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雪の南岸低気圧・雨の南岸低気圧のあとは冬型の気圧配置で強い寒気が南下

饒村曜気象予報士
南岸低気圧のときの地上天気図と衛星画像(2月13日15時)

今冬の冬日と真冬日

 今冬の特徴として、冬型の気圧配置は強さの割には長続きしないということがあげられます。

 令和5年(2023年)1月13日は北日本を通過した低気圧に向かって暖気が北上して4月並みの気温となり、最高気温が25度以上という夏日を観測したかのが21地点(全国で気温を観測している914地点の約2パーセント)もありました。

 しかし、その後、西高東低の冬型の気圧配置が強まり、今冬一番の強い寒気が南下したため、1月25日には真冬日を観測したのが502地点(55パーセント)と、全国の半数以上の地点で、気温が一日中氷点下という、冷凍庫の中の状態でした。

 また、冬日を観測したのが869地点(約95パーセント)と、南西諸島以外は全ての観測地点で冬日でした(図1)。

図1 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和4年11月1日~令和5年2月13日)
図1 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和4年11月1日~令和5年2月13日)

 今冬、真冬日を観測した地点数が一番多かったのは1月25日です。

 2月に入ると、強い寒気の南下は北日本どまりで、真冬日や冬日を観測した地点数が減少しています。

 そして、南岸低気圧が短い周期で通過するようになってきました。

 先週、2月10日(金)の南岸低気圧では、西日本の山地や東日本から東北の広い範囲で雪をもたらしましたが、今週の週初め、13日(月)の南岸低気圧では西日本から東日本、東北の広い範囲で雨が降りました(図2、タイトル画像参照)。

図2 南岸低気圧による24時間降水量(2月13日0時から24時)
図2 南岸低気圧による24時間降水量(2月13日0時から24時)

 九州南部では80ミリを超える雨となり、関東では寒い一日となりましたが、雪にはなりませんでした。

 同じ南岸低気圧でも、雨のときと雪のときがあるのは、低気圧の東側(進行方向の前面)にある高気圧の位置によります。

 低気圧の進行方向の前面の高気圧が少し北側にあると、この高気圧によって東よりの風によって下層の冷たい空気が引き込まれて雪になります。しかし、少し南側にあると、この高気圧によって南よりの風によって暖気が入って雨になるからです。

 とはいえ、南岸低気圧による降水は、雨になるのか雪になるのかの判断が難しく、しかも、雨か雪かで社会生活への影響が様変わりします。

 南岸低気圧は、いつも気象予報士なかせの事例となります。

今週の南岸低気圧通過後

 バレンタインデーの2月14日(火)は、ほぼ全国的に雨をもたらした低気圧が日本の東海上に去り、日本付近は西高東低の冬型の気圧配置となって寒気が南下してきます(図3)。

図3 予想天気図(2月14日9時の予想)
図3 予想天気図(2月14日9時の予想)

 恋人とホットな雰囲気の人もいるかと思いますが、バレンタイン寒波の襲来です。

 このため、全国的に気温が低くなり、北日本や北陸では雪の降る所が多く、雷を伴ってふぶく所もある見込みです。

 東~西日本の太平洋側は概ね晴れますが、関東甲信の山沿いや東海~近畿の太平洋側では所によりにわか雪があるでしょう。西日本の日本海側は雲が広がりやすく、近畿の日本海側~山陰では朝晩を中心に雪や雨が降る見込みです。

 寒気の強さを示す目安の一つに、上空約1500メートルの気温が氷点下6度以下になると平地でも雪となるというものがあります。

 南岸低気圧が通過していた2月13日(月)は、この上空約1500メートルで氷点下6度線は東北北部まで北上しており、東北から東日本・西日本では雨が降りました。

 しかし、2月14日(火)の夜には、上空約1500メートルで氷点下6度以下の範囲は、東日本から近畿・中国地方をすっぽり覆う見込みです(図4)。

図4 上空約1500メートルの予想気温分布(2月14日夜の予想)
図4 上空約1500メートルの予想気温分布(2月14日夜の予想)

 寒気が南下して西高東低の冬型の気圧配置となりますので、太平洋側の地方は概ね晴れますが、降水現象があれば雪として降ることを示しています。

 また、上空約1500メートルの気温が氷点下12度以下となる北陸以北の日本海側の地方では、大雪の可能性があります(図5)。

図5 48時間予想降雪量(2月14日3時から16日3時までの48時間)
図5 48時間予想降雪量(2月14日3時から16日3時までの48時間)

 北陸から東北の日本海側では、50センチから80センチの降雪が考えられていますので、今しばらく、大雪に対する警戒の継続が必要です。

晴れても寒い東京

 東京では、2月12日に最高気温16.9度と、4月並みの気温を観測したあと、気温は一直線に下降しています。2月13日の最高気温10.3度は未明に、最低気温4.9度は夜遅くに観測されました。

 2月14日以降は、晴れて日中は気温が上がりますが、それでも最高気温は10度に届くかどうかというレベルです(図6)。

図6 東京の気温変化(2月14日以降は予想)
図6 東京の気温変化(2月14日以降は予想)

 これは、強い寒気が南下しているからです。

 4月を思わせるような日があっても、すぐに真冬に逆もどりと、大きな変化を繰り返しながら春に向かっています。

タイトル画像、図2、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3の出典:気象庁ホームページ。

図6の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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