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『東京タラレバ娘』は良くも悪くもファンタジー。「いい男」とは路上で出会えません

大宮冬洋フリーライター

テレビドラマ『東京タラレバ娘』を毎週水曜日に録画して夢中で観ている。30歳独身の主人公・倫子(吉高由里子)は、ことあるごとに高校時代からの親友である香(榮倉奈々)と小雪(大島優子)と集まって飲む。話の大半はそれぞれの恋愛相談。LINEも使って励まし合ったり一緒に落ち込んだりするやりとりがとにかく面白い。

3人ともに賢く、自立心があり、友情にも厚い。だから、他2人の幸せを本気で願い、失敗を我がことのように悲しむことができる。現実世界はこれほど強固な友だち関係があるだろうか。あったとしても10年以上も変わらずに続くのか。男性の筆者でも羨望と疑問を同時に感じる。

しかし、『東京タラレバ娘』が面白いけれど空想だと思う理由はそこではない。倫子と小雪が好きになる「いい男」たちとの出会い方だ。スーパーの野菜売り場で声をかけられたり、路上でぶつかったり。偶然かつ受け身の要素が強すぎるのだ。

35歳以上で結婚した60人の「出会い方」

筆者は、35歳以上で結婚した男女へのインタビュー取材(東洋経済オンライン「晩婚さんいらっしゃい!」)を2年半以上続けている。取材対象者は、倫子たちのように「身ぎれいで感じが良くて働き者。結婚願望もある。だけどなぜか独身アラサー」の数年後の幸せな姿であるケースが多い。すでに60人を超えているので、その60人がどのような出会いで結婚に至ったのかを集計してみた。

●プロを介した紹介(結婚相談所、有料の婚活サイト、婚活パーティ、お見合いバスツアーなど)……19人

●遊びを通じた出会い(行きつけの飲食店で意気投合、社会人サークルの仲間、サザンオールスターズのオフ会など)……14人

●仕事を通じた出会い(同期、同僚、取引先、学会、デザインフェス出展者による打ち上げなど)……13人

●友人知人による紹介(紹介者は上司、従妹、友人、親、顧客、保険外交員など)……12人

●その他の出会い(海外旅行先で見つけた一人旅の日本人男性、フェイスブックで見つけた美女)……2人

以上からわかるように、「晩婚さん」の約3分の1は結婚相談所や有料婚活サイトを使って出会っている。「そんなのロマンチックじゃない」「もっと自然な出会い方をしたい」と感じる人がいるかもしれない。しかし、プロのサービスにも多様性があり、お見合いをしたら必ず結婚しなくてはいけないわけではない。むしろ、結婚に本気な人だけが集まる効率的で安全性も高い恋愛の場だと認識するべきだろう。

当然、デメリットもある。赤の他人であるプロやシステムを介して赤の他人と出会うので、年齢や職業、年収、ルックスなどの外的要素で検索され、一次選抜をされてしまうことだ。具体的には、年齢が1歳上がるごとにお見合いできる人の数は急減していく。これはお互い様だと覚悟しなければならない。

まだ30歳の倫子たちにはプロのサービスも選択肢に入れてほしい。ただし、自分にあったサービスを真面目に選ぶことが重要だ。結婚への本気度の低い男性が遊び感覚で来やすい「相席バー」に仲良し3人組で行っても意味がない。

晩婚さんの出会い方の2番目以降の「遊びを通じた出会い」、「仕事を通じた出会い」、「友人知人による紹介」に関して。これらは「場や人を共有している」に尽きる。同じコミュニティに所属するからこその親しみ、尊敬、安心感。それらを基盤にして恋愛と結婚に進展していくのだ。20代で結婚した「早婚さん」ならば、この中に「高校や大学での出会い」が付け加わることだろう。

路上で見かけるいい男は「都会の美しい風景」に過ぎない

ここで筆者が強調したいのは「その他の出会い」の少なさである。『東京タラレバ娘』のように路上に近い場所(旅先やSNS上)で出会った人に声をかけ、もしくは声をかけられて、そのまま結婚に至ったケースはわずか2人。確率にすると3%だ。

都会で歩いていると、「いい男」や「いい女」を見かけることが多い。しかし、その人たちと本当の意味で「出会う」ことができ、恋愛や結婚に進展する可能性は限りなく低い。彼らと共有するものは何もないからだ。赤の他人と言葉を交わす習慣がない日本の都会では、公共の場で声をかけてくる人は「悪徳商法やカルトの勧誘」だと警戒されかねない。だからこそ、普通の社会人は路上やスーパーでナンパなどはしない。

路上で見かける「いい男」「いい女」は、リアルな恋愛の対象ではなく、都会の美しい風景のようなものだ。『東京タラレバ娘』は楽しいファンタジーとして観よう。現実の婚活は、プロを活用するか共有する場を探して行うべきだと思う。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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