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2017年夏、注目CMの主役はやっぱり彼女たち!?

碓井広義メディア文化評論家

ファイブミニ「恋よりセンイ。」篇

是枝裕和監督の『海街diary』が公開されたのは、今から3年前のことです。当時15歳の広瀬すずさんが演じた、綾瀬はるかさんや長澤まさみさんの“腹違いの妹”が鮮烈でした。

今年の春に高校を卒業したすずさんをヒロインにして、是枝監督が撮ったのがファイブミニの新作CMです。

故郷である静岡の友達と携帯電話で話しながら、自分の部屋に入ってきたすずさん。どうやら仕事が忙しくて、卒業式にも出られなかったようです。

ふと鏡の中の自分を見る。そこに映っているのは「素の広瀬すず」か、それとも「女優の広瀬すず」か。是枝監督ならではと言っていい、ドキュメンタリータッチの演出が際立ちます。

すずさんが部屋からベランダに出ます。見えているのは東京スカイツリーではなく、東京タワーです。

飲みかけのボトルをかざし、東京タワーと並べてみます。遠近法で、同じくらいの高さに見えたりして。

ちょっと似た色のボトルとタワー。見つめるすずさんの横顔が美しい。何かしら覚悟を決めた女性の表情です。え、もしかしたら恋より仕事? いえ、恋よりセンイだそうです。 

はるやま「アイシャツ アイ」篇

乃木坂46の白石麻衣さんがスマホを見つめています。その画面には、「完全なアイ。」の文字。

他のメンバーにも、「まっすぐなアイ。」という謎のメッセージが届きます。どうやら、西野七瀬さんが失踪、もしくは行方不明になっているらしいのです。

西野さんの行方を求め、走り回るメンバーたち。そして、探しあぐねた白石さん、「アイって何?」と大声で叫びます。

すると最後に西野さんが現われ、ノーアイロンで楽なワイシャツ「アイシャツ」のCMだとわかるのでした。

デビュー曲『ぐるぐるカーテン』が発売されたのが2012年2月。センターは生駒里奈さんでしたが、19歳の白石さんも、とび抜けた美しさで見る人の目を引いていました。

あれから5年。白石さんは24歳となり、“オトナっぽい美少女”から“オトナの美女”へと進化しました。結構大胆なショットが入った写真集『パスポート』も、累計21万部と大好評です。

近年、「親しみやすさ」がアイドルの条件の一つになっているようです。しかし白石さんの人気はむしろ、そのクールビューティーぶりからくる「近寄り難さ」にあるのかもしれません。

これはアイドル文化論における、興味深い研究テーマであると思っています。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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