自信がない人がよくやる習慣「ヒゲる(卑下る)」
自信のない態度そのものが、自信をなくさせる要因
私は営業のコンサルタントです。しかたがって「自信のある/なし」によって営業成績が格段と差がつくことを知っています。どんなに美しいチラシを作っても、理路整然とした提案書を準備しても、自信がなければ相手を説得できないことが多いのです。「言語データ」はすべて正しく知覚されることがありません。その代わり「非言語データ」は、単なる感覚的なものではあるものの、相手に強く印象付けてしまう力があります。
人を動かすうえで「自信」というキーワードはとても重要です。正しい準備をする。訴求力のあるチラシを作る。論理的な提案書を作る。それらの要因で相手が納得する・説得できる、ということではなく、営業個人に「自信」を付けさせる作用がある、ということなのです。
どのように自信をつけるかは、自分に自信がない人が、100%できる「自信のつけ方」など、別コラムを参考にしていただくとして、今回は自信がない人がよくやる習慣「ヒゲる」を紹介し、自信喪失する種を増やさない対策を解説します。
「ヒゲる」とは「卑下する」の隠語です。「卑下する」よりも軽い感覚で使います。「卑下」とは、自分を他者より劣っている者として、へりくだること。過小評価することで、「謙遜」とは若干ニュアンスが異なります。どちらかというとネガティブな印象を与えるでしょう。「もっと謙遜したほうがいい」という言い方はあっても「もっと卑下したほうがいい」という表現はありません。
「ヒゲる」パターンを覚える
自信がない人は、意味もなく「ヒゲる」ことが多いようです。特に目立つのが、何らかの「本番」を迎える前後です。テスト、商談、プレゼン、舞台、試合……など等。何らかの本番のとき、ヒゲっているかどうかを検証します。たとえば、お客様の眼前でプレゼンする状況を考えてみましょう。ヒゲる人は、プレゼンの前、プレゼンの途中、プレゼンの後、それぞれで「ヒゲる」ことがあります。
< 事前にヒゲる >
「今月に入ってからけっこう忙しくて、プレゼンの練習をあまりしていないんですよね。しかも今回は、私の得意の分野ではないですから、ひょっとしたら緊張してしまうかもしれません」と、同僚にヒゲる。
< 途中でヒゲる >
「……このように、わが社が開発したソリューションは多くのお客様から評価されては、いるようです。……ええと、ちょっと私も、昨年までは、他の部署にいたものですから、皆さんにうまく伝えられるかどうか、ちょっと、わからないですが、そのように言われています。ええっと……。それでですね。次のページの資料を見ていただきますと……」と、プレゼン中にヒゲる。
< 事後にヒゲる >
「いやーイマイチでしたね。やはり準備不足でした。それに、まさか開発部のトップが出席しくるとは予想していませんでしたから、それで調子が狂ってしまいましたね。いや~、まさかなァ、そうくるとは思ってなかったな……」と、プレゼン後に再び同僚にヒゲる。
事前・途中・事後の3パターンを紹介しました。すべてのパターンを組み合わせてヒゲっていたら、かなり自信のない人でしょう。どれか1つヒゲるだけでも、聞かされたほうは、あまりいい気分がしません。プレゼンの出来がイマイチかどうかではなく、「ヒゲる姿勢」そのものがマイナスオーラとなって届くからです。
習慣になっている人は、ヒゲることで自己弁護したいのかもしれません。「本当はもっとうまくできるのだけれど、今日だけはうまくいきそうにない」「もっと経験豊かならまだしも、今のところこの仕事に精通しているわけではないし」といった感じで。
営業のみならず、何事もうまくできる人はやはり「自信」があります。しかし「自信」があるからといって、トークのクオリティ、アウトプットのクオリティが高いとは限りません。反対に、それなりのクオリティのコンテンツを持っているのにもかかわらず、ヒゲってばかりで自己評価を落としている人もいます。
前述したとおり、相手がより感知するのは「非言語データ」。必要もないのにヒゲっていては、うまくいくものもうまくいきません。多くの場合、当事者が思っているほど、相手は何とも思っていないものです。
私は年間100回以上のセミナーや講演を実施します。「今日はイマイチだった」と思っても、アンケートを見ると「すごく良かった」と書いてあることもあれば、「今日はかなり反応が良かった」と感じたのに「もう少し具体的な話が聞きたかった」と書かれることもあります。
自信がない人は、自信がなくなる習慣をやめること
事前に予防線を張る話し方を「セルフハンディキャップ」と呼びます。相手の反応を気にしすぎる人が、「あんまりうまく話せないと思うけど」「私はそんなに得意じゃないけど」などと、照れ隠しのために言ってしまう口癖のことです。言えば言うほど相手から「うまく話せない」「得意じゃない」というレッテルを張られてしまう可能性があり、むやみやたらにヒゲるのは得策ではありません。
何事も自信がない人は、自信をつけるためにどうすればいいかを考えるのではなく、自信を失うような習慣を減らすように心がけましょう。そのほうが実現性が高いと言えます。プラスを増やすのではなく、マイナスを減らす方法を考えるのです。
それでは、どうすればヒゲる悪癖をなくすことができるのでしょうか。「習慣」は、過去の体験の「インパクト×回数」で作られているため、そう簡単に悪癖が治癒することはありません。ですから、とにかく意識して以下のようなことはやめましょう。
● 慣れないことをするときに「うまくいかないかもしれませんが」と予防線を張らない。
● 終わったことに対して「イマイチだったという感想や理由」をイチイチ説明しようとしない。
※前述した、プレゼン中にヒゲるのは、なかなか止められません。緊張がピークに達しているときは特にそうです。
共通しているのは「前提条件」です。「前提条件」さえ揃っていればもっとうまくできるだろう/うまくできた、と主張をしたいときがあっても控えましょう。多くの人はそれほど気にしていないし、たとえ気にしていたとしても、「ヒゲる姿勢」そのものが見苦しいのでマイナス要素にしかなりません。
「ニュートラル」な姿勢でいればいいのです。つまり、何も言わなければいいのです。何も考えなければいいのです。品質がイマイチだろうが、そのことに対して自分が不得手であろうが、淡々とやればいいのです。たとえ緊張して顔が赤くなろうが、声が震えようが、足がガクガクしようが、それが相手に伝わっているかどうかはわかりませんし、伝わっていたとしてもお構いなしです。誰かから何か指摘されたのなら、それなりの言い訳もいいでしょうが、そうでなければ「知らんぷり」すればいいのです。心の中で反省し、次に生かすようにしましょう。繰り返しますが、ヒゲる姿勢そのものが、相手にマイナスの印象を与えるからです。