのような姿勢を見せておく)ことがブランド価値の保護には重要ということです。