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栄枯盛衰、音楽CDの30年。衰退の背景には何が?

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

米小売り大手が店頭販売から撤退

 米ビルボード誌が伝えるところによると、米家電量販大手のベストバイは、今年7月1日をもって、音楽CDの店頭販売から撤退する。

 また、同じく小売りチェーン大手の米ターゲットは、まだしばらく販売は続けるものの、今後は委託販売に切り替える意向を固めた。

 その後の計画については分からないが、おそらくターゲットもベストバイ同様、近い将来、CDの販売事業から撤退するものと見られている。

CD売り上げ、1割に

 米国では2016年に、音楽ストリーミングサービスの年間売上高が、全レコード(録音)音楽売上高の51%を占め、初めて過半となった。

 一方で、CD販売は減少の一途をたどり、米アップルのiTunes Storeに代表されるダウンロード販売も落ち込んでいる。

 全米レコード協会(RIAA)がまとめた、昨年上半期の同国音楽販売統計(PDF書類)を見ると、ストリーミングサービスの売上比率は、62%となり、さらに拡大していることが分かる。

 これに対し、音楽CDの売上比率は、前年の13%から11%へと縮小。米小売りチェーン大手の販売撤退や事業縮小の背景には、こうした市場動向があるようだ。

2000年をピークに右肩下がり

 ドイツのスタティスタが作成したインフォグラフィックスを見ると、CD販売の落ち込み具合が、よく分かる(図1)。

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 これによると、米国でCDアルバムの販売枚数がピークに達したのは2000年。この年の年間枚数は9億4300万枚だった。

 しかし、このころ流行し始めたのが、音楽ファイルを保存し、手軽に持ち運べるMP3プレーヤーだった。

 アップルの携帯音楽プレーヤー「iPod」の初代機が発売されたのも、このころだ。その後CDの枚数は、右肩下がりで推移。

 そして、2007年には、iPodと携帯電話、ネット端末の3つの機能を統合した「iPhone」が発売された。

 翌年の2008年になると、CDは、これまで以上に急激な落ち込みを示し、その後も減少が続いているという状況だ。

30年の歴史に幕?

 スタティスタによると、CDの一昨年(2016年)における販売枚数はわずか、9900万枚だった。これはピーク時の10分の1程度で、1987年の水準だ。

 1987年と言えば、CDの枚数が初めてLPレコードを上回り、本格的な普及期に入った時代。それから30余年。音楽CDは今、その歴史に幕を下ろしつつあるのだろうか。

 本稿再推敲中の3月22日(米国時間)、全米レコード協会が最新のレポート(PDF書類)を公表した。

 これによると、昨年1年間の米国CD販売枚数は前年比10.3%減の約8800万枚、売上金額は同6.5%減少。CDは、2017年も低迷した。

ダウンロードも衰退

 そして、今回このレポートで、少し興味深いデータが明らかになった。それはダウンロード販売が金額ベースで前年比24.7%減と、激減したこと。

 これにより、ダウンロードの売上金額は6年ぶりに、CDとアナログレコードなどを合わせた「物理メディア」のそれを下回った。

(このコラムは「JBpress」2018年2月20日号に掲載した記事をもとに、その後の最新情報などを加えて編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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