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新型コロナウイルス感染後の後遺症「ロングコビッド」の全貌!皮膚から内臓まで多彩な症状を解説

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

今回は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症である「ロングコビッド」について、皮膚症状を中心に詳しく解説していきたいと思います。

新型コロナウイルス感染症は、世界中で猛威を振るい、多くの尊い命が失われました。感染者の中には、急性期の症状が回復した後も、長期にわたって様々な症状に苦しむ人がいることが明らかになってきました。これが「ロングコビッド(Long COVID)」と呼ばれる状態です。

ロングコビッドの症状は多岐にわたり、呼吸器や循環器、神経、消化器など全身の臓器に及ぶことが報告されています。皮膚科医である私が特に注目しているのは、皮膚に現れるロングコビッドの症状です。

【多彩な皮膚症状とそのメカニズム】

ロングコビッドでは、蕁麻疹(じんましん)やlivedo reticularis(皮膚の網目状の紫斑)、点状出血、水疱性皮疹など、実に様々な皮膚症状が現れることが分かっています。中でも特徴的なのが「COVID toe(コビッドトゥ)」と呼ばれる趾(あしゆび)の紫色の変色や腫れ、痛みを伴う症状です。

これらの皮膚症状が生じるメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、ウイルス感染に伴う炎症や免疫系の異常反応が関与していると考えられています。皮膚の血管が炎症によって傷つけられ、血流障害が起こることで、様々な皮膚症状が引き起こされるのです。

【ロングコビッドにおける全身の症状】

ロングコビッドの症状は皮膚だけでなく、全身に及びます。具体的には、呼吸困難や胸痛、動悸、疲労感、ブレインフォグ(思考力の低下)、味覚・嗅覚障害、消化器症状など多岐にわたります。これらの症状は、ウイルスが直接臓器を傷つけたり、免疫系の過剰反応によって引き起こされたりすると考えられています。

特に呼吸器や循環器、神経系への影響は深刻で、肺炎や心筋炎、脳卒中などの重篤な合併症を引き起こすこともあります。また、ロングコビッドでは血栓のリスクが高まることも指摘されており、注意が必要です。

【ロングコビッドへの対処法と今後の課題】

ロングコビッドの治療法は現在も研究が進められている段階で、確立されたものはありません。症状に応じて対症療法を行うことが中心となります。例えば、皮膚症状に対してはステロイド軟膏や抗ヒスタミン薬が使われることがあります。

しかし、根本的な治療法の開発には、ロングコビッドのメカニズムのさらなる解明が不可欠です。また、ロングコビッドの症状は多岐にわたるため、複数の診療科が連携して総合的に患者さんを診ていく必要があります。皮膚科医として、皮膚症状を手がかりにロングコビッドの早期発見と適切な治療につなげていきたいと考えています。

ロングコビッドは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックがもたらした新たな課題です。私たち医療者は、患者さんに寄り添いながら、この未知の病態の解明と治療法の確立に向けて努力を続けていかなければなりません。皆さんも、ロングコビッドについて正しい知識を持ち、感染予防に努めていただければと思います。

【参考文献】

1. Nalbandian, A., et al. (2021). Post-acute COVID-19 syndrome. Nature Medicine, 27(4), 601-615.

2. Gottlieb, M., & Long, B. (2020). Dermatologic manifestations and complications of COVID-19. Am J Emerg Med, 38(9), 1715-1721.

3. Huang, C., et al. (2021). 6-month consequences of COVID-19 in patients discharged from hospital: a cohort study. The Lancet, 397(10270), 220-232.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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