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コロナに負けるな、日本の子どもたち2 「ネット休んでやってみた」コロナ禍で奮闘する学生たちの挑戦

竹内和雄兵庫県立大学環境人間学部教授
学生が試しに作った「ネット休んでやってみた動画」(学生撮影)

コロナに負けるな!

 前回の投稿には、多数の反響がありました。ありがとうございます。今回は、学生たちの奮闘を書きます。

 彼らは、「コロナに負けるな! ネット休んでやってみたコンクール」を自分たちで考えて、自分たちで開催しています。「日本中が困っていて、医療従事者の皆さんは命がけで頑張っている。自分たちも何かできないか」と一生懸命考えて、出した答えが「コンクール実施」でした。横で見ていて「ドラマのような展開だなぁ」と思います。

https://makeruna.net/

 彼らが募集するのは動画と作文。動画は「ネットをちょっと休んで行った楽しいこと(料理、筋トレ、ダンスなど)を録画したもの等」で、作文は「ネット漬けにならないための決意や工夫、家庭のルール等」だそうです。「親子のルールが重要」とのことで、作文は特に「大人の部」を設けてあります。

 彼らのこだわりは、「休んで」に込められています。「やめる」のではなく、あくまで「ちょっと休んで」ネット以外のことにも目を向けよう、ということです。このような状況ですので、ネットで気分転換や、リアルでできない交流も必要だと思います。でも、「ネット漬け」になってしまうとまた別の問題が起こる。そのあたりが「休んで」には強く込められています。

 コンクールの内容を考え、ホームページを作り、広く呼び掛けています。他の企画でご一緒していたユニセフや総務省の方が趣旨に賛同し、後援してくださいます。さらに大阪府、神戸市等、一緒に頑張ってきた自治体まで加わってくださいました。ホームページ制作は、一緒に活動している「ぱそこんる~む123」の方に指南してもらっていますが、チラシ等、それ以外はほぼ学生たちの力でできています。

 最初は、「ネットばかりでみんな暗いから、ネット以外のことを自慢しあおう」程度の軽いノリでしたが、「みんなの参考になるような作文も募集しよう」「家庭のルールが大事だから、大人にも書いてもらおう」とどんどん大きくなりました。

 また、募集期間も当初は、私の入れ知恵で夏休みでした。私には行政経験があり、今からの準備ではそれくらいにしないと難しく、応募も集まらないかも、という大人の考えでしたが、「一番困っているのは今なので、今やらないと意味がない」と押し切られました。

 さらに、「子どもたちがやる気になるように、賞品を出したい」と言われました。小さな声で「お金の出所が…」と言ってみましたが、「自分たちで何とかします」と手弁当でもやる気です。最優秀賞には1万円出すと鼻息が荒いです。3部門あり、それが2回…。協賛を募ってみたのですが、何とすでに3万円以上、集まっています。すごいなぁ、と思っています。

 神戸市では、数年前から「スマートスマホ都市KOBE」に中学生諸君とうちの学生たち、さらに市長さんまで巻き込んでいろいろと取り組みをしています。その経緯もあって、市の幹部の方々と「神戸市版」をやろうということになり、地元テレビ(サンテレビ)が後援してくださり、神戸市からの応募の最優秀賞は「神戸市長賞」、優秀賞は「サンテレビ賞」になる予定です。大学生の思いに、大人が動かされた形です。みなさんもぜひ、応募してください。

学生たちの声

兵庫県立大学環境人間学部2年 前田笙

コロナでずっと家にいるので、子どもだけでなく大人も、ネットの使用時間が深刻です。僕たちは5/30まで「ネットを休んでやってみた」コンクールを開催します。対象者は子供から大人まで。ネット休んでやってみた「作文」と「動画」を募集します。賞状と賞品券(Amazonギフト券か図書券1万円等)があるので張り切ってください。僕も例として筋トレ動画を作りました。HPに貼ってあるので参考にしてください。

兵庫県立大学環境人間学部3年 松田朋恵

自粛で、外で友達と遊べない子どもはたくさんいます。おうちでゲーム、アニメ、YouTube……。ネット時間がいつもより増えている人も多いです。わたしも学校やアルバイトがないので、朝からYouTubeを見てしまい、気づいたら昼過ぎ!、なんてことも! 「ネット休んでやってみた」コンクールでは、そういう子どもや大人の方に、自分のネットの利用をちょっと考えるきっかけにしてもらいたいです。家族と料理、筋トレ、ダンス、お絵かき、歌……など、ネットをちょっと休んで、楽しいことを探してほしいです。学生一同皆さんの応募を楽しみにお待ちしています!

蛇足ですが

 今日の投稿はここまでです。時間がある方は下も読んでください。

 彼らは「ソーシャルメディア研究会」です。普段は子どもとネットについての啓発活動等をしています。出前授業(年間約300回)、スマホサミット(年間約50回)、オフラインキャンプ(姫路港沖)等が主な活動です。

 最初は、私の講義「生徒指導論」(集中講義)に参加した学生たち有志が勝手に私の研究室に押しかけて活動を始めたものです。当初は、教員採用試験を受ける学生たちが、面接練習をしたり、模擬授業練習をしたりするものでした。理科や数学の授業の模擬授業等をやっていましたが、教科が違うと一緒にやるのは難しいので、私が当時よくやっていた「情報モラル教育」にチャレンジしだしました。ちょうどガラケーでの「バカッター問題」等が出てきた時期で、この分野が始まったばかりで、私の元には当時、この種の啓発に乗り出した新進気鋭の講演者たちが集まっていました。小木曽氏(グリー)や西氏(DeNA)等です。彼らと学生が一緒になって、講演資料を作り出していきました。

 そうこうしているうちに、この分野の需要が爆発的に増えてきて、神戸市内全小学校で情報モラル講演を実施。さらに携帯電話事業社と組んで啓発活動。大阪府や兵庫県の青少年課、滋賀県PTA等とスマホサミットを実施。さらにオフラインキャンプ(ネット断食キャンプ)へと発展していきました。今ではユニセフと一緒に全国スマホサミットを運営したり、総務省と動画フェスタ、学生企画で出版(この件は近々ここで書きます)等にまで取り組んでいます。今は求めに応じて、オンライン啓発授業をZoomで実施しています。今週末に小学生のご家庭、5月下旬にはある公立高校、6月は中学校、いろいろなところから依頼がきています。

 彼らはゼミ生でも、授業受講生でもありません。私とは何の権力関係もありません。判断基準は自分たちで、私はその後ろから支えるのが役割です。そういう彼らと一緒に活動できていることは、私にとって誇りでもあります。

 私は55歳になりました。まだまだ負けていられないです。

兵庫県立大学環境人間学部教授

生徒指導提要(改訂版)執筆。教育学博士。公立中学校で20年生徒指導主事等を担当(途中、小学校兼務)。市教委指導主事を経て2012年より大学教員。生徒指導を専門とし、ネット問題、いじめ、不登校等、「困っている子ども」への対応方法について研究している。文部科学省、総務省等で、子どもとネット問題等についての委員を歴任している。2013年ウィーン大学客員研究員。

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