会社の場所が辺鄙過ぎて、友だちが減っている気がします(「スナック大宮」問答集18)
「スナック大宮」と称する読者交流飲み会を東京・西荻窪、愛知・蒲郡、大阪・天満のいずれかで毎月開催している。2011年の初秋から始めて、すでに80回を超えた。お客さん(読者)の主要層は30代40代の独身男女。毎回20人前後を迎えて一緒に楽しく飲んでいる。本連載「中年の星屑たち」を読んでくれている人も多く、賛否の意見を直接に聞けておしゃべりできるのが嬉しい。
初対面の緊張がほぐれて酔いが回ると、仕事や人間関係について突っ込んだ話になることが多い。現代の日本社会を生きている社会人の肌からにじみ出たような生々しい質問もある。口下手な筆者は飲みの席で即答することはできない。この場でゆっくり考えて回答したい。
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通勤路に行きつけの飲食店を作り、自分から心を開く
「5年前に安定を求めて転職しました。でも、その会社の場所は辺鄙過ぎ、業務で外出することもありません。平日は都会に飲みに行くことも難しくて、友だちが減ってしまった気がします」(37歳の独身女性)
友だちは、生活に潤いと笑いをもたらす。ときには励まし合うこともあるし、有益な情報やモノを交換することもある。その効用は計り知れない。数人でもいいので本当の友だちがいることは、人間らしく生きるために必要不可欠だと思う。
友だちの定義は様々だが、相手が自分をどう思っているかを詮索しても意味はない。大事なのは、自分が相手に心を開いているかどうかだ。
友だちは、近所の人でも仕事仲間でもいいし、よく行く飲食店のスタッフでも構わない。年齢が自分と離れていても友情には関係ない。「この人のことが好きだ。一緒にいると楽しいな」という気持ちを前提にして、気遣いつつも忌憚なく会話すること。それだけで十分に心地良く、心の栄養になるだろう。
魚心あれば水心。こちらが素直に好意を示せば、たいていの相手は同じように心を開いてくれる。引っ越しなどの理由で数年音信がなくても、再会すればすぐに打ち解ける。本当の友だちは消えたりはしない。だから、冒頭の女性も「友だちが減ってしまった気がする」と心配せず、折に触れて連絡すればいいのだ。
ただし、日常生活の寂しさは残る。「再会すればいつでも仲良くできる」とは思っていても、遠方の友だちと気軽に会うことはできない。SNSやメールと、対面でのコミュニケーションは質的に異なる。
筆者が冒頭の女性に勧めたいのは、通勤路に行きつけの飲食店を作ることだ。酒場でも定食屋でもカフェでもかまわない。できれば個人経営で、オーナーと常連客が仲良さそうに会話をしている店がいい。
何度か通えば顔を覚えてくれて、「近くにお住まいですか?」などと声をかけてくれるだろう。最初から友だちを作ろうと焦るのではなく、オーナーやスタッフ、常連客と少しずつ言葉を交わせばいい。自分と相性がいい店であれば、不思議な居心地の良さを覚えるはずだ。
お店の中でちょっとおしゃべりするだけでも気持ちは温まる。運が良ければ、お互いの家族についてなどの深い話もできる相手が見つかったりする。「このお店の外で会っても構わない」と思うだろう。その時点で新たな友だちができたのだ。
筆者に聞かせてくれたように、「転職したら友だちが減ってしまった」と率直に明かすことは有効だ。人は誰しも寂しさを抱えているものだから、相手がそれを吐露してくれれば安心して付き合いやすい。
時間をかけてもいいので、自分に適した場を見つけること。そして、できるだけ心を開いてリラックスすること。この2つが、新天地で友だちを作るコツだと思う。