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健康志向とスマートウオッチの興味深い関係

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー

米国の市場調査会社NPDグループがこのほどまとめた、健康志向の人を対象に行ったアンケート調査リポートによると、習慣的に運動をしている人の間ではここ最近、スマートウオッチの人気が高まっているという。

ランニング愛好者に人気

ただし、これらの人々の間で最も売れているのはスマートウオッチではなく、米フィットビット(Fitbit)や米ガーミン(Garmin)などが販売するリストバンド型フィットネストラッカー。その利用者数は増加の一途を辿っており、スマートウオッチ利用者の2倍以上に達している。

またフィットネストラッカーは、大半のスポーツカテゴリーの中で利用者数が最も多いウエアラブル機器となっている。

だが、そのスマートウオッチとの差は縮まりつつあるとNPDグループは分析している。

今年Q1に最も売れたスマートウオッチ「Apple Watch」。写真はSportモデル/出典 Apple
今年Q1に最も売れたスマートウオッチ「Apple Watch」。写真はSportモデル/出典 Apple

それが顕著に表れているのは、日常的にランニングをしている消費者層。スマートウオッチの利用者数がフィットネストラッカーの利用者数を初めて上回ったのは、このランニング愛好者のグループだと同社は報告している。

もっとも、スマートウオッチに比べ安価で、手軽なフィットネストラッカーの人気は根強い。同社によると、多くの消費者は日々の運動データを記録・管理する機器としてフィットネストラッカーを購入したいと考えている。

同社が5400人の米国成人(18歳以上)を対象にアンケート調査を行ったところ、1週間に数回運動をする人の47%が、近々フィットネストラッカーを購入する計画だと回答している。

スマートウオッチはメインストリーム製品に

一方で、スマートウオッチはこれまで「アーリーアダプター」と呼ばれる、新しい製品をいち早く購入する人がその主な利用者だったが、今ではメインストリーム(主流)製品の段階に入りつつあるという。

こうした中、スマートウオッチ利用者の間では、健康・運動に対する関心が高まっていると、同社は報告している。

例えば、スマートウオッチの利用者に健康・運動について尋ねたところ、17%が「熱中している」と答え、フィットネストラッカー利用者の同様の回答(13%)を上回った。

このリポートについて報じている米シーネットの記事は、これは、スマートウオッチが多機能であり、様々なスポーツに対応しているからだと伝えている。

記事によるとフィットネストラッカーは一般的に、心拍数や歩数、消費カロリーといった基本的なデータの計測に機能を絞っている。

これに対し多くのスマートウオッチは、ランニングやヨガ、ピラティスなどのエクササイズデータを計測できる、より高度な機能を用意しており、健康志向の人に広く受け入れられているという。

今後も健全成長のスマートウオッチとベーシック型

先頃、別の市場調査会社IDCが公表したリポートによると、スマートウオッチやフィットネストラッカーなどのウエアラブル機器の今年1〜3月期(Q1)における世界出荷台数は1970万台で、1年前から67.2%増加した。

そして、この期間のメーカー別出荷台数は、フィットビット(480万台)、中国シャオミ(370万台)、米アップル(150万台)、ガーミン(90万台)の順となった。

IDCはこの市場を、Apple Watchに代表される「スマートウオッチ」と、フィットビットや、シャオミ、ガーミンなどが手がけるフィットネストラッカーなどの「ベーシック型機器」に分けて分析している。そして1〜3月期の出荷台数比率は、それぞれ16.28%と83.32%だった。

これをスマートウオッチに限定して見ると、その順位は、アップル、サムスン、モトローラ、ファーウェイ(華為技術)、ガーミンとなる。

同社の分析によると、ウエアラブル機器の市場は今後もスマートウオッチ、ベーシック型ともに拡大していき、健全な成長が続くという。

JBpress:2016年6月16日号に掲載/原題「健康志向の人の間でスマートウオッチの人気が上昇中、フィットネストラッカーとの差縮まる」)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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