コロナ疲れの不安やイライラを、ひとりで解決しようとしなくていい
新型コロナの影響で、自粛期間が続くノルウェー。第三の規模の街トロンハイムでは、市民のストレス解消になるようにと、特別な電話サービスが開設された。
取り組みは「怒りの電話」として、現地ニュースなどでも報じられた。
私はトロンハイム市にメールで取材をした。
「電話を開設したのは3月19日で、これまでに40人ほどが電話をしてきています。通話時間に制限はありませんが、平均は30分ほどです」
※市の人口は19万9千人。
市民は匿名を希望することができ、大抵は大人が電話してくるようだ。
「この特別な状況で、病気になる可能性や将来を怖がり、不安を感じている人が多くいます。感染を防ぐための決まりを、守ろうとしない人に憤りを感じている人もいます。自宅待機で孤立状態になったり、不安定な経済状況などに、いらだちを覚える人もいます」
「他の公共の関連サービスの回線も混んでいるため、不安を発散させたい人が、私たちに電話してきているようです」
※メンタルヘルス専門の電話相談窓口には、1日で897件もの電話が殺到(公共局NRK)。
トロンハイム市では、電話で「怒りのコントロール、アンガーマネジメント」の方法を提供しているという。それはどのようなアドバイスなのだろう?
「人によって、アドバイスは異なります。通常は、私たちが質問をして、その人がどのような状況にいるのか振り返り、解決策を自分で見つけるように手助けします」
「自分達がすでにもっている資源に改めて気づくことも役立ちます。怒りや暴力的な気分が起きやすい状況を把握し、それを避けるためには何ができるか?」
「今気になっていることから意識を外す手助けもしています。他の人に怒りをぶつける前に、ぐるぐると考える時間から一旦休憩し、自分を落ち着かせましょうと」
「たっぷりと寝て、食事をして、体を動かし、自分を思いやることも、多くの問題を解決してくれます」
「敷居が低い相談窓口を設けることで、暴力が起きる可能性を抑制できればと思っています」と、市のアーンフィン・グルベッケンさんは答えた。
自宅で過ごす時間が増える中、家庭内暴力の増加、メンタルヘルスの悪化、子どもの相談窓口が減ることなどは、ノルウェーでも問題視されている。
今のような環境で、不安を感じるのは、当たり前。自分一人で解決しようとせずに、誰かと話す。周囲の人に怒りや不安をぶつける前に。
自粛期間が続く中、私も友人たちと電話で話す時間が明らかに増えている。今の時期は、メールやチャットだけのやり取りだけではなく、口で言葉にして交流することが、より必要とされているのかもしれない。
Text: Asaki Abumi