オートバイのあれこれ『’88 レプリカ戦線。先鋭モデルが揃い踏み!』
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今日は『’88 レプリカ戦線。先鋭モデルが揃い踏み!』をテーマにお送りします。
現在も「カゲキな時代」と語られることの多い、80年代のレーサーレプリカブーム。
1983年(昭和58年)にスズキ・RG250ガンマが現れて以降、ホンダやヤマハからもGPマシンさながらのモデルが続々と登場し、レプリカブームは収拾がつかないほどにヒートアップしていきました。
今回はそんなレプリカブーム期のうちの1年を切り取って、その年にデビューしたレプリカモデルをいくつかご紹介しましょう。
★今回のピックアップ・イヤー:1988年(昭和63年)
◆ホンダ NSR250R(MC18型)
「88年のレプリカ」と聞いて、MC18型NSR250Rをまず思い浮かべた人は多いのではないでしょうか。
MC18型NSRは発売年がそのままニックネームにされて「ハチハチ」と呼ばれていましたからね。
NSR250Rは初代(MC16型)もなかなかトガったモデルだったわけですが、このハチハチNSRではその鋭さにいっそう磨きがかかり、ハードでピーキー、スパルタンな特性となっていました。
フレームを筆頭に車体は「街乗り完全無視」と言わんばかりの高荷重設定とされ、エンジンも少しイタズラ工夫するだけでカタログ値を上回るパワーを出せるようになっており、ハチハチNSRは最初から市販車の範疇を逸脱していたと言っても差し支えないでしょう。
NSRはこの後MC21型、MC28型とモデルチェンジを経ていきますが、それらも含め「歴代NSRにおいて最も刺激的だったのはこのMC18型」という声は今もよく耳にします。
また「ハチハチNSRでもって、市販レプリカモデルの過激さは頂点を極めた」という意見まで聞くこともありますが、それもあながち間違いではないのかもしれません。
◆ヤマハ TZR250(2XT型)
ヤマハは85年(昭和60年)にスズキのガンマへの対抗馬としてTZR250(1KT型)を発売。
「YZR500譲りの技術を多数投入」というような謳い文句とともにリリースされたTZRは、言わずもがな当時のトレンドに乗って大ヒット、見事ガンマの独擅場を打ち崩すことができたのでした。
しかし、当時は熾烈なレプリカ戦国時代であり、翌86年には先ほど紹介したNSRが登場するなど、次から次へと強力なライバルが出現しており、ヤマハもすぐにTZRのアップデートを図らざるを得ない状況に追い込まれます。
そしてヤマハが再度練り直して88年にリリースしたのが、2XT型TZRでした。
外観は初代の1KTとあまり変わらないものの、実は2XTはエンジンを中心にその“中身”へ大幅なアップデートが行われています。
分かりやすい変更点がシリンダーで、1KTでは鉄スリーブが用いられていましたが、2XTではメッキ処理が施されたアルミ製シリンダーが投入されていました。
また吸排気系統は市販レーサー・TZ250により似通った設計へと改められ、点火系統の主要部品であるCDIもアナログ式からデジタル式へと変更。
その他、足まわり関連ではホイール径が太くなるなど、走りに関わる部分のあちこちに手が加えられていました。
1KTから着実に戦闘力が向上していた2XTでしたが、2XTは88年の1年のみしか生産されなかったこともあり、大きな認知を得られないまま後継の3MA型へとバトンタッチすることとなったのでした。
◆スズキ RGV250ガンマ
88年のニューモデル情報としては、スズキ車の話題も見逃せません。
スズキはこの年、熟成を深めてきていたRG250ガンマの完全刷新を図り、後継機としてRGV250ガンマをリリース。
イチバンの見どころはやはり、エンジンがパラツイン(並列2気筒)からVツイン(V型2気筒)へと変更されたことでしょう。
当時のスズキのWGPマシン・RGV-Γ500のエンジンがV型レイアウトを採用していたこと、そしてまた、ライバルのNSRがVツインで人気・実力ともにトップを走っていたことも、このアップデートへ影響を与えたのかもしれません。
フレームのほうもメインチューブがかなり太いツインスパータイプへと一新され、VガンマはRG250ガンマから一気に進化を遂げていたといえます。
当時はやはりNSRの好評ぶりが目立っていましたが、スズキのレーシングライダーだったケビン・シュワンツ氏がWGPの鈴鹿ラウンドにて前年王者のワイン・ガードナー氏を破り優勝を果たしたことで、シュワンツ氏に憧れた層からVガンマは人気を集めることとなりました。
画像引用元:本田技研工業/ヤマハ発動機/スズキ