「働き方改革実現会議」で9項目のテーマを表明する前に、やらなければならないこと
9月27日、第1回「働き方改革実現会議」が開催され、今後以下の9項目を検討すると安倍首相は表明しました。
1)同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善。
2)賃金引き上げと労働生産性の向上。
3)時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正。
4)雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題。
5)テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方。
6)働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備。
7)高齢者の就業促進。
8)病気の治療、そして子育て・介護と仕事の両立。
9)外国人材の受入れの問題。
「働き方改革」は主に、長時間労働の是正、時間や空間に縛られない自由な労働スタイル、多様な人材の積極活用などが焦点となっています。
私は企業の現場に入って、目標を絶対達成させるコンサルタントです。多くの企業が「働き方改革」に意識を向けていますが、事業計画を達成できてもいない企業が、多様な人材や労働スタイルを受け入れる余裕はありません。賃上げなどもってのほか。このように、何事も目的を果たすためには「手順」が大切です。
働き方改革実現会議で表明された9項目は、同列に並べられていますがそれぞれに優先順位があり、その手順を間違えるとうまくいくものもうまくいきません。
たとえば「賃金引き上げ」と言っても、企業が好業績を上げないかぎり賃上げに踏み切るはずはありませんし、単年度の業績アップだけでも経営者は「固定費増」を容認しません。安定した収益増が将来的にも見込まれると確信してはじめて人件費アップを決断するのです。また、同じ人件費アップでも、「賃上げ」より「雇用」を優先する経営者も多いでしょう。こう考えると、単なる「賃金引き上げ」と言っても、その意思決定にいたるまでのプロセスは複雑に絡み合っているのです。
長時間労働の是正も同じこと。これを実現するためにはまず「生産性向上」が不可欠です。そして生産性をアップするには、テクニックではなく意識を変えることが先。過去の慣習を断ち切る決断が不可欠であり、まさにトップダウンで進めていかなければならない命題です。
現場をホワイトカラーとブルーカラーとで分けるなら、日本企業のブルーカラーの生産性は世界随一であり、日本企業のホワイトカラーの生産性は先進国最悪レベル。生産性アップにはテクニックではなく「意識」の問題だと結論づけるのもうなずけることでしょう。
先述したとおり「働き方改革実現会議」の第一回が9月27日に開催されました。しかし、ここで表明された9項目に目新しいものはなく、ずい分前から言われていることです。安倍首相が就任した何年も前から言われていることが、ようやくスタートした、そのスタートしたものが、この「働き方改革実現会議」という名の会議です。どんな有識者が集まろうがこのスピード感では、いつになったら日本社会に働き方改革が「実現」するのか誰もイメージできません。
まさに彼ら自身が、典型的な、生産性の悪いホワイトカラーの動き方をしているのです。安倍首相が「腕まくりをして、この課題に取り組んでいく」と力を込めても、このような組織システムと意思決定プロセスでは、どんな優秀な人が集まっても、物事は進んでいかないのです。
実行責任者と実行プロセスをまず絵(仮説)にし、そこから逆算して議論すべきです。
(最高意思決定機関がこのようなスピード感であっても、日本企業の競争力を高めるうえで働き方改革は待ったなしです。したがって、日本政府の動きとは関係なく、現場レベルで改革を進めていかなければならないというのが私の考えです)