新たな太陽系第9惑星の有力情報!未知の「巨大地球型惑星」の公転軌道を特定か
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「太陽系第9惑星の概要と最新有力情報」というテーマで動画をお送りします。
●太陽系の第9惑星
太陽系には現在、8つの惑星が知られています。
太陽から近い順に、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星です。
以前までは冥王星が第9の惑星として扱われてきました。
しかし2006年に冥王星は「準惑星」に降格しています。
その理由は観測技術の進歩により、冥王星が存在する海王星以遠の領域(太陽系外縁部)に、冥王星に匹敵する規模の天体が数多く発見されるようになったためです。
研究者たちは惑星を再定義し、その下に「準惑星」という新たな天体分類を設けることで、惑星の数が不用意に増加するのを防ぎました。
では海王星以遠の遠く暗い領域に、未発見の第9惑星は実在するのでしょうか?
これまで明確な観測的根拠をもとに、いくつかの第9惑星の候補天体の存在が予言されています。
近畿大学などの研究チームは2023年8月末、太陽系外縁部に地球の1.5~3倍程度の質量を持つ惑星(カイパーベルト惑星)が存在することを予言し、その推定される公転軌道も発表しました。
また、2016年にカリフォルニア工科大学の研究チームは、太陽系外縁部に天王星の大きさに相当する氷惑星が存在すると予言しています。
2016年に存在を予言された第9惑星候補天体は特に「プラネットナイン」と呼ばれており、有名な仮説天体の一つです。
今回の動画では、まずカイパーベルト惑星の発見について紹介し、その後プラネットナインについてもまとめます。
●未知の地球サイズの惑星が新たに予言される
近畿大学などの研究チームは2023年8月末、太陽系外縁部に地球の1.5~3倍程度の質量を持つ惑星(カイパーベルト惑星)が存在することを予言し、その推定される公転軌道も発表しました。
○カイパーベルト惑星が存在する根拠
例えばセドナのように、特異な軌道を持つ天体群(黄色)海王星以遠に存在する太陽系外縁天体(Trans-Neptunian Object, TNO)の中でも、これらの天体群は、標準的な太陽系形成モデルではまとまった説明ができていない、厄介な存在です。
コンピュータシミュレーションの結果、これらの特異な天体群の存在は全て、太陽系外縁部に存在する未知の地球サイズの惑星(赤色のカイパーベルト惑星)からの重力を考慮すれば上手く説明できると判明しました。
○カイパーベルト惑星の特徴
このシミュレーションから、カイパーベルト惑星の物理的な特徴も推定されています。
まず質量は地球の1.5~3倍と、かなり地球に近い大きさを持ちます。
そして太陽から200~500au(または200~800au)以内を公転しているとのことです。
さらに、惑星の公転軌道面から30度傾いた公転軌道を持つとされます。
また、カイパーベルト惑星の存在により、既知のTNOの存在に矛盾が生じることもありません。
●プラネットナインについて
また、2016年にカリフォルニア工科大学の研究チームは、カイパーベルト惑星とは別の観測的根拠から、太陽系外縁部に天王星の大きさに相当する氷惑星が存在すると予言しています。
この2016年に新たに存在を予言された第9惑星候補天体は特に「プラネットナイン」と呼ばれ、太陽系外縁部の仮説上の惑星としては特に有名です。
○プラネットナインが予言された根拠
プラネットナインが存在すると予言された根拠は、太陽から非常に遠い場所を公転する6つの太陽系外縁天体の公転軌道における奇妙な偏りです。
これらの天体のそれぞれの公転軌道のうち、太陽から最も近い点である「近日点」が空間的に似た方向に集まっているのがわかると思います。
また公転軌道面が、より内側を公転する惑星たちの公転軌道面とは異なる面で統一的でもあります。
これら6つの天体は、それを発見した望遠鏡もプロジェクトも異なっており、公転軌道の偏りが見出された原因が、観測手段の偏りである可能性は低いです。
また、この公転軌道の偏りが自然的に起こる確率は約15000分の1であると計算されています。
この奇妙な偏りは、これら6天体と同じく太陽系外縁部の深い領域を公転する、惑星サイズの巨大天体(プラネットナイン)による重力的な影響であると考えるとうまく説明ができるため、これがその存在の根拠です。
○予想されるプラネットナインの特徴
前述の観測的根拠をもとに推定されるプラネットナインの特徴を紹介します。
まず公転軌道の見た目はご覧の通りで、地球や太陽から400~800auの位置を公転しており、その公転周期は1~2万年であると見積もられています。
また、プラネットナイン自体の質量は地球の5~10倍、直径は地球の2~4倍であると推定されていて、大きさや組成は巨大氷惑星である天王星や海王星と似ていると考えられています。
○懐疑的な意見も
一方、プラネットナインの存在自体を否定する研究結果も発表されています。
プラネットナインの存在の根拠となった6つの太陽系外縁天体の公転軌道の偏りは、やはり観測の偏りによって生じたものであるというのです。
OSSOSとDESという観測プロジェクトは、観測的な偏りが存在することを認識したうえで、それらを取り除いた場合に得られた新発見の太陽系外縁天体の公転軌道をまとめました。
画像内で灰色で描かれた軌道はプラネットナインの根拠となった過去に見つかっていた天体の軌道です。
そして赤がOSSOS、青がDESによって発見された外縁天体の公転軌道です。
確かにこれらは灰色の軌道より偏りが小さく、赤のOSSOSが発見したものについては特に偏りが小さいです。
今表示されている以外にも多くの外縁天体を発見した二つのプロジェクトですが、それらの公転軌道のうちほとんどが、従来想定されていたプラネットナインの重力的な影響が見られなかったそうです。
プラネットナインが本当に存在するのかどうかについては、未だに熱い議論が交わされています。
●これまでの第9惑星検出に向けた試み
第9惑星を発見しようとする際、主な検出方法は、電磁波のうち可視光と赤外線による観測です。
惑星表面で反射し、その後地球まで届いた太陽光はほとんど可視光の波長域で捉えることができます。
また、第9惑星は非常に表面が低温ながら、熱放射によって赤外線を放っていると考えられており、それを検出する方法も考えられます。
しかし第9惑星はどの推定でも太陽や地球から非常に遠くにあると考えられており、検出は困難です。
さらに第9惑星の公転軌道は細長い楕円型であると予想されていますが、その場合公転軌道のうち、太陽や地球から遠い遠日点付近ほど公転速度が遅くなり、公転周期のうち遠日点付近に位置している時間が長くなります。
そのため第9惑星はただでさえ遠いその公転軌道の中でも、遠日点付近の特に遠い場所に位置する可能性が高いことも、その発見を一層難しくさせています。
しかし視野が広く感度も高い「すばる望遠鏡」などの世界最大級の望遠鏡であれば、十分に検出が可能であると予想されており、実際にプラネットナインの発見を目指した様々な観測プロジェクトが進行中です。
○プラネットナイン候補天体の検出事例
また、既に撮影された観測データの中に、第9惑星が映り込んでいる可能性もあるとされます。
2021年11月、インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者が、プラネットナインの直接の証拠となりうるデータを史上初めて明らかにすることに成功したとの研究成果を発表しました。
研究者が注目したのは、1983年1月から10か月間におよび赤外線天文衛星IRAS(アイラス)が撮影した、全天の遠赤外線による観測データでした。
仮にプラネットナインが実在した場合、先述の通り非常に微弱ながら赤外線を放っていると考えられ、IRASのデータにもプラネットナインの信号が写りこんでいる可能性があります。
IRASは観測によって赤外線を放射する点光源を実に約25万個発見していますが、そんな中でプラネットナインの候補として考えられる光源を厳選した結果、たったの3つだけが残りました。
これら3つの光源はプラネットナインである可能性が否定されてはいないものの、その可能性は極めて低いでしょう。
まず発表を行った研究者は、IRASの観測精度が現在の水準と比べて低く、さらに2008年から運用されているPan-STARRSと呼ばれる別の観測計画では、プラネットナインの候補となった光源を再検出できていないことにも触れています。
またプラネットナイン以外で可能性が排除できていない候補として、「銀河の巻雲」と呼ばれる、地球から比較的近傍にある塵の雲も挙げられています。画像の円盤上下に存在するもやもやがそれにあたります。
銀河の巻雲はプラネットナインと同様に、天の川銀河の円盤のある平面に近い銀河の低緯度領域にあり、プラネットナインと同様に遠赤外線を放っています。そのため3つの候補光源の正体は銀河の巻雲によるノイズである可能性があります。
このように可能性は低いとはいえ、プラネットナインの直接の証拠となる候補が発見されたのは大きな進歩です。
もしも今回の点光源が本当にプラネットナインによるものであれば、プラネットナインの質量は地球の3-5倍、地球からの距離は225auと、2016年時点での推定よりも小さく、近い位置にある天体であると推定されています。
結局のところ、現時点では第9惑星の確定的な発見事例はありません。
仮に第9惑星が実在していても、地球から見て天の川の方向にあり、その明るさに紛れてしまって観測が困難であるという可能性も指摘されています。
楽観的な見方としては、2022年7月から本格始動したばかりの最新最強の宇宙望遠鏡「ジェイムズウェッブ」の観測波長が赤外線領域であるので、この望遠鏡が第9惑星を発見してくれるという期待もあります。
果たして太陽系深淵領域のどこかに第9惑星は実在するのか、実在するとしたら私たちが生きている間に発見されるのか、今後の展開が楽しみな分野です。