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春風亭昇太、コロナ乗り越え…ジャズに教授に小泉今日子!「誘われたらやってみる」

島田薫フリーアナウンサー/リポーター
毒舌を挟みつつエンタメ界への思いを語る昇太師匠(撮影:すべて島田薫)

 今月1日から、新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が全面解除され、エンタメ界でも制限緩和による動きが見え始めました。ここで“まだまだ笑っている人が少ない”と立ち上がったのが、落語家・春風亭昇太さん。現在、落語芸術協会会長を務める昇太さんと日本ジャズ協会21会長の奥田英人さんが手を組み、さらには小泉今日子さんも加わってエンターテインメントショーを開催するとのこと!そのいきさつをうかがいました。

-緊急事態宣言明け、いきなり興味シンシンな公演ですね。

 今エンタメが大変な時代でして…。日本ジャズ協会21の奥田英人会長とは、以前から何度か一緒にやっていた縁もあって、お互いに協会長として大変な時期を迎えている今、「何か一緒にできたらいいね」ということで動き出しました。そこで、落語とジャズを融合したエンターテインメントショー「昇太さんとブルースカイさん。SP」を行うことになったんです。

-落語とジャズ、意外な組み合わせにも思えます。

 ジャズマンは、落語が好きな人がすごく多いんですよ。落語家も、ジャズが好きな人が多い。なぜなら、お互い共通点があるから。ジャズは元となる曲があって、それをその場でアレンジしながらアドリブで演奏する。落語も基本となる物語はあるんだけど、その日のお客さんに合わせてゆっくりしゃべってみたり、タイムリーなギャグを入れてみたり、会場ならではのネタを取り入れてみたり。どちらにも即興性があるんですよね。

 加えて、落語は寄席だけじゃなくて、キャバレーなどジャズの人たちが演奏するような所でもやっていた時代があるので、お互いに交流がありましてね。そこで話があったのが、奥田さんのところの「ザ・ブルースカイオーケストラ」。老舗中の老舗(日本で最長の歴史を持つビッグバンド)なので、落語とのコラボはおもしろそうだなということで始めました。

-今回、小泉今日子さんも一緒に舞台に立たれるそうですが、ご関係は?

 小泉さんとは、飲み屋で会う仲です。仕事は一緒にしたことはないんですけど、あの方の演劇を、僕は勝手に観に行ったりしていました。そうすると、演劇関係の人が行くお店とかで会ったりするんですね。そこでは、ちょっと話をする程度なんですけど、僕らにはドンピシャでアイドルだった人ですから、共演を知ったら僕の同級生たちは腰を抜かすんじゃないでしょうか。僕自身もビックリしているくらいですから。

-そんな3組で行うエンターテインメントショー。テーマは?

 僕は、「二階ぞめき」という古典落語が好きで。これは遊郭が大好きな若旦那の話なんですが、今回のイベントでは遊郭を昭和に置き換えて、昭和が大好きな若旦那の話にしました。バックに、ブルースカイオーケストラがいてくれて、昭和をテーマに音楽が入ってきます。落語とジャズバンドと小泉今日子さんのコラボ、何が起こるか分からなさそうでしょ?

-昇太師匠は落語だけでなく、トロンボーン演奏も披露されるとか。なぜトロンボーンなのですか?

 自分で選んだんじゃないんです。最初は、三遊亭小遊三師匠がトランペットを買って、吹いていたら音が出たので「バンドをやりたい」と言い出したところからですよ。金管楽器って、1人で吹いていてもすごくつまらないんですよね。

 そこで、落語芸術協会の中で楽器ができそうな人を集めていたら、その中に僕も入っていて、僕はトロンボーンなんてやったことがなかったんですけど「お前はトロンボーン」と命令されて始めたんです(笑)。それが、落語家デキシーバンド「にゅうおいらんず」。実は、僕の師匠の春風亭柳昇(2003年死去)が昔からずっとトロンボーンを吹いていたので、結局それを譲り受けて吹いているんです。

-トロンボーンは大変そうな楽器のイメージです。

 すぐにはできなかったですよ。未だに楽譜は読めないので、演奏する際は一応手元に楽譜を置いてはいるものの、ただの紙として使っています。トロンボーンにはポジションナンバーという音を出す場所があって、それを楽譜に書き込んで、ナンバーを見ながら吹いています。

-コロナ禍で打撃を受けた分、これからエンタメ界を盛り上げていかないと…という気概を感じます。

 実際、落語界は大変でしてね。舞台というものは、会場の大小は関係なく、収容人数50%以上から黒字が出始めるものでして。それは、2000人の会場だろうが50人の会場だろうが、同じです。半分以上入って徐々に利益が出始めるもので、あとは経費で全部飛んでしまいます。つまり、「50%以下でやりなさい」ということは早い話、儲けがないということです。だから、舞台に関わる人たちは大変なんです。

 古典芸能は、能なら能の、歌舞伎なら歌舞伎の舞台がありますが、落語はどこでもできるのが強みであり特徴です。寄席や会館だけでなく、お寺、喫茶店での落語会とかいっぱいあります。例えば東京都内で週末だと、1日に30~40ヵ所で落語会をやっていますが、自治体主催の落語会は「こういう時期だからやめましょう」となります。

 ただ、寄席は従業員を抱えているし、落語家の仕事場だし、自分で持っている小屋だから席亭(せきてい=寄席の経営者)さんは頑張るんですね。でも、その寄席が大変になっているのを僕らは分かっていたから、クラウドファンディングを立ち上げて、落語ファンの皆様からお力をいただいて、僕らは一銭も受け取らず、席亭さんに使っていただこう…ということをしました。

-落語家の皆さんはどうしていたんですか?

 収入はないです。保証もなしです。国から持続化給付金が出まして、それ以外に申請すると国から助けていただいたものがあるので、その中でやっているということです。

 僕は、たまさかテレビの仕事があるのでなんとかなりましたが、若手の方は今でも大変です。それでも、落語家を辞めてしまう人はあまりいないんです。(年齢的に)死んじゃう人はいるんですけどね(笑)。落語家は、戦後から人数が減ったことはないんですよ。今も増え続けていて、東京で700人、大阪を入れて900人はいるんじゃないですかね。

-収入がなくても、師匠の家に居候していれば生活できたりするんですか?

 それは昔の噺家(はなしか)さんの話で、今、お弟子さんを自宅に住まわせる落語家はいないです(笑)。皆自分で家賃を払うか、自宅から通ったりして頑張っていますよ。

 仕事がない…飲みにも行けない…という日々、僕は外の仕事がない時は、本を読んだりネタを考えたりしていました。あとはお城が好きなので、近所の誰も来ないお城を見に行ったりしていましたね。

-奥様(2019年結婚)との生活はいかがですか?

 奥さんも働いているんでね。会社をやっているので、従業員の方が頻繁に会社に出られない分、自分が行かないといけないとかで、忙しくしていました。

 僕も、(落語芸術協会の)誰がどこで新型コロナウイルスに感染したとか、電話対応とか、普段の仕事と全然違うことで忙しくて。面倒な時に会長になってしまったなと思っていましたよ、もともとやりたくなかったのに(苦笑)。

-本業や会長職に加え、楽器演奏や新たなコラボまで(今月1日からは東海大海洋学部<静岡>客員教授にも就任)。本当にアグレッシブですね。

 落語以外の人と一緒にやるのは、やっていて楽しいものが生まれてきます。何でもチャレンジしておいた方がいい、というのは今、実感しているんですよ。

 小遊三師匠が、吹けもしないのに「バンドをやろう」と言って、そこに乗っかったから奥田さんとの出会いがあって、今度は小泉さんともできることになって、今があるわけです。だから、変にいろいろ考えないで、誘われたらやってみるというのも、大事なことだと思います。

【インタビュー後記】

常に明るい空気をまとっていらっしゃいます。師匠が笑うと何か楽しくなってしまう、不思議な魅力です。トロンボーンを吹く姿を間近で拝見すると、思っていたよりずっと様になっていて、しっかりジャズマンに見えました。あまり外に出ない生活を続けていると、いろいろなことが億劫になってしまいがちですが、何でも手を出せるものは出しておく、という姿勢でいると、ラッキーなことがたくさん舞い込んでくるかもしれないと思えるのでした。

■春風亭昇太(しゅんぷうてい・しょうた)

1959年12月9日生まれ。静岡県出身。1982年、春風亭柳昇に入門。1986年、二ツ目昇進、春風亭昇太となる。1992年、真打に昇進。新作落語の創作に加え、独自の解釈で古典落語に取り組み、文化庁芸術祭(演芸部門)大賞をはじめ数々の賞を受賞。2016年「笑点」(日本テレビ系)6代目司会者となる。2019年、落語芸術協会の会長に就任。役者としても、演劇やドラマなど幅広く活躍。「としま文化の日」記念事業「IT’S昭和TIME~音楽と落語で大好きな昭和を振り返る~昇太さんとブルースカイさん。SP」は11/2、3に東京建物Brillia HALLにて開催。

フリーアナウンサー/リポーター

東京都出身。渋谷でエンタメに囲まれて育つ。大学卒業後、舞台芸術学院でミュージカルを学び、ジャズバレエ団、声優事務所の研究生などを経て情報番組のリポーターを始める。事件から芸能まで、走り続けて四半世紀以上。国内だけでなく、NYのブロードウェイや北朝鮮の芸能学校まで幅広く取材。TBS「モーニングEye」、テレビ朝日「スーパーモーニング」「ワイド!スクランブル」で専属リポーターを務めた後、現在はABC「newsおかえり」、中京テレビ「キャッチ!」などの番組で芸能情報を伝えている。

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