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コミケ103サークル数は“過去最大”に コロナ禍後の開催方式定着も人手不足の課題

河嶌太郎ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)
初日のサークル数は過去最大となり、コロナ禍前を彷彿させる賑わいとなった

 世界最大の同人誌即売会・コミックマーケット(コミケ)103が、12月30日(土)と31日(日)に東京都江東区の東京ビッグサイトで開催されています。アフターコロナで初開催となった8月のコミケ102に続く通常開催で、2日間でのべ30万人弱の来場者数を見込んでいます。

 特に30日のサークルスペース数は1万3700にのぼり、これは半世紀近いコミケの歴史の中でも過去最大になりました。30日の来場者数は14万人で、前回よりも増えています。

入場リストバンドの当日価格が倍増

南1ホールがコスプレスペースとして開放された
南1ホールがコスプレスペースとして開放された

 コミケ103の変更点は、入場チケットの一部に価格改定を行った点や、コスプレエリアの場所が一部変更になった程度で、全体としては大きな変更点はありません。一般参加者の目線で言えば、前回に引き続き午後以降であれば現地でリストバンド型参加証を購入することで、基本的に当日参加が可能となっています。

 前回のコミケ102との変更点で注意を挙げるとすれば、午後入場リストバンド型参加証の当日購入価格が1000円になり、前回の当日会場価格の500円から倍増した点でしょう。一方で、大手アニメグッズショップなどで取り扱う事前販売価格が440円になり、前回の550円から110円値下がりしています。

 実は同様の動きは19年12月のコミケ97でも行われています。この時も当日価格が500円から1000円に倍増しました。この時は値上げの背景に、事前販売価格を安くすることで、当日の販売会場の混雑緩和を狙った点があります(いずれも税込価格)。

 コミケ97ではこの値上げがあったにもかかわらず、のべ来場者数は4日間で75万人にのぼりました。これは半世紀近く続くコミケの歴史の中で最も参加者が多かった回になります。既にコミケ103の1日目は前回以上の人入りの様子となっており、今回も当日リストバンド値上げの影響はあまりないと見られます。

 コスプレエリアの場所としては、近年では企業ブースのスペースとして使われることが多かった南展示棟1階がコスプレエリアとして開放されています。また、これまでコスプレエリアとして定着していた庭園が使えなくなっています。

アフターコロナの開催方式が定着

コミケ103の企業ブースの様子
コミケ103の企業ブースの様子

 19年以降、コミケはたびたび大きな変更に見舞われていました。当初の理由は、20年に開催が予定されていた東京オリンピックによるものです。オリンピック会期中、東京ビッグサイトが報道・放送センターとして使用されることから、東展示棟が改修工事に入りました。これと同時に代替施設となる仮設の青海展示棟が設けられ、さらに南展示棟が供用開始になりました。

 コミケは東京ビッグサイトの全域を使う数少ないイベントであるため、東京ビッグサイトの設計変更の影響を大きく受ける特徴があります。この影響を初めて大きく受けた19年8月のコミケ96では、メイン会場となる東京ビッグサイトと、電車で1駅分離れている青海展示棟との動線設計や警備員配置をどうするか。新設された南展示棟への動線設計をどうするのか。東展示棟がなくなったサークルスペースを、西と南展示棟でどこまで賄え、配置をどうするのかなど、様々な課題がのしかかりました。会場縮小の影響で会期も3日間から4日間になり、これもコミケスタッフにとって大きな負担となりました。

 その後、20年からはコロナ禍に見舞われ、20年の夏と冬、21年の夏の3回分が中止・延期になりました。21年冬から再開したものの、来場者数や来場方式、サークル配置スペース数の大きな変更が余儀なくされました。それまでコミケは回を重ねる度に全体のスペース数や来場者数が増え続ける傾向にありましたが、縮小したのは初めてのことです。

 そして、新型コロナウイルスが5類感染症へ移行したことから、23年8月のコミケ102から入場時のワクチン接種証明書提示や検温が撤廃されました。サークル配置スペース数も、東展示棟が復活した影響から、1日あたりとしては過去最高となっています。

 また、コロナ禍前は入場時の徹夜待機列の存在が慢性的な問題となっていました。これも完全に入場リストバンド制になったことから解消しています。

人手不足の課題も

東3ホールに掲示されていたスタッフ急募のホワイトボード
東3ホールに掲示されていたスタッフ急募のホワイトボード

 開催規模としてはコロナ禍前の水準を取り戻しつつあり、特に出展サークル数に関してはコロナ禍前以上の密度になっている点もあります。一方で、コロナ禍で全国的に現在起きている人手不足が、コミケスタッフにも押し寄せている背景もあります。

 コミケスタッフはボランティアによって運営されており、関東近郊だけでなく、日本中から集まっていました。ところがコロナ禍でスタッフを続けることが心理的に難しくなり、離れたまま戻ってきていない人も少なくありません。

 コミケに毎回参加している30代男性もこう話します。

「コミケにはコロナ禍前から10年以上にわたって参加していますが、スタッフの人手不足が深刻になっている印象です。コミケ102の初日は、サークルスペースではコロナ禍前に匹敵する久々の賑わいを感じましたが、これに対し列整理のスタッフの数が追いついていない印象を感じます。サークルにも出展していますが、コロナ禍前はスタッフが見本誌を回収していましたが、今では自分から提出しにいく方式が続いています」

 24年は初詣からコロナ禍前の通常通りの賑わいが期待されます。コロナ禍で生じた様々な課題が解決に向かう年になることを祈念します。

(写真は全て筆者撮影)

ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)

1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。「聖地巡礼」と呼ばれる、アニメなどメディアコンテンツを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「withnews」「AERA dot.」「週刊朝日」「ITmedia」「特選街Web」「乗りものニュース」「アニメ!アニメ!」などウェブ・雑誌で執筆。共著に「コンテンツツーリズム研究」(福村出版)など。コンテンツビジネスから地域振興、アニメ・ゲームなどのポップカルチャー、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。

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