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もはやダウンロード音楽も売れない時代

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

全米レコード協会(RIAA)がこのほどまとめた、米国のレコード(録音)音楽販売統計(PDF書類)によると、昨年(2016年)における米国の音楽売上高は小売りベースで77億ドル(約8584億円)となった。

この金額は前年比で11.4%増加。RIAAによるとこれは、1998年以来最大の伸び。英スポティファイや米アップルなどの定額課金制ストリーミング配信の売上高が2倍以上増加し、米音楽市場の成長を支えた。

ただし、米レコード音楽市場の年間売上高は、依然1999年の半分以下の規模。音楽CDなどの物理メディアや、アップルの「iTunes Store」に代表されるダウンロード販売が引き続き低迷している。

急成長する定額制ストリーミング

2016年の売上高のうち、ストリーミングサービスは、前年比68%増の39億ドル(約4347億円)だった。これでストリーミングの売上高は市場全体の51%を占めた。

ストリーミングの売上高比率は2011年時点でわずか9%だったが、2013年には20%を超え、2015年には30%を突破、そして昨年ついに同国レコード音楽売上高全体の大半を占めるまでに成長した。

ついにストリーミングが過半を占めた米レコード音楽市場(出典:RIAA)
ついにストリーミングが過半を占めた米レコード音楽市場(出典:RIAA)

RIAAによると、ストリーミングサービスには次の3つの形態があり、昨年はそのいずれも売上高が伸びた。

(1)定額課金制サービス(Spotify、Apple Music、TIDALなど)

(2)インターネットラジオ/衛星ラジオ(Pandora、SiriusXMなど)

(3)広告付きオンデマンドサービス(YouTube、VEVOなど)

このうち最も売上高が多く、最も成長が速いのは(1)の定額課金制だ。その昨年における売上高は、前年比2.14倍(114%増)の25億ドル(2789億円)。これだけで米レコード音楽市場全体の約3分の1を占めている。

これに対し、(2)のインターネット/衛星ラジオと(3)の広告付きオンデマンドサービスの前年比伸び率は、それぞれ10%と26%だった。

ダウンロード販売、過去最大の落ち込み

一方、ダウンロード販売は18億ドル(約2007億円)で、前年から22%減少。過去最大の落ち込みだった。このうちシングルのダウンロード販売は同24%減少、アルバムは同20%減少。

2013年に28億ドルだったダウンロード音楽の売上高は、その後25億ドル、23億ドルと推移しており、右肩下がりが止まらない。

CDは21%減、アナログレコードは4%増

また物理メディア(音楽CD、アナログレコードなど)の昨年における売上高は、前年比16%減の17億ドル(約1894億円)。米レコード音楽市場全体に占めるその比率は、前年の29%から22%に低下した。RIAAによると、物理メディアの売上規模は、2010年の約半分にまで低下している。

なお、物理メディアの内訳を見ると、売上高の7割を占めるCDは前年比21%減の11億7000万ドル(約1304億円)。

一方、アナログレコードは4億3000万ドル(約479億円)で、同4%増加した。これにより、アナログレコードの物理メディアに占める売上高比率は、1985年以降最大の26%となった。

JBpress:2017年4月4日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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