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佐藤天彦名人の4連覇か、豊島将之二冠の三冠達成か――第77期名人戦七番勝負展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
昨年の第76期名人戦で対局中の佐藤天彦名人(筆者撮影)

 佐藤天彦名人(31)に豊島将之二冠(28)が挑戦する第77期名人戦(朝日新聞、毎日新聞主催)七番勝負は4月10日東京で開幕する。歴史と伝統を誇る将棋界の頂点、名人位を争う七番勝負を、データを基に予想してみた。

<第77期名人戦七番勝負日程>

第1局 4月10、11日東京都文京区「ホテル椿山荘東京」

第2局 4月22、23日山口県萩市「松陰神社 立志殿」

第3局 5月7、8日岡山県倉敷市「倉敷市芸文館」

第4局 5月16、17日福岡県飯塚市「麻生大浦荘」

第5局 5月29、30日東京都港区「浄土宗大本山 増上寺」

第6局 6月10、11日山梨県甲府市「常磐ホテル」

第7局 6月25、26日山形県天童市「天童ホテル」

両者の調子はほぼイーブン

 豊島将之二冠は昨年7月に羽生善治棋聖(当時)を3勝2敗のフルセットで破り初タイトルとなる棋聖を獲得。さらに9月にも菅井竜也王位(当時)から王位のタイトルを奪取し二冠となった。

 順位戦A級でも順調に勝ち星を積み上げ3月2日の最終戦で久保利明王将(当時)を破って8勝1敗の好成績で名人初挑戦を決めた。

 ただ、最近10局の成績に限ると5勝5敗の指し分けで絶好調という感じではない。

<豊島二冠の最近10局>(肩書は対局当時)

11月26日王将戦リーグ

対渡辺明棋王●

12月10日NHK杯

対行方尚史八段○

12月17日朝日杯2次予選

対北浜健介八段●

12月21日順位戦A級

対三浦弘行九段○

12月26日竜王戦ランキング戦1組

対三浦弘行九段○

1月11日順位戦A級

対広瀬章人竜王●

1月21日NHK杯

対羽生善治九段●

1月31日順位戦A級

対羽生善治九段○

3月1日順位戦A級

対久保利明王将○

3月26日竜王戦ランキング戦1組

対渡辺明二冠●

<佐藤名人の最近10局>(肩書は対局当時)

12月10日NHK杯

対広瀬章人八段●

12月14日叡王戦本戦

対中村太地七段○

12月17日棋王戦挑戦者決定戦第1局

対広瀬章人八段●

12月24日叡王戦本戦

対渡辺大夢五段●

1月15日竜王戦ランキング戦2組

対佐藤和俊六段○

1月20日朝日杯本戦トーナメント

対糸谷哲郎八段●

1月25日王位戦予選

対阿久津主税八段●

3月13日棋聖戦決勝トーナメント

対八代弥六段●

3月20日竜王戦ランキング戦2組

対藤井猛九段○

4月2日竜王戦ランキング戦2組

対西川和宏六段○

 迎え撃つ佐藤名人も最近10局の成績は4勝6敗と好調にはほど遠く、格下の相手に白星を献上している点も気になる。

 ただし昨年の防衛戦(対羽生善治竜王=当時)でも開幕前は直近の勝率から不安視されていたのに七番勝負では結果を残しており、ここにきて2連勝と追い風ムード。昨年同様長い目で防衛戦に焦点を合わせ、コンディションを調えているのだろう。

データからは挑戦者やや有利か

 両者の調子をほぼ五分と見て、直接対決に関しては以下のようなデータがある。

<佐藤名人vs豊島二冠の最近10局>

2011年10月24日新人王戦決勝三番勝負第3局

佐藤勝ち

2011年11月1日順位戦C級1組

佐藤勝ち

2014年9月25日順位戦B級1組

佐藤勝ち

2014年12月18日竜王戦ランキング戦1組

豊島勝ち

2015年4月30日棋聖戦挑戦者決定戦

豊島勝ち

2015年王座戦挑戦者決定戦

佐藤勝ち

2016年10月23日JT将棋日本シリーズ決勝

豊島勝ち

2017年5月22日王位戦リーグ

豊島勝ち

2017年10月6日王将戦リーグ

豊島勝ち

2018年11月21日王将戦リーグ

豊島勝ち

 トップ棋士同士とあって大舞台での対局が多い。全対戦17局のトータルは豊島が11勝6敗と勝ち越し。

 最近10局の成績は拮抗しているが、このところ豊島の4連勝で、各種データを総合すると七番勝負は挑戦者やや有利とみたい。

 戦型に関しては最新流行の角換わりが中心になるだろう。ただし豊島二冠は後手番でも角換わりを受けて立つことがほとんどだが、佐藤名人後手番の時、横歩取りや雁木に変化することが予想される。

 挑戦者乗りといっても差はわずか、持ち時間の長い番勝負ならではの「先手番キープ」(期待勝率が高い)をできるかどうかがタイトルの行方を決めることになりそうだ。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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