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母の日市場が2倍でも父の日の方が理想的な理由

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(写真:アフロ)

母の日の関連市場は1,170億円である一方、父の日市場はその半分(580億円)であるという(2018年度推計、2018年6月10日付、日経MJ記事より)。経済効果は母の日の方が大きいかもしれないが、ある側面から見ると、父の日の方が理想的であると言える。

母の日というと、多くの人が頭に描くのはカーネーションだろう。実際、母の日の当日やその前、生花店は、カーネーションで一杯になる。

反面、生花店の関係者が、需要と供給がずれて、花を大量に廃棄しなければならない事態を嘆く声も聞く。

昨年お世話になった某仲卸さんから予約相対で取り寄せた1500本のカーネーションが、300本ほどしか使えませんでした。

返品したのは350本で、他のカーネーションは当店で破棄しました。

返品した理由は、カビなどが出ていて明らかに品質劣化が見られたもの。当店で破棄した物は、咲かない可能性が高い物です。

まだ破棄せずに当店に残してあるカーネーションが約300本ほどありますが、予想通り花が萎れ始めています。

母の日は昨日でしたから、このカーネーションをもしお客様にお届けしていたら次の日には萎れ始めた事になります。

本来カーネーションは非常に日持ち性の高い花です。こんなに早く萎れると言うのには当然理由がある筈です。

商品の制作前にこれらのカーネーションの異常に気づき、金曜日に予備分も含め大量に購入した為、とりあえず大事には至りませんでしたが、そのおかげで大量のカーネーションが余ってしまいました。

返品分のカーネーションの支払いは発生しませんが、当店で破棄した分と残した分は当然支払は発生しますからロスになります。

15年花店をしていますが、これだけ大量のロスを出したのは初めてです。

勿論、この予約相対はすべて国産のカーネーションです。仕入れた産地も有名産地ですし、その卸会社も有名な会社です。(輸入カーネは地元市場で購入しました。)

昨年のカーネーションが非常に品質が良かっただけに、今回の件はとても残念でなりません。

私が母の日に売り上げを上げたくない最大の理由はこう言った仕入れの難しさにあります。

本来地元の市場でキチンと仕入れが出来ればこう言った事も無いのですが、予約相対の価格が高すぎてクライアントへの提案商品が作れず、やむなく遠方の卸さんにお願いしていたわけです。

しかし、今年の一件で踏ん切りがつきました。

来年は色んな意味で方向転換するつもりです。良い勉強になりました。

出典:「大量に余ったカーネーション」「お花とはなそう」ブログより一部引用

筆者が専門にしている「食品ロス」の分野でも、たった一日、その日しか売れない食べ物というのが大量の食品ロスになっていることが大きな課題となっている。たとえば2月3日の恵方巻や、土用の丑の日のうなぎなどだ。

うな重(画像:iStock)
うな重(画像:iStock)

母の日のカーネーションも、生き物だ。花が大好きな人であれば、花を大量に廃棄しなければならないことに心を痛めるのは当然だろう。

父の日のプレゼントはますます多様化傾向

前述の日経MJの記事(2018年6月10日付)によれば、父の日のプレゼントは、以前、主流だったポロシャツやネクタイから、モノではない、コト消費も含めて、多様化傾向にあるという。2017年度よりも3%増とのこと。

人の好みはそれぞれなので、本来、全国一斉に同じものを購買して贈るというのは、よほどの理由がない限り、不自然ではないか。

母は必ずしも花を望んでいない

母の日に花の贈り物が欲しいと思っている調査結果もある。一方、子どもにして欲しいこととして、母親は、必ずしも花のプレゼントを望んでいないという結果もある。マクロミルの2018年度調査結果では、子ども側は62%がプレゼントを贈りたいと答えている反面、母親側が子どもに望む1位は感謝の言葉、2位がプレゼント、3位が一緒に過ごす時間、4位が家事の手伝い・・・という結果だ。

マクロミル2018年度調査結果より「母の日に母親が子どもに望むこと」(マクロミル調査結果より引用)
マクロミル2018年度調査結果より「母の日に母親が子どもに望むこと」(マクロミル調査結果より引用)

花のプレゼントをもらう母は多い反面、内心では・・・

楽天リサーチの2018年調査でも、母の日にもらいたいプレゼントは、「母への感謝の言葉」が30.1%と最も高く、次いで「フラワーギフト」(27.3%)、「食事」(24.5%)という結果が出ている。

「もらったことがあるプレゼント」と「もらいたいプレゼント」の回答結果に最も差があったのが「フラワーギフト」で、もらったことがある人は多いが、それより「もらいたいと思っている人」は12.6ポイント少ないという結果だ。逆に、「母と一緒に過ごす時間」は、もらったことがある人より、もらいたいと思っている人が11.9ポイントで多い結果となっている。

楽天リサーチ2018年調査結果、母の日にもらったプレゼントともらいたいプレゼントとのギャップ(楽天リサーチHPより)
楽天リサーチ2018年調査結果、母の日にもらったプレゼントともらいたいプレゼントとのギャップ(楽天リサーチHPより)

一日に一極集中して命ある生き物を大量廃棄するより、プレゼントはモノ・コト含めて多様でいいのでは

こうしてみると、いくら経済効果が2倍だとはいえ、母の日より、父の日のあり方の方が、社会として健全なように見える。母の日の経済効果の膨大さの裏側には、大量の無駄があると推察される。母の日に贈るものは、どうしても花でないといけないのか。カーネーションの立場に立って考えてみたい。

食べ物も花も命ある生き物だ。人間の都合で無駄にすることのないようにしたい。

参考情報

食品ロスだけではない、母の日の「花ロス」 子ども食堂へ寄付する事例も

コンビニ恵方巻「大量廃棄」問題の解決が難しい事情

楽天リサーチ 2018年 「母の日に関する調査」

マクロミル 2018年 母の日調査

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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