「ペットの死」を子どもにどう説明しますか? 米津玄師さんの名曲『Lemon』から...
コロナ禍で、子どもたちの夏休みも短くなっていますね。
いまやペットは家族の一員です。犬や猫は、飛躍的に寿命が延びています。そうは言っても、20年以上生きる子は、稀です。そのため、子どもがいるご家庭でペットを飼っていると、子どもが「死」と直面したときに、どう向き合うかを考える機会が多くなります。
私たちの病院では、がんの治療が多いこともあり、飼い主に「ペットが死ぬ」とき、子どもにどう伝えるべきかを尋ねられることが、割合にあります。今日は、そのことを米津玄師さんの名曲『Lemon』などから一緒に考えましょう。
がんの治療をしているので、飼い主と仲良くなります。たとえば、膀胱炎だと、月単位で治療をすることは、そうありません。しかし、がんは慢性疾患なので、月単位で時間をかけて治療することになります。そんなことから、飼い主から、いろんなことを相談されるのです。そして、子どもさんがいる家庭では、子どもに「ペットの死」をどう教えればいいか、も尋ねられます。まずは、動物が亡くなる前の医学的な兆候を説明します。
動物が亡くなる前の医学的な兆候
もちろん、事故などで急に亡くなることもあります。今日、お話しするのは、がんなどの慢性疾患や老衰で亡くなるときの兆候です。
・食欲が落ちてきます。
・思うように体が動かせなくなります。
・体温が下がります。
・貧血になります(ヘマトクリット値・Htが下がります)。
・尿が出なくなります。
などを経て、心臓や脳などの臓器が働くなり亡くなります。そのため、日々、愛するペットと接している子どもたちも、その異変を自ずと感じとることになるのです。
子どもにペットの死をどう伝えるか?
では、子どもにとって、自分の弟や妹のように接していたペットが亡くなるときに、親はどう対処したらいいのでしょうか?
ある飼い主は、「ペットの死」を見せると、子どもが悲しみを乗り越えられないのではないか? と思って、「死」を言わないこともあります。しかし、「ペットの死」を見せないよりは、教えた方がよいといわれています。以下のような理由からです。
・ペットの死を通して、子ども自身の悲しさ、嘆きを言葉で表すことができます。
・子どもなりに喪失感を認めて、それをどうやって克服するかを体験できます。
・子どもが「ペットの死」を悲しむだろうと、先回りして亡くなっていないと嘘をつくと、子どもとの信頼関係を失ってしまうこともあります。
・子どもが「ペットの死」に責任を感じているようなら、「事故」「病死」であることを説明すれば、「死」について子どもなりに理解してくれます。
毎日、動物の病気を治すために働いている筆者としては、「アニマルウェルフェア(動物の福祉)」の向上を切に望んでいます。子どもの頃から、動物の命や死に対して、丁寧に接することで、未来は動物に対して優しく思いやりがある人が増えるのではないでしょうか。
米津玄師さんの『Lemon』から
2018年に大ヒットしたテレビドラマ『アンナチュラル』の主題歌は、米津玄師さんの『Lemon』です。このドラマは「人の死」がテーマになっています。この曲を作っているときに、米津さんのおじいさまが亡くなったそうです。そのおじいさまの死にぶち当たって、それでこのすてきな曲ができたそうです。
♪あの日の悲しみさえ
あの日の苦しみさえ
その全てを愛してたあなたと共に♪
(『Lemon』作詞・作曲 米津玄師 )
愛するペットが闘病生活をしていて、苦しいこともありますが、全てがそのペットを愛した思い出になるってすてきですね。米津さんは、音に乗せて「死」についてですが、言葉を選んでメロウな詩をつけられています。子どもにどう「ペットの死」について教えたらいいのか、悩んだら、『Lemon』を聞いて一緒に考えてみては、いかがでしょうか。愛する存在を歌詞に重ね合わせてこそさらに心に響くでしょうから、 『Lemon』おすすめの曲です。
絵本『わすれられない おくりもの』 スーザン・バーレイ さく え
こちらは、「死」をテーマにした絵本です。アナグマが主人公で、年老いて死んでいきます。アナグマの仲間、キツネ、モグラ、カエルたちが、どうやってアナグマの死を乗り越えていくか、が描かれています。
この本の中に「アマグマの話が出るたびに、だれかがいつも、楽しい思い出を、話すことができるように、なったのです。」とあります。
こんな本を読みながら、子どもと一緒に「ペットの死」を考えるのもいいですね。
まとめ
今年6月1日から多頭飼育やペットの虐待などの罰則引き上げなどを盛り込んだ改正動物愛護法が施行されました。そのためか、動物の虐待のニュースが流れるたびに、なぜ、このようなことをする人がいるのか、痛ましい気持ちになります。
子どもと話すとき、動物への接し方を考えてもらうと、少しはこのような事件は減るのではないか、と考えています。動物に優しくできる人は、立場の弱い人にも考慮できるのではないでしょうか。難しい問題ですが、コロナ禍で自宅にいる時間が長くなった子どもたちと、夏休みに「ペットの死」についても話し合ってみるのはいかがですか。