「体重オーバーされた側の救済措置も考えて欲しい」3年前に直前キャンセルを経験した元世界王者・岩佐亮佑
元IBF世界スーパーバンタム級王者・岩佐亮佑(セレス)は12月7日、ブルックリンのバークレイズセンターでマーロン・タパレス(フィリピン)とのIBF世界スーパーバンタム級暫定王座決定戦12回戦に臨む。6日に行われた前日計量では、岩佐、タパレスはともにリミットを下回る121.5パウンドで無事にパスした。
3年以上前の2016年11月19日ーーー。岩佐はコネチカット州のフォックスウッズ・リゾート・カジノでIBF世界スーパーバンタム級6位のルイス・ロサ・ジュニア(アメリカ)と挑戦者決定戦を行う予定だったが、前日計量でロサに体重超過があり失格となったため、試合は中止となった。
時は流れ、現在、選手の体重超過問題が大きな話題になっている。そんな今、岩佐に”幻の米国デビュー戦”を振り返ってもらい、相手にウェイトオーバーされた”被害者”側の意見を求めてみた。
プライドを持って戦うボクサーのために
ーー岩佐選手のアメリカ東海岸デビューは約3年前に果たされているはずでした。しかし、相手の体重オーバーでキャンセル。あの出来事を今、どう振り返りますか?
RI : なかなかできない経験ではありましたね。アメリカでは初めてのはずだったあの試合を実際にやったとして、勝っていたか、負けていたかは、今の自分(の評価)に影響してきていたと思っています。ただ、あの時はIBF挑戦者としての権利をもらえたので、あれはあれで良しと考えた。試合がなかったですが、タイトル挑戦権を得られたことはラッキーだと思っていましたね。
ーー相手が体重オーバーだとしても、試合をしなかったらファイトマネーはもらえないし、トレーニングも無駄になってしまうという部分に難しさがあります。それでも、岩佐選手には難しい決断ではなかったですか?
RI : 公平じゃないし、納得できないところもありましたからね。それでやらないという決断をしたんです。僕たちもプライドを持ってやっているんで、踊らされたくなかった。“アメリカに来たからにはとりあえず記念にやる”とか、そういった気持ちはなかったです。それくらい人生をかけてやっているので、対戦相手がルールに従えないのは許せなかったですね。
ーーお金の問題ではなかったということですね。
RI : はい、そんな話ではなかったんです。
ーールイス・ネリ(メキシコ)が体重オーバーを繰り返して起こしている騒ぎを見ると、憤りは感じますか?
RI : 腹立たしいですね。山中さんとの試合後もそうでしたが、なんだかんだでうやむやされていて、(ネリは)トップのリングに上がり続けている。僕は同じボクサーとして腹立たしいし、納得できないです。
ーー片方が体重オーバーでも試合が強行されるケースは非常に多いですが、やはり戦うべきではないと考えますか?
RI : 僕はボクサーとしてのプライドを持ってやりたいので、やるべきじゃないと思います。(ただ、)山中(慎介)さんも諸事情があって、やらざるを得なかったですよね。(現在のルールでは)選手ファーストではないので、何とも言えないですよね。
ーーアメリカでは、選手が自身や家族だけでなく、トレーナー、マネージャーといったチームの報酬のことも考え、試合を強行するケースがあります。選手側から言うのは難しいかもしれませんが、こういう状況を改善するために何らかのルールを作るべきでしょうか。
RI : 作るべきだと思います。試合のために仕事も休んでやってきて、体重も作ったのに、相手が体重オーバー。はい、じゃあなしということになったら、どうすればいいの、どうしてくれるの、といった感じですよね。救済措置も基本的にないじゃないですか。選手は人生かけてやっているんですから、そういうところも考えて欲しいと思います。“体重作れなかったらなしです”で終わりではなく、試合ができなくなった人のことも考えて欲しい。オーバーした奴はまず叩かれてしかるべきですけど、それ以上に、ルールを守って、オーバーされた選手のことをもう少し考えて欲しいと思っています。