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アマゾンはどうやって沖縄に翌日配送を実現したのか

山口健太ITジャーナリスト
アマゾン豊見城デリバリーステーション(筆者撮影)

8月末、アマゾンは沖縄に新たな配送拠点を開設し、それまで最短で5日かかっていた配送日数を、「最短で翌日」に短縮したと発表しました。

いったいどうやって実現したのでしょうか。アマゾンジャパンが報道関係者を招待して実施したイベントを取材してきました。

那覇空港の近くに配送拠点を開設

アマゾンの商品を沖縄から注文した場合、基本はトラックやフェリーを組み合わせた配送となるため、これまでは最短でも5日、場合によってはそれ以上の日数がかかっていたといいます。

この配送日数を劇的に短縮できるのが航空便です。そこでアマゾンは沖縄に配送拠点を作ることで、羽田空港からの航空輸送を開始。那覇市など一部の地域において、700万点以上の商品が最短で翌日に届くようになっています。

その配送拠点が、沖縄県で初となる「豊見城デリバリーステーション」です。場所は那覇空港から車で15分ほど、真新しい物流施設が立ち並ぶエリアにあります。

アマゾン豊見城DS。正式な地名は「とみぐすく」だが、地元では「とみしろ」と呼ぶ人も多いとか(筆者撮影)
アマゾン豊見城DS。正式な地名は「とみぐすく」だが、地元では「とみしろ」と呼ぶ人も多いとか(筆者撮影)

アマゾンの物流網は、商品の在庫が置かれている「フルフィルメントセンター(FC)」と、配送に特化した拠点である「デリバリーステーション(DS)」から構成されています。

自動運転のロボットが黄色い商品棚を乗せて走り回っているのがFCです。注文が入ると、まずはこのFCでお馴染みの段ボール箱に商品が詰められます。

この箱がDSに送られ、実際に配送を担当するドライバーに手渡される仕組みです。アマゾンは日本に18拠点のDSを新設し、合計で45拠点以上になっています。

デリバリーステーションの内部

実際に那覇空港から豊見城DSに届いた段ボール箱の山がこちらです。一つ一つの箱には注文したお客さんの住所や名前がシールで貼られており、そのまま配送できる状態に見えます。

FCから送られてきた段ボール箱。すでに注文ごとに箱詰めされている(筆者撮影)
FCから送られてきた段ボール箱。すでに注文ごとに箱詰めされている(筆者撮影)

ただ、その宛先は沖縄本島の各地に散らばっています。そこで、各地域を担当するドライバーに渡せるよう、配送先に応じた仕分け作業が必要になります。

まずは箱が1つずつベルトコンベアーに乗せられます。スタッフは指にはめたフィンガースキャナーで2次元バーコードを読み取り、配送先の記号が書かれたシールを貼っていきます。

指にはめて使うフィンガースキャナーで読み取っている様子(筆者撮影)
指にはめて使うフィンガースキャナーで読み取っている様子(筆者撮影)

次に、棚に並べられた「ふくろ」に箱を収納していきます。このDSでは手作業ですが、自動化しているところもあるそうです。

入れ間違いを防ぐ工夫として、ふくろの場所はライトで光るようになっています。このように、ライトで作業を支援する仕組みはFCにも導入されていました。

配送先に応じてふくろに詰めていく工程(筆者撮影)
配送先に応じてふくろに詰めていく工程(筆者撮影)

裏側から見た様子。ふくろに入らない大きなものは端に置かれている(筆者撮影)
裏側から見た様子。ふくろに入らない大きなものは端に置かれている(筆者撮影)

DSでこのふくろを受け取り、配送に向かうのがAmazon Flexのドライバーです。ドライバーは働く時間を自由に決められる個人事業主で、黒ナンバーを取得した軽貨物自動車が1日に120台ほど稼働しているといいます。

Amazon Flexドライバーがふくろを積み込んでいる様子(筆者撮影)
Amazon Flexドライバーがふくろを積み込んでいる様子(筆者撮影)

配送する荷物の量は、過去の所要時間などからアマゾンのAIが決めているとのこと。SNSなどではFlexドライバーからAIの性能に不満の声が上がることもありますが、アマゾンはそうした声を受けて改善を続けているとしています。

沖縄でも、新たに「置き配指定」が可能になりました。置き配を希望する場合は、あらかじめ指定することで宅配ボックスや自転車かごなどに商品を置いてもらうことができます。

置き配を選ぶことで、お客さんにとっては実際に商品を受け取るまでの時間が短くなります。また再配達が減ることでCO2排出量を削減できるため、環境にやさしいというメリットも挙げています。

アマゾンが物流において最も優先しているのは「安全性」といいます。「お客様はより早い配送や多様な商品を求めているが、そのために安全性に妥協することはない。安全に働ける職場を作ることが効率化につながり、お客様のメリットにもなる」(アマゾンジャパン アマゾンロジスティクス ディレクターのアヴァニシュ ナライン シング氏)という考え方です。

「安全に働ける職場を作ることが、結果的にお客様のメリットにもなる」と語る、アヴァニシュ ナライン シング氏(筆者撮影)
「安全に働ける職場を作ることが、結果的にお客様のメリットにもなる」と語る、アヴァニシュ ナライン シング氏(筆者撮影)

沖縄における雇用創出効果を語る、アマゾンジャパン アマゾンロジスティクス リージョナルディレクターの舟木潤田氏。テレビ取材のためマスクは外している(筆者撮影)
沖縄における雇用創出効果を語る、アマゾンジャパン アマゾンロジスティクス リージョナルディレクターの舟木潤田氏。テレビ取材のためマスクは外している(筆者撮影)

安全面について、沖縄特有の事情としてはやはり高温多湿な環境があるとのこと。水分補給や空調付きの作業着など、熱中症対策に特に力を入れているとしています。

水分補給、空調付き作業着など熱中症対策がされている(筆者撮影)
水分補給、空調付き作業着など熱中症対策がされている(筆者撮影)

リモートワークや沖縄移住にもメリットか

Amazon.co.jpのサイトでは、さまざまな商品が沖縄に届くまでの日数を確認することができます。

11月6日の午前10時の時点では、食品や生活雑貨など多くの商品が翌々日の到着予定となっていました。ただ、ドリンクなどは到着まで5〜6日以上かかるようです。

アマゾン製デバイスの場合、Fire TV Stickは2日、Fireタブレットは5日。Anker製品はケーブル類が2日、モバイルバッテリーは5日かかるとの表示でした。バッテリーを内蔵しているかどうかで、航空便かフェリー便かに分かれるようです。

沖縄や離島への配送に時間がかかるというのは筆者も理解していたつもりでしたが、実際に「アマゾンが届くのに5日以上かかる」といわれると、あらためてその距離を実感します。

こうしたインフラが改善されることで、地元の人にとってメリットが大きいのはもちろん、リモートワークによって場所を選ばずに働きたい人にとっても、沖縄を拠点として選びやすくなる効果がありそうです。

ただ、今回オープンした豊見城DSがカバーしているのは、沖縄本島の那覇市、浦添市、宜野湾市などに限られており、沖縄本島の北部や石垣島などの離島には、まだまだ配送に時間がかかるようです。アマゾンは需要をみながら、段階的にDSを拡大していくとしています。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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