PTAでは「活動の強制」だけでなく、「会費の強制」も大問題だ
最近はPTAの問題がメディアでよく取り上げられ、話題になることが増えてきましたが、一点みなさんに考えていただけたら、と思うことがあります。
それは「PTAに参加する」というときには、「加入する」「活動する(労働力の提供)」「会費を払う(お金の提供)」という3つの側面があるということです。
現状はこの3つが重なりあっているのですが、本来はそれぞれ、別のことです。
PTAではよく「強制」が 問題になりますが、これにもじつは「加入の強制」「活動の強制」「会費の強制」という、3つの要素があります。
最もよく耳にするのは、「活動の強制」についてでしょう。
みなさんもご存知の通り、PTAではよく、じゃんけんやくじびき、不在者投票などで役員が決められています。このように、自分の意思とかかわらず活動を強制されるのは、当たり前ですが、誰にとっても気分のいいことではありません。
またなかには、自分やパートナーが闘病中とか、親の介護があるとか、トリプルワークをしているとか、とてもPTA活動をする余裕がない状況の人もいるのですが、そういった人にもしばしば、活動が強いられてしまいます。
これは当然、大問題です。活動の強制をやめるべきだということは、おそらく、ほとんどの方に賛同いただけると思います。
*「会費の強制」だって困る人はいる
一方で「会費の強制」は、「活動の強制」の問題に比べると、スルーされがちです。「活動を無理強いするのはよくないけれど、会費をとるのは強制でもかまわないのだ」といった声を聞くこともあります。
しかし、本当はどちらも大問題です。むしろ、お金を強制的にとるほうが明らかにタブーでしょう。PTAを学校の一部であると誤解させたまま会費を徴収するようなやり方は、一般的には詐欺といわれかねません。
もしPTA以外の第三者団体が同じことをしたら、たちまち大騒ぎになるでしょう。
また、いま多くのPTAでは「PTAに加入すること」と「会費を払うこと」は完全に一致しています。そのため「会費の強制」は「活動の強制」よりも頻繁に起きています。
「活動の強制」は、PTAによっては起きていない場合もあるのですが(加入は強制でも、活動は強制しないというPTAもある)、「会費を払う」ことは「加入」とセットになっているため、より強制の確率が高いのです。
当然ながら、なかには会費を払うのが困難なおうちもあります。上履きの買い換えを親に頼めず、足の指先を丸めて過ごす子どももいます。現状、そういった家庭からも、PTA会費は強制的に集められています。
「経済的に困難なご家庭は支払いを“免除 ”しているから大丈夫」といった話を聞くこともあるのですが、PTAが在校生の家庭の経済状況を把握しているとしたら、それはまた別の意味で大変な問題です。学校だって、全ての家庭の経済状況を本当に把握できているのでしょうか。
それにそもそも、PTA会費の支払いは、本来は任意で行うことです。それを“免除 ”するという発想は、根本的におかしくはないでしょうか。PTAは、けっして“義務”ではないのです。
*「加入/会費/活動」を分けて考えよう
活動の強制も、会費の強制も、やめるためにはまず、入り口である「PTAへの加入」を強制しないことから必要でしょう。
参考まで、筆者が現在行っているWebアンケートでは、「加入意思の確認がなく、任意加入の周知も行われていない」という完全強制加入のPTAが約6割、「加入意思の確認が行われている」というPTAは13%ほどです。
回答数が70とまだ少ないのですが、筆者のこれまでの取材からも、そのくらいかなと感じます。今後は、加入意思の確認を当たり前のことにしていかなければなりません。
なおPTA会費の額は、地域や学校によって、大きく異なります。年額1500~7000円くらいのところが多いですが、なかには1万円を超えるところもあります。
それからもうひとつ、PTAのあり方について提案したいのは、「加入すること」と「会費を支払うこと」は、切り分けてもいいということです。「活動だけする」とか、「お金だけ払う」とか、「加入だけする」という選択だって、あっていいでしょう。
まだ少数ではありますが、最近は「会費ゼロ」にするPTAも現れています。つまり「加入すること」と「会費を払うこと」を必ずしも一致させなくても、PTAは成り立つのです。
以上、PTAの問題を考える際に、参考にしていただければ幸いです。
もっともっと柔軟に考えれば、PTAはまったく新しいものに生まれ変わることだってできるかもしれません。