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日本とセネガルを撃破した韓国のU-20W杯ベスト4は「KリーグのVAR導入経験が生かされた」から?

金明昱スポーツライター
U-20W杯で36年ぶりにベスト4入りを果たした韓国代表(写真:ロイター/アフロ)

 FIFA U-20ワールドカップ(W杯)で韓国代表が1983年以来、36年ぶりのベスト4入りに国内は今、かなりの興奮状態だ。

 8日の準々決勝でU-20韓国代表は、U-20セネガル代表と対戦し、延長戦を3-3として最後はPK戦の末、韓国が勝利した。

 まさに“死闘”と呼ぶにふさわしい試合。選手の気迫、最後まで諦めない姿勢にサッカーの面白さが詰まった120分だった。

 ただ、もう一つ、微妙な判定がすべてVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)介入によって進んだことも印象的だった。

 VAR判定があったのは全部で7回1回目は後半14分にセネガルDFのハンドがVARによって確認されPKに。これをイ・ガンイン(バレンシア)が決めて1-1の同点に。

 2回目は同27分に韓国のDFイ・ジェイクのハンドがVARによって確認され、セネガルにPKが与えられた。

 これを一度はGKイ・グァンヨンがストップしたのだが、3回目のVAR判定がここで行われる。キッカーよりも先にGKが動いたとしてPKがやり直しとなり、これをセネガルが成功させて1-2に。

GKの動きも見逃さないVAR

 4回目は後半41分に、ゴール前の混戦からセネガルが決めたのだが、VAR判定でハンドのファウルがあったと確認され、ノーゴールに。ちなみにこのハンドの判定は、VARでなくてはほぼ見逃されていたと思われるだけに、韓国は確実に救われた。

 さらに延長戦に突入してからも2回(5回目と6回目)、ハンドのVAR判定があった。最後は3-3の同点からのPK戦で、まさかの7回目のVAR判定があったのだ。

 韓国は5人目のFWオ・セフンのシュートがセネガルGKに止められたのだが、直前にゴールラインを飛び出していたとの判定で蹴り直しになった。

 これには試合を見ているこっちも、正直、驚きを隠せなかった。そこまできっちりと判定されるものなのかと……。

 精神的に有利になったと思われる韓国のオ・セフンがきっちりと決めると、次のセネガルにはかなりのプレッシャーがあったかもしれない。

 するとセネガルの5人目のキッカーが失敗して、3-2で韓国の勝利が決まった。

ウルグアイ人主審の笛に称賛

 この勝利に対して、“VAR慣れ”がある程度、韓国の選手に有利に働いた部分があるのではないかと感じたものだった。

 Kリーグは2017年7月(第18節)からKリーグ1(1部)、18年からKリーグ2(2部)でVARを導入した。

 今回、U-20韓国代表に選ばれた21人の選手中、Kリーグでプレーしているのは15人。スペインのバレンシアでプレーするイ・ガンインはもちろんVARは経験済みだ。

 急に判定が覆ったあとのメンタルの整え方、動揺せずに自分たちのペースにいかに持ち込むのかなどの対応力が、細かいシーンで差が生まれていたのかもしれない。

 ちなみに主審を務めたウルグアイ人のレオダン・フランクリン・ゴンザレス・カブレラ氏のVARの判断は、きわどいファウルを見逃さず、とても正確だったように思う。

 

 韓国のスポーツ・芸能ニュースサイト「スターニュース」は「(彼は)AIなのか、正確なVAR判定」と見出しをつけ、「“助演級”の役割を果たした」と称賛している。

「VAR経験選手が少なければ影響あった」

「スポータルコリア」のキム・ソンジン記者は、そうした現状を踏まえこう話す。

「韓国の選手たちはKリーグでVARを経験済みなので、途中で試合が中断しても動揺していなかったと見ていいでしょう。もし韓国の選手たちの中で、Kリーグでプレーしている選手が少なければ、確実に焦ったりして、その後のプレーに大きな影響が出たはずです。というのも、KリーグでVARが導入された当初は、ほとんどの選手がビデオ判定に戸惑っていましたからね。不利な判定が下された場合、確実に心理的な影響があるはずです。しかし、そうしたVAR判定の経験を韓国の選手は長らく積み重ねてきたので、私も選手たちを安心して見ていられます」

 韓国で早くに導入されたVARの経験が、今大会で生かされた部分は大いにあるのかもしれない。

 韓国は12日、準決勝でエクアドルと対戦するが、ここでも再びVAR判定が出るのだろうか。その時、選手の表情やその後の対応力を見比べてみるのも面白いだろう。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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