ユニフォームから「白い恋人」が消えた! コンサドーレの胸スポンサーが語るロゴ変更の戦略
明治安田生命Jリーグの2019シーズンが開幕した。北海道コンサドーレ札幌は湘南ベルマーレ相手に0-2で敗北を喫したが、開幕戦の映像を見てコンサドーレのユニフォームの変化に気付いたサッカーファンも多かったのではないだろうか?
長年、札幌の胸スポンサーを続けている石屋製菓が、今季からユニフォームに掲載するロゴを「白い恋人」から「ISHIYA」に変更した。ユニフォームの「顔」とも言える胸のロゴを変更するに至った経緯を、石屋製菓株式会社の代表取締役社長、石水創氏に伺った(取材日:2019年2月8日)。
昨年の記念ユニフォームのデザインが好評
アシシ:コンサドーレの新デザインのユニフォームですが、長年親しまれてきた「白い恋人」のロゴから「ISHIYA」に変わりました。変更の経緯を教えてください。
石水:昨夏に北海道命名150周年を記念する限定ユニフォームを作った際、胸のロゴをISHIYAに変えてみたんですが、思いのほか好評だったんですよ。取引先の方などから「ユニフォームを買わせてほしい」とか「どこで手に入るのか」など、問い合わせをたくさんいただきました。
アシシ:どういった点が好評だったんですか?
石水:胸のロゴのデザインですね。
アシシ:白い恋人のロゴは下地水色でしたが、限定ユニフォームのISHIYAは下地なしのシンプルなデザインになりました。
石水:そのシンプルなロゴを評価していただいたようで、SNSでサポーターの評判も調べてみたんですが、ポジティブな感想が多かったです。「白い恋人」は良くも悪くもローカル感があって、普段着るのにはちょっと恥ずかしい、という人も一定数いました。
アシシ:確かに日本人からすると、漢字と平仮名が混ざった日本語のロゴは、ちょっとドメスティック感がありますよね。
石水:そう感じる人もいます。ISHIYAのアルファベットのロゴならクールなデザインなので、フットサルをやる時に着てみたいという意見もありました。
アシシ:ちなみにアウェイ用のセカンドユニフォームは、ISHIYAでも下地青色のデザインになってます。その点は?
石水:白いユニフォームに下地無しでISHIYAと書くとあまりにも目立たなすぎたので、セカンドユニフォームに限っては、下地青色のデザインにしました。
全国の「白い恋人」の認知度は98%
アシシ:ちょっと話は脱線しますが、社長の苗字は石水なのに会社名が石屋なのはどんな理由があるんですか?
石水:私の祖父が創業者なのですが、創業当時、会社名に「~屋」と付けるのが流行っていて、石水の一文字を変えて石屋と命名されたと祖父からは聞いています。
アシシ:そういう由来があったんですね。話を戻しますが、ロゴ変更の理由はデザインだけですか? 何かマーケティング戦略的なものも影響していると思うのですが。
石水:そうですね。マーケティングの視点で言うと、ふたつの要素があります。まずひとつ目はグローバル戦略の視点です。「白い恋人」という表記だと、中華圏の人は漢字が読めて意味もわかるのですが、東南アジアや欧米の人だと全く読めないので、当然意味もわかりません。漢字ではなくアルファベット表記にすれば、世界中の人が読むことはできます。そういったグローバルな視点での認知度アップがひとつの目的です。
アシシ:コンサドーレにタイの英雄チャナティップが加入した点も影響してるんですか?
石水:その点も大きいですね。続いてマーケティングのふたつ目の要素ですが、日本国内に対してです。白い恋人の知名度は全国で98%というデータがあるんです。
アシシ:その数字は驚異的ですね。マーケティングプロセスにおける「認知」ステップはもう終えて良い、というのが経営判断だと。
石水:そういう意味合いもあります。それに対して社名の「石屋製菓」については、全国の認知度が30%に満たないんです。これは経営課題として認識していて、一昨年GINZA SIXに出店したISHIYA GINZAも含めて、札幌のユニフォームのロゴを通じて、もっと全国の人に「ISHIYA」を知ってもらおうという意図があります。
アシシ:国内でISHIYAの認知を広めたいということは、ISHIYA GINZAの多店舗展開の予定がある、ということですか?
石水:そうですね。現状、北海道以外だと銀座の1店舗ですが、これから国内で店舗を増やしていく計画はあります。
アシシ:そういうことですか。合点がいきました。ユニフォームのロゴを使ったマーケティング戦略の意図なんて、普段聞く機会がないので非常に興味深いです。
石水:コンサドーレも昨年に監督を交替して、史上最高の4位という成績をおさめました。弊社も現状に満足せず、常に変化・進化していきたいと考えています。