【オートバイのあれこれ】日本のライダーに寄り添うビッグネイキッド。XJR1200
全国1,000万人のバイクファンへ送るこのコーナー。
今日は「日本のライダーに寄り添うビッグネイキッド。XJR1200」をテーマにお送りします。
カワサキ『ゼファー』の登場を機に燃え上がった、1990年代のネイキッドブーム。
このトレンドは中型クラスにとどまらず、大型バイクのカテゴリーにまで波及していきました。
そして、そんななか生まれてきたビッグネイキッドの一つが、ヤマハの『XJR1200』です。
1993年(平成5年)に登場した『XJR400』の兄弟モデルとして、’94年にリリースされました。
XJR1200は、先に出ていたライバルモデル『ゼファー1100』や『CB1000SF』よりも大きい排気量(1,188cc)の空冷4気筒エンジンを搭載。
元々、ツアラーモデルの『FJ1200』に使われていたエンジンで、XJR1200へ載せるにあたっては、日本の道路事情に合わせて主に低中速トルクの強化が図られました。
またフレームに関しても、100km/hより低い速度レンジでハンドリングを楽しめるよう、“高剛性”というよりは“しなやかさ”を優先した設計がなされていました。
大排気量でパワーが大きい分、ハイスピードで楽しむという方向性も追求できる大型モデルにあって、なぜヤマハはXJRの「美味しいトコロ」を低中速領域へ持ってきたのか。
それは、ヤマハがこのXJR1200を企画段階から「日本の道を楽しむビッグバイク」として構想していたから。
それまで日本メーカーは、大型モデルに関しては海外のニーズに応える形で開発をする(=輸出車として作る)ことが大半でしたが、ヤマハはここへ来て、XJR1200を“日本の道路事情に合わせて”開発することにしたのです。
(この背景には、’90年の「オーバーナナハン解禁」〈=日本では750cc超のバイクを販売しないというメーカーの自主規制が撤廃された〉などもありました)
外観については、ビッグバイクらしい迫力を演出しつつも、ヤマハ車らしいスマートさも兼ね備えたシルエットでフィニッシュ。
ゼファー1100やCB1000SFがいかにもリッターマシンらしい重厚な雰囲気だったのに対し、XJR1200に関しては、弟分の400と同様の女性っぽさ・柔らかさを含んだ佇まいとなっていました。
そして、XJR1200を語るうえで外せないのが、開発プロセスに『ヒューマノニクス』が組み込まれたことです。
ヒューマノニクスとは、簡単に言うとライダーのバイクに対するインプレッションを科学的に分析し数値化する作業。
たとえば「キレ味鋭いハンドリング」という試走インプレッションに対し、「バイクのどの部分がどのように働いて、キレ味(と感じられる動き)を発生させているのか?」ということをロジックで徹底的に突き詰めるようなワークのことで、XJR1200の開発ではこの工程が加えられたのです。
文字数の関係上、今回の記事ではこれ以上の詳細は省きますが、XJR1200はヒューマノニクスが取り入れられたことで、乗り手にリッターマシンであることを忘れさせるほどの親しみやすい操縦性を獲得。
そのフレンドリーなキャラクターがウケて、デビュー後は一躍人気モデルとなりました。
XJR1200は4年ほど活躍し、その後’98年のモデルチェンジにてエンジンがやや大型化。
XJR1200は新たに『XJR1300』へと生まれ変わり、この1300は2015年まで生産が続きました。
1300の歩みまで含めると、結果的に「XJRのデカい版」は約20年の歴史を持つロングセラーモデルとなったのでした。
画像引用元:ヤマハ発動機